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学校帰りに西東の部屋、10階の3号室に寄る。時刻は21時頃、おそらくナトリと文杜が帰る23時頃まで、2時間くらいは練習出来る。
かと思いきや。
部屋に入って暫くしてから、やけに西東はくしゃみをし始めた。
「大丈夫?」と真樹が近付くと、「あぁぁー!」と、西東は叫んで真樹から離れてしまう。
なんだなんだどうしたんだ?そう思った瞬間。
「あまちゃん、ネコ触ったでしょ!毛!」
「え?」
触ったけど。
時間経ったよ、それ。
「ひぃぃ〜{emj_ip_0792}痒い!風呂!ダメ!
ごめん僕ネコアレルギーなの、マジで!毛!ダメ!アウトー!」
「え、ウソぅ」
「マジだよマジだよ、君家で寝てたんじゃないの!?ねぇ!?」
「いやぁ…そのぅ…」
というわけで風呂に入れられ、そんでもって西東のストーンズのLサイズTシャツとダボダボなスエットを着せられ、事の顛末を話す結果となった。
「なんだそれ!」
やはりその反応。
「やっぱ…そうだよね。おかしいよねその子」
「でも美人だったの?」
「うん、メチャクチャ美人」
「え、おっぱいは?」
「出たよ、おっぱい。どうかなぁ…?」
「好きになった?」
「西東氏わりとウザいね。いや怖いよ、マジ心臓ダイレクトチョップだよ。動悸を越えて止まったよ一回」
「マジか大変だねぇあまちゃん。死んじゃうじゃん」
「いや止まってはないんだよ」
「え?で遅れてきたのはなに?その子とイヤらしいことしてきたからなの?」
「はぁ!?」
やっぱり人の話を聞いていない。
「してないよ?しゃがんでてちょっとパンツ見えてたけど、薄水色」
「なんで?え待ってよくわかんない。そんなバッチリパンツ見てて君男子高生。相手金持ち女子高、その気がありそう。何故一発あおか」
「ねぇ西東氏。
あんたさ、わりとろくでもない人生送ってなぁい?」
ぐさっ。
この童顔チビ高生。
わりと言うなぁ。
西東的には昼間、一之江と二人になったときに言われたことに工夫を凝らして会話をしている。
『お前もそうだったと思うけどあーゆー系は、とにかく話を聞いてやれ。これ鉄則。お前なら出来…るようになれ!』
と。
だが自分の高校時代を思い返してみて思い当たる話題、これしかないだろうと思えばなにこの仕打ち。今の子道徳なってない。
「…可愛くない…、君可愛くない!」
「あ、的を射たんだ」
「あーもういいからやるよ!聞いた僕が悪かったよ!」
やけ酒してやれ。
西東はいつものクセでグラスに酒とスポーツ飲料をついで一気飲みした。そして一升瓶を持ってテーブルに置き椅子に腰掛け、「ほら、ベットでい?座って、ギター出し」考えた。
つまみもない。
てか、こいつ飯食ってねぇじゃん?
「ごめんあまちゃん忘れてた。ご飯食べてないね」
「あ、そうね」
「陽介どうしてた?作ってた?
てか薬飲む前食っちゃダメとか、言ってなかったよね」
「うん多分」
「コンビニでもいい?」
「いいけど西東さん」
「ん?」
「いつもあんまり食べないの?」
「え?なんで?」
「いや、なんとなく」
「まぁね。酒飲みってそーゆーもんだよ。
あぁほらあまちゃんさぁ。
薬飲み過ぎること、ぶっちゃけちゃってあるでしょ?多分。あとはワケわかんなくなったりさ」
「…え?」
核心というかなんというか。
ちょっと傷を突かれている気がする。
「お酒飲むってね、あんな感覚に近いのよ。酒気帯び。ほら、運転しちゃダメとか言うじゃない?あれあれ。
薬飲み過ぎたあとのあれもさ、二日酔いみたいなもんだよね。なんてーの?あーわーたのしー!ってなるか、うぇぇ死にてえってなるかなのね。大体死にてえってなるのって、酒も薬も飲み過ぎた時。からの賢者タイムみたいな。なにしてんの僕。ああダルっ、頭痛っ、みたいな。やる気ないから飯食わない、なんもしないみたいな。
だから薬もお酒も少しがいーよ?」
「なるほどねぇ…西東さん」
ならば。
「ん?」
「腹減った。飯」
「…はいはい。コンビニ行こうか。そしたら練習ね」
どうやらあまり今日は飲み過ぎたらダメらしい。なんせ、彼を見てあげなければならない。
面倒だ。しかしわりと。
早めの吸収率で回った日本酒1杯。程よく楽しいかもしれない。少なくとも、意欲増大する、可能性充ち溢れる量のアルコールだ。
二人でそれからコンビニに行き、夕飯を二人分買い、部屋に戻った。
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