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 仕方なく自分もビール一本でテーブルへ向かい、テーブル上のリモコンとデッキを弄って再生スタート。

 というか真樹は下に降りればいいのにと思ったが、まぁまぁ高校生には心臓に悪い映画だと、あとはただ任せることにしてビールを飲みながら一時間半観続けた。

 うるさいったらなかった。
 「うわぁ…」だの、「すげぇミッシェル」だの、「あっ、殺した、あら」だの、なにより、隣の西東がうるさい。高校生3人は「これやべぇ」を連発。

「さ、」

 中盤辺りだった。4人総出で「刺されたー!」。どうやら感性は一緒らしい。確かに再生した本人も、いちいち感性はわかってしまうのが、うるさいと感じる要因の一つだった。

 観終わった感想は様々。

「マジ陽介まず僕に貸して」
「俺よーちゃん言ってたのわかった、あれCD貸せ」
「いやぁ、俺幼馴染みのあのラストいいわぁ」
「俺全体的にちょっと整理したいわ…俺って半分優しさだから…」

 だった。論文を出そうかと思う結末を得られた一之江は大いに、なんだかんだ満足した。

「仕方ねぇなぁ…。
 栗村、お前にはそうさなぁ、あれを貸そう。真樹には言ってたやつ。よっちゃんははいこれ500と国木田、お前そのDVD持ってけ」

 それぞれにスマートに、一之江は思い描いた物を手渡して行けば、

「えっ、」
「ありがとう」
「いや普通現生?」
「え俺?」

 とそれぞれ反応が帰ってきて。これすら論文もんだわと思いながら。

「栗村は英語得意だろ?
 真樹は多分、てか真樹も栗村も、よっちゃんのスパルタミッシェル教育に飽きたらな。
 DVDはまぁ観たいときに国木田が観たらいいよ」
「陽介僕は?」
「だから500」
「…君っていつからんな優しい保守的な野郎になったんだよ、精神科医野郎め」
「お前よかセンスがあると思う。AVバリに興奮出来るんじゃないですか社長」

 にやける一之江に「はは、変態としか言い様なし」と西東も笑った。

「はいかいさーん。僕もう寝る。君ら帰るんでしょ隣。僕ベッド使っていい?陽介」
「殺すよよっちゃん。やだよ酒くせぇ。ほらバカ高生は?早く寝ろ」
「…オカモト先生意外となんか良いヤツだね。わかったわかった。なるほど、受け取っとくわ。あんた一番長生きしそうだな」
「どうかな。
 どうだ栗村、真樹。家帰ってCD聴け」
「Vテン。確かこの人ピストル自殺の」
「よく知ってんな。よっちゃんから借りパクした」
「あ失くなったと思ったら僕のカート」
「真樹はな、それ3Pだから。ベンジーよか売れてねぇが、まぁいいよわりと。この映画の曲2つくらい…」

 喋っている最中に西東の膝にがん、と頭をぶつけるようにして一之江は突如眠ってしまった。

 高校生3人は「えぇえ!」となっているが西東は、「あぁあ、久しぶりだなこりゃ」と、小さく溜め息を吐いた。

「睡眠薬とか安定剤はよくあることだよ。酒と相性悪いから。たまにガツっと利いちゃうんだよえっと…」

 一之江が着ていたスエットのポケットを漁り。

「あぁほらセニラン。利きは中度ってぇか安定剤だな。あまちゃん飲んでる?」
「いや?」
「まぁ誰か患者に飲ませてんだな。こいつ変態だから。
 これすげぇ立ち眩みするし僕一回止めたやつ。眠いし離脱すげぇし酒飲めねえし。
酒飲まない、運転しない、勉強もしない高校生とか最適じゃねぇかなと思ったけどあまちゃんじゃないのね。
 セニラン飲んで酒飲むとかこいつ明日学校行く気あんのかし。起き上がれねぇじゃん」
「え」
「それ大丈夫なの」
「まぁ、も少しこいつ錆びてるから大丈夫っしょ。死にゃぁしないよ中度だから。ただバカだなぁ。医師免許剥奪されればいいのに」
「確かに」
「え俺定時だしここ泊まるぅ。嫌だ怖いそれ」
「大丈夫だよあまちゃん。君は二人と帰って。僕は君と陽介を一緒にする方がセンスに欠けると思う。悔しかったらまぁ、練習でもして」
「いや…起きてるよっちゃん…」

 膝の上で一之江が苦しそうに言った。

「あら、起きた?」
「…よっちゃんの声胃に響くわ嫌い…。
 ちょっとも寝れないからよっちゃん黙ってて」
「えよーちゃん死ぬ?」
「大丈夫大丈夫。ちんこ何故か朝勃ったけど」

 苦しそうにそう言って股関を手で抑える一之江の様が異様だった。

「うわっ」
「死ねVテン」
「あだ名に恥じないね陽介」
「…副作用だよ性欲増大。よっちゃんAV取って。お前ら帰れ」
「帰るバカ医者」
「最低、死ね変態Vテン」
「生々しいなあんた、いい歳して」
「え陽介僕嫌だ、副作用意欲減退」
「いいからっ、俺のこれどうする」
「ほっとく」
「真樹おいで」
「帰る」
「え君たち待って置いていかないで僕いま動け」

 高校生3人、容赦なく大人2人を置いて行く決断をする。
 明日はどうしよう、とか、どっちからCD聞こうかとかいう話を、しながら。

 ただまぁ、
 渡せなかった物があり、伝えなかった想い、預かったものは、各々共有したのはこの時が、思い返せば記憶では一度きりになりそうな夏休み前の、夜更けだった。

 後に、それぞれ、大人の意味を知るのはまだまだ、先の話である。

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