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 その藤嶋の笑みが悲しいのか、それともなにか、吹っ切れて開放的なのか…無邪気なものかはわからない。

 だけど呑むようにその息は食べられてしまった。
 激しく啄むように舌を絡め、吸う、その酸欠に頭まで犯されていく。かさかさする指で髪をぐしゃっと撫でられて。
 口を離して目が合う藤嶋の表情に溢れる何かをも嚥下し、見つめ返した。

「…藤嶋さん、」
「俺が殺した男の話だが、俺なぁ、親父を殺したんだよ」
「…え、」
「怖いか?」

 確かに後悔すらしていないのかもしれないほどあっさりと言う藤嶋に圧倒され、「…いえ」と喉から溢れる。
 瞳も、何もかもが甘く優しく絡むことを、きっと望んでいるとわかる。

「…どうしても死んで欲しかったんでしょう?」
「あぁそうだね」
「…まぁ、それも悲しいことでしょうけど、」

 そう言う翡翠に藤嶋が満足そうに笑った。
 翡翠の首元に顔を近付けながら、「可愛いやつ」と藤嶋が耳元に舌を這わせた、優しくも酷くもないそれに、「ふぅ…」と力が漸く抜け、ぎこちなく藤嶋の髪を撫でた。

「どっちだった」
「…ん?」
「お前の仇を殺したのは。義兄か?お前か?」
「…兄でしたよ」
「そうか」

 再び、藤嶋に着物をほどかれ喉仏、肩が剥がれて藤が露になったとき、「っ、」肩に痛みが走った。
 少し息を呑んだのを見た藤嶋は、翡翠が痛がったその肩に舌を這わせる。
 じんじんと染みて痺れたそれに、「怪我はな、」と呟いた。

「上からまた傷を付ければ治りが早いらしい」
「…痛いですよ」
「悪いな」

 藤嶋はいま、黒目を開いて自分を見つめている。
 「だが綺麗なもんだな」と笑うそれに艶やかな色が揺れる。

「肌も。傷付けたくなる。綺麗だよ」

 ちゅ、とそこに口付けた藤嶋の腰へ、ぎこちなく手を伸ばし、着物の帯をほどいてやる。
 藤嶋が子供のように笑った。

 この人の見ている世界は、もう少し暗く寂しいものかもしれない。一人で、何も癒えることがないままに大人になってしまったのかと思えば、愛しく見える、愛しいという感情を知った気になる。

 何が欲しいのか、一生わからないかもしれない。首も、肩も、腕も、胸も、ゆっくり咀嚼されてゆく。
 それは堪らなく怖い。
 けれども甘く、加減が柔らかいと激しい、両方繰り返すのがぎこちないような、自由なようなで少しずつ、どこかに染みていくように広がってゆく。

 乳首を温い舌で押され、転がされるのに、これは心臓の鼓動に似てる、それも藤嶋に食べられているのだと気付く。
 何かを伝えようにも声にならない快楽を得る、同時の衝撃で優しく陰茎も手に包まれた。

 初めて、この行為に意味を見い出した。

「あの、」

 返事はないけど見上げる顔に、髪を撫でながら「嫌です、」と告げる。
 溶けそうに熱いからだ。

「ん?」
「いやっ、」
「なんが?」

 味をしめたとばかりに弄ぶ藤嶋に、「んんと、」言葉を探してみる。
 吸って離して「そんなわけない」と笑う藤嶋に「いじわる、」と泣きそうになる。

「大丈夫だろ」
「嫌だ、」
「もっとぶっ壊れちまえば、いいよ、」

 直してやるから。
 乳首はやめてくれたけれど、温い舌はへそ辺りで止まり「俺はここがいいな」とまたかぷり、と噛まれた。
 広がる痺れが溶けてゆく。

「でも、ちゃんと飛べるやつにしたい」

 また傷口を縫うように舐めて広がる。

 「いいかな」
 と、今度は太腿を持ち上げられた。
 藤嶋がそこを楽しそうに食んでから、真ん中に舌を滑らせる感触に、足が震えてしまいそうだ。

 あぁ、溶かされていくなぁ。
 甘ったるく、生温く。

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