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「はい、マスさまでございますね。すみません、もう一度御社名とお名前をフルネームで頂戴しても宜しいでしょうか」
メモを手にする。
『はい、かぶしきがいしゃ、あくろす の 営業担当 ます みつとし です』
桝はゆっくりと言った。
うわぁこいつマジかバカじゃないのかと思いながらも「はい、復唱いたします。株式会社アクロス様、マスミツトシ様でお間違いはないでしょうか?」先程の社員に「株式会社 アクロス 検索」とメモを渡した。
「営業、ということですが会社の部署名は“営業部”でお間違いはございませんでしょうか」
『はい』
メモがまわってきた。
“アクロス”は沢山ありますが株式会社アクロス、だと日用品の会社が引っ掛かりました。
…日用品か、取り扱いはなくもない。うーん営業のビラ配り名簿にでもありそうではあるが、まずこいつはきっと月曜日のセフレだ。腹が読めないな。
『先日の件で担当していただいた真柴さん、と言う方にご質問あってお電話を差し上げたのですが』
「左様でございますか。
先日の件…と申しますと、こちら広報部なのですが、弊社広報部となんらかのやり取りがあった、と言うことでしょうか」
『はい。その時担当して頂いた真柴さんと言う女性の方に名刺を頂いたのでお電話をした次第でございます。真柴伊織さんはいらっしゃいますでしょうか?』
「…はい。個人やり取り…でしょうか。弊社はあまり、そういったことはないと思うのですが、真柴の顧客名簿を確認させて頂きたい為、少しだけお時間を頂いても」
『すみません、真柴さんに掛ければいいと言われたんですけれども』
「大変申し訳ございません。本日真柴は席を外しておりまして、私共でもご用件をお伺いできるようでありましたら対応させて頂きたいと思うのですが…如何でしょうか。それとも、後日、真柴に折り返しのお電話を差し上げさせれば宜しいでしょうか」
『はい』
「株式会社アクロス マスミツトシ様宛でよろしいでしょうか?」
『…はい』
「畏まりました。本日担当いたしました、広報部主任の」
切れた。
名乗れもしなかったな。これは、営業にしてもどうせおじゃんだし、何より相手の名前を聞いておかないだなんて社会人として、ましてや営業として終わってるぞ全く。
「主任、あの…」
「あー多分間違い電話だよ」
「そうだったんですか。でも外線でしかも名指しって…」
「だから俺が出たんじゃない。なんだか胡散臭いし勧誘かなんかかねぇ…営業って言ってたし」
「えーでも個人ってありえます?」
「…さぁ。まぁ名刺持ってるみたいだしなんか、訪問したうちにあるんじゃない?」
日用品の会社なんてあったかなぁ、とやはり疑問なようだが、吉田は構わず仕事をしようと思ったが、内線の側にあるケータイはやはり真っ黒だ。
本来ならば確認のメールだとか、しとくべきなんだろうが、この件はするべきか迷うなぁ。なんせ負傷してるからなぁ。
鷹峯竜二に言おうにも微妙だ。
というか本来ならばそうか、メールはすべきか。なんせ吉田は桝を知らない体だったなと思ったが、それはそれで伊織が悩みそう、きっと鷹峯竜二にはこの事を言わないだろうし。
溜め息が出た。
しかしまぁ、上司として「体調はどうだい」とまず、入れておくべきか。「株式会社 アクロスのマスミツトシさんから問い合わせの電話があったよ」とも、一緒に。それが一番無難な出来る対応なんだけど。
どうやら月曜日のマスくんは、結構なサイコパス野郎らしい。しかし俺も大差ない気がする。
竜二くん、君ならこの立場、会社に問い合わせ電話くらいの対応、しちゃうのかな、放っておくかな、きっと俺が放っておくという手段なら…と、吉田は渋々ケータイを手にした。
サイコパス野郎と束縛AV青年。自分が一番普通すぎて敵うわけがないわ、セフレどころかメッシーな気がしてきた。
吉田が真柴伊織に思い浮かべていた業務メールを送ってケータイを置いた瞬間、既読もついていないのにも関わらず“鷹峯竜二”の方から即メールが来た。
流石だ束縛系。
最早本領発揮ぶりに実はやっぱくっついちゃってたんじゃないかと思えてきた。
しかし既読はつかないのに…、もしかして一件目の「おやすみ中ごめんね、体調はどうだい?」の、通知からだったりしてと考えているうちにちょっと待ってここまで頭のなかで考えてるの、鷹峯竜二と大差なくないか俺、と吉田は一瞬現実に引き戻った。
あの子、縄つけられて軟禁されてたりして。ここまで考えてるの、ホントに互いに大差ない。やはり同じ穴の狢だ。
当のメールを開けば「ありがとうございました」「病院行って来ました」と来て、少し間を置き「少し話したいのですが」と来た。
…なんだ?
伊織ちゃん、実はマジで死にそうだったりして。
「宜しければそちらに伺います」と来たので、「12:15に昼飯休憩だから」と送っておいた。
電話どころかこちらに来るか束縛系、流石だ。最早くっついたと吉田は見た。
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