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 しかしその幸せは長くなかった。

私が家に泊まって一緒に学校に行った次 の日から、悠は私を無視した。そして明らかに元気がない。やる気もない。
  理由がわからない。この前まで幸せだったはずだ。
 
 もしかして。
 
 ピアスが見つかって奥さんと喧嘩した?何で凹むの?奥さんより、私の方が大切だって、料理だって上手いっていってくれたじゃない。だからって、私が別れるきっかけをあげたのに、どうして?
 
 一週間、1ヶ月と時間が過ぎ、いい加減精神が崩壊しそうだった。
 
 廊下ですれ違い様、「悠!」と呼んで、スーツの裾を引っ張った。悠は、驚いた顔をして私の手を払いのけた。

「どうして…?」
 
 去っていく悠の背中に吸い込まれる言葉。私はその場にへたり込んで泣いてしまった。
 
 悠が去ってしばらくすると、ケータイが振動した。悠からのメールだった。
 
 急いで見てみるとたった一言、“放課後社会科資料室に来て”と書いてあった。
 
 言われた通り放課後に行き待っていると、悠が入ってきた。扉を後ろ手で閉めた悠に、思わず抱きついて泣いてしまった。

「学校に、メールが届いたんだ。
“クラスの高野清美と恋人関係にある藍沢悠教諭について”って言うタイトルで」
 
 言葉に詰まった。

「見せてもらったけど、事細かにあることないこと書いてあってね…」
「どうなるの…?私たちどうなるの?」

 悠は黙った。私は涼の言葉を待った。

「…今日は、帰らない。清海も、一緒にいて欲しい」

 私は頷いた。どうなるのか不安だった。
 だけど悠は私を剥がし、手をつないでくれた。
 
 一緒に学校を出て向かった先は、ラブホテル。気にしないことにしたのだろうか。
 
 部屋に入った瞬間に激しいキスをされた。私は幸せなのに、一瞬見えた悠の顔が、何だか悲しそうで、不安が募る。
 でもすぐにいつもの笑顔に戻り、ベットまで連れて行かれた。
 
 私をベッドに押し倒して、ゆっくり脱がされていく。私も悠を脱がして、いつの間にか二人とも裸で、笑いあった。

「君のそういうとこは、俺の姉に似てる」

 どういうことだろうかと考える間もなく襲う舌の快感。
 
「俺には双子の姉がいた。その姉は、この世に生まれることはなかった」

 正直話なんてまともに聞けなかった。それほどに夢中になった。
 
 悠は、その日はヤケにじらした。ゆっくりと私のあそこを舐めあげて、また指で弄って。

「姉は母親の胎内で、心臓がなかったんだ」
「んっ…悠、」
「姉は未発達で、俺だけ順調に育った。やっと人の形になって生まれてきたら、心臓がなかったんだ」
「悠、早く…」

 じれてよがると、悠はそれに答えてくれた。一気に入って来たので、痛かった。

「痛っ」
「俺は思った。あぁ、お姉ちゃんから心臓取っちゃったんだなって」

 そして腰を降り始める。激しい。まだ痛い。

「痛いよ、悠」
「もう一度、胎内に帰りたい」
「痛い、痛いよ!」

 ふと、悠は動きを止めた。
 こんなことは、初めてだった。悠はどこか遠くを見るような目をしていた。例えるなら、海のように深い目。

「なつみ…」

 聞き取れるか聞き取れないかの声で悠は言った。今にも泣き出しそうな顔で私を見た。

「ごめんね、痛かったね」

 それからの悠はいつも通り、むしろいつもより優しく私を抱いた。
 
 終わって余韻に浸ってると、ぎこちないような優しい手つきで髪を撫でてくれた。

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