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「なんの騒ぎよ」
と、花柄ドレスのルーシーさんがカウンターから出て来て亀ちゃんを睨み、壁に凭れタバコを澄まし顔でふかしている。
「客に掴み掛かるのはサービス外なんだけどツキコ」
「違う、ごめんなさいママさん、あの、お、俺が」
聞いちゃいなかった。
ルーシーさんはキレたように亀ちゃんに、顔を後ろに降って「こっち来いよ」の合図。
亀ちゃんは消えそうな声で「すみませんでした」と謝り、とぼとぼと着いていこうとするのを師匠が、
「待ってください、儂が悪いんです、ツキコちゃんは」
「お師匠様、あんたわかるでしょ。如何なる理由があろうとこの商売、客にそんな顔をさせたらクビなんです。ほら、早くしなツキコ。話は裏で聞くから」
「なら儂が話します、ツキコちゃんは今、状況がわかっていない…」
そして師匠は、野次馬を一人一人見つめ、「紅葉、皆に儂の金で酒を振る舞え」と俺に命じた。
「師匠、違うでしょ、」
「しかしお客さんには関係がないしお前も客相手ならわかるだろ。まずはサービスしなさい」
「うぅ、」
師匠の財布を預かっていた俺は袖口から財布を出した。
我ながら弱々しく震えるその俺の手を、のんちゃんが一度握ってくれて、俯いた顔を覗き込んでくれたのんちゃんはその財布を受け取ってくれた。
「だぁれもジャグジーの話聞いてやってねぇなおい、」
そう低く言い捨てた瞬間だけは、のんちゃんは亀ちゃん、師匠、ルーシーさんを順番に睨み付け、
嘘のような笑顔で振り向き、師匠の財布を上に晒して
「みーんなただ酒だぁ!ありったけ飲もうぜ!」
とのんちゃんが叫べば店は「ふぅ!」と歓声。
雰囲気がまた明るくなったところでのんちゃんはその財布をルーシーさんに手渡した。
「なんだか知らねぇが、取り敢えずハケよう」
そうのんちゃんが言えば師匠はしゅんとしながらも、亀ちゃんとルーシーさんに続いてカウンターの闇に入っていった。
「行くよ、ジャグジー」
と俺ものんちゃんに促され、そこに入るのだった。
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