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薄汚れたように見えたあの白い箱に不自然な、ベットの上の盛り上がった布と、行き場をなくした細く白い曖昧な煙。
特別優しくなれたわけではない。むしろ、出会った日くらいは憎んでいた筈だった。
「君の母親は何故こんな時にすら来ないんだ?」
薄汚れた壁のような嘲笑を思い出す。見た瞬間に「この男は自分とは違う世界を生きている」と本能が語った黒のダブルスーツ。降下した。
だが、生きた血液は酷く流れがいい、降下したそれは瞬時に爪先から頭まで掛け昇り涙を作る、頭の毛細血管はしかし、ドロッとした物が詰まってはち切れてしまうのか、そう感じた。
心臓は赤血球や白血球を適度なバランスとしてこの紅い血を身体に送り出すために鼓動をしているとばかり思っていたのに。
違う。
詰まりを解消するのか、それとも脈の早さにその細さが耐えられずくも膜下出血を起こすのか。
『浩が出所した』
その時自分がどんな表情をしたのかがわからない、互いに。
箱の中の湿った蒸気はぼんやりと身体を暖める筈だが、どうにも芯が冷えるような物だと、膝を抱いたその手首が気になって仕方ない。
兄が一体何をしたのかと問うのは最早、一人衝動に男へ噛み付くように吠えるその少年が物語っている。非現実のような現実しか見当たらないその場所は酷く冷たかったように思う。
紅い。けれども身体の悪い組織にも負ける。濁っている。
箱の微妙な汚れと変わらない。この空気はちゃんと臭う。濁っている、湿っている。空気は綺麗なものなんかじゃない。
沈殿した紅いその血液が箱から溢れる湿った鉄の臭いはその景色をありありと、
目の前で弱々しくも睨み付けられたのか、それすら恐怖を覚え、その過去の日まで思い出させた。
「俺じゃないでしょ」
とかつて言った少年は何を考えたのか、その時互いに目があった瞬間はどんな表情だったのか。
弟、雪の前に現れた男の冷たい温情はカミソリのように自分を傷つけ、
弟、陽一の前に現れた男に対する怨声は鉄砲のような物だった。
13年前のその日に会った出来事は至ってシンプル克つ、残酷だった。
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