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あれから10年以上が過ぎた現在。
今や彼はいないけれども季節はそれだけどうやら流れたようで。
昔よりは日本にも慣れた、キリストもクリスマスも知った。世間を、知った。
四季折々、この国にはたくさんの事情があることを流星は知った。
あれから10年、しかしながら日本より星がはっきり見える国にも赴いた。なんなら、日本にいた時間の方が短いのかもしれない。
28年を振り返ればそれでもやはり故郷と言えば、「My hometown is Japan.」と答える。英語圏では。あまり答える機会もないけれど。
情緒は良いのだが。
この国はマメに災害があり、気候が1年に4パターンも変化する。これには毎度、まぁあまり長くもここ数年は帰って来ないのだが、苦戦する。
なんなの4回って。12ヶ月、1年を割ったら3ヶ月に一度ペースだよ。よく皆様ご長寿だよ。ストレス溜まるんですけど本気で。
流星はここ最近故郷には長期滞在をしており、いつの間にか春終わりから現在冬である。もれなく四季を感じて流星はあろうことか潤《じゅん》が言う、
「自律神経失調症」気味である。
と言うよりニコチン中毒のような気もしなくはない今日この頃、12月の寒い時期。クソ狭い部署にヒーターが導入され、(と言うより最早流星は経費問題につき、3台ほど実費で購入した)快適なデスクワークを送っている。
子供が増えてヒーターを一台ぶっ壊された時は本気でその子供を射殺しようかと思ったが先輩政宗《まさむね》がそれを制し、そんなどたばたした中でついに今年の仕事も僅かとなりつつあった。
あぁ、今年は長かったなぁ、よくよく考えれば去年の今頃はアメリカでクリスチャン暴動を鎮圧して何人現地の悪人だかよくわからないブローカーみたいなやつを殺しただろうか、密令で。あの人平気でそーゆーよくわかんない命令を押し付けやがるからなぁ、絶対良い死に方しないだろうなぁとか、暖かい部署の昼下がりにふと上司を思った。
「あんさ、流星」
「うぉぉ、なんだよ、」
ふと、隣で今の今まで「あークソなんだこれは…」だの「うー、銃弾、9oパラベラム…340メートル…」とか多すぎる一人言をぼやきながらパソコンをカチャカチャやり両利き書類書き(命名、政宗)をしていた末期症状の潤が珍しく話し掛けてきた。
大体こんなときの潤には話し掛けるとろくなことがないので流星は最早、隣にいながら潤の存在をシャットアウトしていたので、話し掛けられたのが正直かなり衝撃だった。
「なんだよ人をバケモンみたいに」
「あぁ、うん。何、どうした」
「あのさ…。
お前クリスマスって何すんの」
「は?」
何それ。
なんなのその話題投入。どう切り返すべきなの。
潤の集中力はどうやら切れたらしい。珍しいこともあったものだ。最早パソコンや書類から手を引き、後頭部で手を組み、だらける体制に入った。
「いやさ、お前んとこ何すんの」
「え?なんで?」
「参考までに。ほら俺もいま預かりもんがいるからさ」
「あ、あぁ…」
あのガキか。まだ預かってんのか。
てか一体どこのガキなんだか。ホントにこいつのガキではないのだろうか。
「お前ん家、仏教?」
「あ?いや知らん。
あ、いやそうだ仏教だな、そういえば。なんで?」
「いや、聞いてみただけ。
やんなくていいんじゃね?お前日本人だろ?まぁ、宇宙人っぽいけど」
「うざっ。
いやお前さ、日本はそうはいかないでしょーよ。だからお前童貞なんじゃないの?」
「いやだから違ぇってお前何年言ったらわかんのクソビッチ。
まぁ確かに日本はそうなんだよなー。え、なんかすべき?」
「え、考えてないのお前も」
「そういえば忘れてたね」
「あちゃー。
お前信じらんない、環《たまき》ちゃん可哀想。何考えて生きてんのお前」
なんでそんなにこの人格破綻野郎に人格を否定されてるんだろうか。
まぁいつものことだけど。
「確かに考えないとな」
「えー、でなになにどうすんの?デートプランは?
やっぱ俺だったら夜景見て、うまいもんは食わなくていーやよくわかんねぇしクリスマスの料理って。
で、酒飲んでいー雰囲気になったら夜景が見える高い高級ホテルのカーテン開けっぱでセッ」
「一回死んで良いぞお前。お前いままでそうやって女落としてきたのか、女か?」
「どっちも」
「聞かなきゃよかった。だからさ、別に彼女じゃないの、わっかんねぇかなお前の猿頭じゃ。プラトニック!OK?」
「え、待て待てお前さ、今一緒に暮らしてどんだけだっけ?」
「2ヶ月くらいかな」
「で?一回もないの?」
「だからね、潤。俺たちはね」
「この根性なしが!お前には精子と言うものが作られないのか!
3周回って圧巻だわ何それ信じらんない。だってさ、好きで一緒にいて両思いで彼女じゃないってまずお前その男根切り落とせよ。てか失礼すぎるわなにそれ死ねる、笑える。いや笑えないバカじゃないのお前。何?ビョーキなの大丈夫?」
な、な…。
なんてことを言いやがるんだこの女顔は。
「クソ野郎にはわからん感性なんですよ!お前みたいに下半身で生活しとらんわ!」
「いや俺も下半身で生活しとらんわ!普通の感覚だわ!
なんなのこの甲斐性なし!え、それともあれか、そんなに魅力がないのか?それともよもやお前同性」
「違うわぁぁぁ!魅力はありまくりだし俺はノーマルだ!いい加減殺すぞこの淫乱野郎!」
「いい歳して童貞よかマシだわ、アラサーで童貞とかマジ魔法使えよ!稀少種だわ、天然記念物だよ!」
「全部違うけどね!てめぇみてぇにほいほいガキ作らんわアホ!」
「だから俺の子じゃねぇから!」
「てめぇらさっきからうるせぇんだよ!仕事しろバカコンビ!」
隣から書類が乱暴にはらはらと投げつけられた。
忘れていたが今年大詰めだ。政宗も気が立ってる。
「いったぁい!このゴリラ!」
「うるせぇんだよ性格破綻!隣でギャーギャー騒ぐな、捻り潰すぞ!」
「うるせぇごめんなさい!」
「こっちもごめんなさい!」
「よろしいタバコ吸いに行くぞバカ共!」
先輩が立ち上がり、二人揃って「はぁい!」とついて行くことにした。
部署は今日も平和だった。
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