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幸いにも今年はクリスマスイブとクリスマスが土日だ。年末の仕事も足止めは食らったがなんとか順調に終わりそうである。
流星は試しに、潤や政宗に「観覧車に行こうと思うんだが」と言う話を喫煙所でしてみた。
「なんだお前」
物凄くにやにやして二人ともそう言った。
「案外ロマンチストだなぁ」
「そういう感覚なの?」
まぁ確かにあれは綺麗だった。
しかしただ、思い出がそれしかないのも事実だし。
「でもまぁ確かに」
「それってだって頂上でチューでしょ。お前よく恥ずかし気もなく良い歳して人にペラペラ言えたねんなベタなやつ」
そう潤に言われて一瞬理解するのに掛かった。そして、「は?」と、思わず返す。
「え、そーゆー乗り物なのあれって」
「はぁ?」
頂きました。すごくナチュラルな「はぁ?」を。
「お前はなんなの?」
「え?」
「なんだか見えなくなってきたぞ」
「単純に?純粋にそれなの?」
二人の言葉攻めに理解を要する。さて、自分はそんなにズレているのか。
「変?」
「いや、全然」
にやにやしている。それになんだか落ち着かない。
「だって…クリスマスって感覚わかんないんだもん」
「は?」
「いや…唯一そう言えばってのが、中学の頃、仕事帰りに観覧車に連れてかれて…」
「あぁ、」
誰の話をしているのかはわかったらしい。そしてこの恋はわからんなぁ、とぼんやりと二人は思う。
なんせ流星はこの調子だ。
この男本気で純粋なのだ、柄に合わず。こーゆーことや何より人に対して。
しかしそれは、自覚があるとかないとか、そんなものではない。性格だ。よくも悪くも几帳面なのだ。
「…なるほどね」
「それが一番の思い出って訳か、クリスマスの」
「一番の…?」
「まぁいいんじゃない?
仕事帰りってことは夜景だったの?」
「うん、そうだよ」
「あの人案外そーゆーとこあるんだね」
「あいつわりとそーゆーヤツだよ。ふとしたときに人に残りやがるヤツ」
「あぁ、そうかも。
うん、やっぱ観覧車にする」
だって夜があんなにも綺麗だった。きっと誰が見てもそうなんだ。
これを共有できたら、それは嬉しいことなんだ。
「じゃぁ頂上でチューじゃなくて夜景見なきゃねぇ」
当たり前だ。何を言ってるんだこの変態は。
でも。
「まぁ、そうだな」
「プレゼントは?」
「は?」
そしてこの単語。
なんだって?
「いや、だから頂上でチューじゃないって…」
「は?国民的儀式だよ。クリスマスはなぁ、サンタが来て靴下に欲しいもんぶちこんでくんだよ。ウチ今それで難航中だかんな」
なんだって?
「なにそれ」
「はあ?」
「なんなのその変態じみた行為は」
「…お前アイスランドは行ったことないの?」
「ない」
「はい、しゅーりょー。政宗、こいつの恋は終わりました」
「いやいやまだ早い。
取り敢えず流星、第二段階はクリスマスプレゼントだな」
「えっ、待って。
靴下に入るサイズってなにそれ」
「いや、デカい専用靴下なんだよてか最早それ忘れよう。普通に渡すんだよ」
「いや忘れんな。俺わりと近道作ったんだけど」
「は?」
潤は政宗の耳に手を当て、内緒話をした。それを聞いた政宗は、「いや、早い早い」と一蹴。
「まだその段階じゃない」
「いやもうよくね?じゃぁいつ?こいつもう結婚」
「いやいやいやいや」
このままでは収拾がつかなくなりそうなので、勝手に盛り上がる二人に割って入る。
「婚約する日なの?もしや」
「うんそう」
「違う!んなこと言ったら少子高齢化問題は過ぎ去っている!
プレゼント渡せばコンプリートだから!」
「ついでにガキでも作って」
「死んでしまえ女顔!」
多分二人ともちょっとおかしい。
これはあとで伊緒に聞こう。
「取り敢えず伊緒に聞く」
「それはそれで可哀想」
「確かに。お前伊緒には何もないの?」
「いや、色々話し合って、また別の日に行こうって」
政宗も潤もハモり、「大人だねぇ…」と関心。
「伊緒はクリスマスは俺ん家だな。よし、プレゼント考えるか」
「そんなに普通にあげるもんなの?」
「そうだよ。日頃の感謝だ。
あいつ何が欲しいかなぁ」
日頃の感謝かぁ。
「なんかわかんねぇけどわかったわ。そんな行事なのね」
「てかお前よく生きてこれたよね」
確かにそうだ。
自分はわりと世間知らずだ。今更だが。
「あと食べ物はケーキとチキンだよ。わかった?」
「え、それ限定?」
「大体は」
「それって日本人みんなでやるのか」
「そうだね」
「急性的な鳥不足とか小麦不足」
「もういいもういい。とにかく頑張れよ世間知らず。応援だけするから。
さて仕事戻ろ」
疑問は残ったままだが、先に潤が腕を伸ばして出て行くので、そのまま二人に着いていく。
というかこいつは果たしてどうするのだろうか、クリスマス。
しかしいまは自分の問題を片付けようと思い直した。
まずは調べてみようかクリスマス。けど、もしかするとそんなに構えるものでもないのか。潤だってきっと、子供のために悩むのだろうし政宗だって、友人というか部下というか、繋がりのある者のために「やっか」って感じだし。
取り敢えず今日得た情報はプレゼントをあげるらしい、ということだった。
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