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両者、一歩も引かなかった。
どちらも結局意地は張っているのだ。
「だったら始めからそうすればよかったのに、なんでお前のとこなんて来てるんだよ!
だまされた!優しいやつのとこ、連れてってやるなんて、嘘じゃんか。みんな、オレなんて…そうやって…」
ついに雲雀は喋れなくなってしまった。
あぁ、めんどくさい。
『星川さんとこの?そんな…』
『可愛いげのない子。人形みたいに何も言わないのね』
どこに行っても、やっかまれて。
「…ああぁ、うっさ」
どんどん嫌な大人になっている。
自分が嫌いになっていく。
「うるさいんだよ、お前」
「潤、」
「大体なぁ、いきなり人の家上がり込んどいてね、なんなのさ、ホント」
「ちょ、大丈夫か潤」
「でも、でも、」
何を言っているのかよくわからない。
何故なら情緒がぐらついてしまったから。視界のぼやけに、本日二度目の号泣かと情けなくなった。
「めんどくせぇから取り敢えず子供らしくおとなしくしてろよ、バカ」
言ってることは支離滅裂で。
意味わからないし大の大人を号泣させてしまったことに雲雀は涙も引っ込み唖然としているが。
それを見て政宗は思わず笑ってしまった。
「お前らそっくりだな」
「どこがだよ、こんな」
「負けん気が強いとことか、なんだかんだで相手の顔色ばっか見てるとことかじゃないか」
流星も腕を組み、言う。
「え?」
「あとすぐ泣く」
「なっ…!」
「反抗的」
「可愛くない」
「なんか…」
「むかつく!」が皮肉にもハモる。それに流星も政宗も顔を見合わせ、吹き出した。
「はいはい、仲直りしろよめんどくせぇから。
潤、お前はまず部署のみんなに雲雀を紹介しろ。雲雀も自己紹介。あとお前は出来るだけ静かに遊べ。わかったか?さもなければ次、俺はマジでお前を撃ち殺すやもしれん」
そう、なんだかこんなときだけ見せる無駄に爽やかな笑顔で流星が言えば、「はい…」だの、「わかったよ、」だの、不服そうな二人の返事が返ってきた。
一週間。
取り敢えず部署での雲雀の立ち位置は「癒し係」「お茶汲み」となった。
それからその日一日雲雀は大人しく潤の膝の上に座っていた。潤としては仕事はやりにくかったが元々器用なタチだ、後半にはその邪魔さにも慣れ、いつも通りの仕事をしていた。
雲雀の頭に鼻を埋めながら潤が「うー」だの「あー」だの、顎をのせてガチガチやってからかってるあたり、やはり案外ベストマッチな二人なんじゃないかとまわりは納得し始めていた。
「あっ」
そして頭の臭いを嗅ぎながら言うあたり、昼間の号泣は最早潤のなかではなかったことになったらしい。少なくとも立ち直ったようだ。
「お前今日の夕飯何が良い」
「え?」
「うん、夕飯。買い物してから帰ろう」
ちょっと気に入った。それからすんすんと鼻を埋めてぼんやりと雲雀の臭いを嗅いでいるのが異様だ。しかしやっているのが潤だ。ごく自然である。
「うーん、やっぱりこんな日はからげがいいんじゃない?」
「なんで」
「なんとなく」
「胃もたれするから嫌だ。あと鶏肉だからダメ」
「なにそれ!」
「あれは?ハンバーグ」
「あ、それってさぁ、ケチャップ?」
「お前は邪道だね。あーゆーのはねぇ、あっさり大根おろしとポン酢だよ」
「じじいかよ」
「なんだクソガキ」
「ねーねー、りゅーせーは?」
「は?俺?」
すっかり部署にも馴染んだ雲雀。つくづくこの子供は凄いと潤は感心する。
自分が子供の頃は、もう少し閉鎖的だった。
自分も、大人も。
「特に決めてない」
「じゃぁまさむねは?」
「俺は枝豆と軟骨」
「雲雀、真面目に考えよう。作るの大変だから」
「潤はりょーり出来ないって聞いたよ」
「まだ出来ないのかお前」
「家政婦鉄面皮は黙ってろ。いいわ、俺が作ったるわ」
「えー?ほんとにー?」
「あぁ、渾身の目玉焼きだよ」
「まじめにかんがえまーす」
つくづく可愛くないガキ、そう思う。てかそもそも。
「大体家でまともに飯なんて食う奴の気が知れないわ」
「え?」
「あんなんはね、誰かが作ってくれんだよ」
半ば偏屈だ。
「…あー、あれがいいんじゃね?オムライス」
「昨日食った」
「マジか、意外にやるなぁ」
「子供って何が好きなの?ホント」
「なぁてかさ、俺なんなら独り身で面倒見が良いスナイパー知ってるけど紹介しようか?」
とか、本気で心配そうな顔をして流星が言ってきた。
なんだそりゃ、こいつは頭のネジが飛んでいるのか。
「はぁ?やだよスナイパーとか」
「いやお前よかマシだろ。まぁちょっと自殺願望あるから逆に良いかもね。そーゆーのいりゃぁ死ねねぇだろ?」
「…いや思うによ?そいつそれでも死んでねぇんだからお前みたいにさ、恋人だとか同居人だとかいるもんなんじゃねぇの?そんなやつに任せんの気が引けるわ。第一スナイパーとか嫌だよ」
「あー、確かにな。ありえるな。あいつ素性が知れねぇしな。
トチ狂ったら心中とかしちゃうかなそーゆー奴って」
「ありえるー。やっぱ無理。いいよ大丈夫じゃねぇけどまぁ仕方ないでしょ」
「お前大人になったね」
「まぁね」
なんて詮のない会話。そして夕飯はどうしたのだろうか。
「てか何故鳥ダメ?」
「ん?宗教行事が近ぇからだよ」
「あぁ、なるほど」
政宗だけがどうやら納得したらしい。
やはり意外にも、コンビネーションは抜群だな、と政宗は思った。
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