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「そうですね…まぁ、一応書類を書いて貰うことは出来ますか?」
「はい大丈夫です。
あ、そうだな、一応俺からも言うのですが、彼女は学校にも一切相談していないようで、まぁ…お兄さんと、何かあったらと思いまして金曜日は学校に行かせていません。今日はここに来たし、明日からはどうするべきかというのはあります」
「……確かにそうですよね、何か…ねぇ?確かに。
もしも西浦さんの手から瑠璃ちゃんが離れる場合でしても、役員と一緒に登校するなり…それでも限界はありますし、学校に協力を要請したりなどもありますよ。
あと、そうだ。西浦さんが例えばこのまま…となった場合も瑠璃ちゃんの進路によって、という心配はあるかと思いますが、そこも一応は支援出来ないこともないです」
「へぇ、そうなんですか」
「今は整ってきましたからね…しかし18歳まで、が原則なのでこちらはご案内しか出来ないのですが…その辺はどうでしょうか」
「どうでしょうか、とは?」
「…先程自身でも仰っていました通り、西浦さんの収入が安定していないとのことでした、」
なるほど、審査に対して妙な圧というか、探りだな。
「ほとんど俺に可能性はないのだろうなとは思いますが、俺の貯金などは多分、年相応くらいにあります…まぁ、満足ではない額ですよね。
もしもな時、そういうのは彼女とも話し合うんじゃないでしょうか」
「…まぁ、」
「自分の未来をどうするか、彼女が決めることかと捉えていますから。端くれでも大人なので、そうなったら話を聞きますよ」
なるほどなるほど…と、うんうん頷いている様子はどうやら印象は悪くないらしい。
「本当は…明るい道がこれからでもあったって、いいなと思います」
書類を目にする。
少し役員が耳を傾けた、と思えて「人生100年って言われ始めたでしょ」だなんて、力を抜くように出てくる。
「何年、何十年苦しんでその中の今、一週間近くの出会いで、そう考えるとまぁ、俺も悪くないと思っていて。でも、彼女はあと数十分で生きてきた18年を振り返る。
良いか悪いかなんて、本当に後付けでしかないんだと思うと、やっぱり若いからなぁ。まぁ、これから彼女にはたくさん選択があるでしょ。その中のたった一回から、光ある方を選べたらいいなと、他人だから思うんでしょうかね?」
家族構成、親の名前やら。
書き始めると、「…書類についてですが」と役員は言ってきた。
なんだ、それって書く前にいうべきじゃないのかと思ったが
「どうなるかはその時によるのですが、所謂これは「里親登録」ですので、例えば他にも、となった場合、応じていただくこともあるかもしれません」
などと、俺のくだらない理想論の上に業務上の話をしてくるが、正直頭に入らないような。ついでにパンフレットも渡された。
例え本当に万が一あったとしても恐らくは俺など、今回限り、のようになるだろう。大体そんなものだ。
そうしているうちに瑠璃と役員は箱から出てきた。
やはり瑠璃は俯いたままだった。
「えっと、瑠璃ちゃんとお話しをしたのですが、」
「はい」
「西浦さん、ですね」
「はい」
その他女性役員にも、俺は同じような話をした。
「で、なんですが、瑠璃ちゃんは取り敢えず今は、施設に入るのが一番なのですが」
「まぁ、はい」
「だから、それは」
「…不安なのも、わかるんだけれども。
瑠璃ちゃん、来月の誕生日まででもどうかな?そこからは退去して、自由にしても」
何を話せたかはわからないが、きっと、どこかが噛み合ってないんだろう。
最早来なくてもよかったんじゃないかと一瞬過ってしまう。
「誰のどういった一番なんですか、それ。
そんなにほっぽり出すのは、つまりそれから先の高校などはどうなるって言うんですか」
俺はこの人達と同じ、それ以下の他人じゃないかとどこかで過りつつ、話せたかわからない瑠璃を見てつい声を上げてしまった。
なんだか都合が良いと感じてしまったのだ。
「いや、施設に居て貰ってもいいのです。確かに18歳までで、高校卒業までいる子もいますが」
居て貰うって、なんだ。いちいちこの女は言い方が微妙だな、俺が気にしすぎなのか?
男役員を見た。
特に異論もなく「まぁ…」と、こんな調子で。
「…一応お聞きしたのですが、瑠璃ちゃんは西浦さんの元にいたいと。ですが」
「まぁわかりますよ」
「なら、という提案で…誕生日まで施設にいて、そこからでもいいんじゃないかと」
「…でも結局それは一ヶ月、私は、知らない人とで、なら兄や父とどう違うんですか、」
「不安なのもわかるけど、そういうことは」
「…まぁ確かに正当な不安だと思うよ」
…わかってはいたのにな。
瑠璃はやっぱり不安そうに俺を見るけど。
そんな目で見んなよ。ホントに。
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