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CUT1-2

「パパー、ぶんちゃんしかいないよ」

娘が画面を観て少し不満顔。台湾金髪野郎宅のリビングにて。

「…文杜くんやっぱり職人だよねぇ。譜面しか見てない」

確かに画面の彼は相変わらず、愛想がない。しかしどうやら音はそれでも、ノってなさそうだが純粋にうめぇよと、台湾金髪野郎は思う。

あとはやっぱり猫背が残念なんだよなと感じる。そして譜面を眺めているようで、案外ページを捲っていない。これはなんだ、なんなんだと感じた。

「いやぁ、ノってねぇよな…。
あ、そういやこいつこのツアーのこのスタジオ、機材が却下されたって不機嫌を呟いてたわ」
「機材?」
「あいつスタジオ毎に、音響に合う機材とか、ああ見えてすげえうるせぇんだよ」
「やっぱ職人だね。
てか新鮮だよねぇ、文杜くん、ライブTシャツ着る良識あったんだねぇ。だからリストバンドなの?」
「だろうなぁ。でも私服と大差ねぇな」

しかしまさか。
“LOVE MUSIC LIFE
Cara”
と白地に真っピンクのロゴ入りTシャツを着るだなんてこれはネタだ。それはいいのかよ、機材とかよりそれ目立つだろう。すかさずパシャリ。SNSにあげてやった。

見れば狂犬も、自分がめちゃくちゃバシバシ叩いて「へぃやー!」と叫んでいる場面を上げていた。

やめろマジあいつ。

しかしながらライブアイコンのギタリストが“(笑)俺まだ観れないんだけど”と返してきてSNSはストップ

先程の、色々誤解しか生まない狂犬のSNSを思い返せば、なんなんだあのサイコ野郎、頭がおかしいと、焼きビーフンを食いながら金髪は思う。

あいつら二人で観てんのか、やだなぁ、俺案外まわりが新人過ぎてでしゃばってるんだけどこのライブ。

しかし狂犬もわりと、やっぱ不機嫌そうにちょいちょいミスりを誤魔化している。確かに音響悪そうだなと、映りはしないが確実に入ってきた音に思う。これは動画サイトに上げられたらそれこそ音が死ぬんだろうなと思えた。

「やっぱなぁ…、
ねぇなっちゃんのも観たい」
「やだよ俺調子こいてるもん」
「ええー」
「あ!今度はげんちゃんだー!」

娘が言う。
番組が切り替わり、ギタリストのバンド、“The hate”へ。

CUT2-2

「うわぁ、あいつすげぇな」

狂犬自宅のリビングにて。
珍しく4人バンドのサポートを努めた台湾金髪野郎。ステージライトが御光のように金髪を照らしていた。

なにより。

「Tシャツセンスある〜」

黒地に白字でシンプルに“Get me Rock”。これは絶対に自分のTシャツをディスられる。

覚悟でSNSを開いたら案の定、白地にピンク文字Tシャツの自分の写真は無断掲載されていた。

「はいやー!だってさはいやー!ふはっ、なにあいつめちゃくちゃ調子こいてるやん。しかも汗びしゃびしゃ。まわりめちゃビビってるよあいつアホだろ」
「いやあいつハゲでしょ。めちゃ御光やん」

ムカつくからあげてやろ。
画面をパシャリ。お返しにあげてやって再び見やる。

「あでもこのバンド、ナトリでよかったな」
「え、そう?まぁでも楽しそうだね。
文杜はー?観たい」
「やだよ俺半ギレだもん」
「なんで?」
「譜面がBか8かわかんねぇし音響死んでたもん」
「あらー、それでアイドルバンドやったのお前」
「そうだよ。ギャラに食いついたらひでぇひでぇ。絶対あと2年後には解散するよあれ」
「辛辣〜、俺らと大差ないやん!」

明るく言ってますがこの小動物、そもそもお前のせいでサポートなんすよ。

「あはっ!凄いナトリ本気出しちゃってるよでもまわり騒然じゃん」

確かにあかん。サポートが一番目立っている。

「あ、げんちゃんだ!」

同居人が言う。


最早どちらの感想も。

「うわぁうめぇ、きれっきれカッティング!けど…」

だった。

「ウチのポンコツ引きこもりとは違うわ〜。だけどなんか違うなあ」

と台湾。

「相手と最早相殺して影薄っ」

と狂犬。

画面ではフェンダーの手元を見ながら無難すぎるコードを繰り出す長身ギタリスト。しかしどうやら。

「めっちゃつまんなそうってかふてくされてね?てか全員若すぎて各々無難な上手さだけどチューニングちゃんとしてんのげんちゃんだけじゃね?」
「たまにいるよねぇ、こーゆーアナーキーな陶酔系バンド」
「あぁそこベースちゃうよ、ドラムいねぇじゃんスカスカしてるよ、あぁギタボどうした白眼剥いたよ叫んだよ怖っ」
「いや真樹もわりとあぁだよ。チューナーはげんちゃんだからしっかりしてるけど…ってお前らエフェクターどうした」
「美学かねぇ」

取り敢えずギタリストになんか言ってやろうと狂犬は考えた。

“若いなぁげんちゃん”というジジイじみた狂犬の呟きにすかさずドラムが“大人だねぇげんちゃん”と乗っかる。

当のギタリスト、“待ってよまだ観てないんだよ!”と返信。

そうかげんちゃん、今度は何レコーディングだよと思えば。

「あ、げんちゃんからメールだ」

と同居人が言う。
最早テレビは観ていないようで。

「“…Tシャツ寒いから早くしてよあまちゃん”だって」
「確かに!」

ギタリストが着ているTシャツ。
CDジャケットだろうか、写真がプリントされている。一番無難だ。

「げんちゃんが一番大人だねぇ」

しみじみという小動物引きこもりギタボ野郎が言う。

「やっぱでんにじが一番だな」

そう言って純粋そうな童顔でにかっと笑ったのが。

「この野郎〜真樹め〜!」

可愛らしくも憎たらしい。
狂犬が頬をつねり激写。

“やっぱでんにじが一番だな”と添えて投下した。

“死ね真樹”、“あまちゃんウザイ”、“マジでウザすぎ可愛い”と、3人の間で大炎上したのだった。



はい、でんにじの“動画”短編でした。(思い付きで書いた)
恐らく休業中でしょうね。
何故書いたか?
先日のSyrupライブのせいです。

ブログにあげるくらいの短編でした〜。

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