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「私は有島の弱味を握っていると言うことだよ、熱海くん」
このゲス野郎。
そうやって、
「…あっそうかよ」
キレてしまった。
腰を抜かした変態野郎の前でしゃがみこんで顔を覗き込んで、
髪の毛を千切るくらい鷲掴み、一発思いっきりぶん殴っていた。
「ぶっ殺すぞてめぇ」
そんなくだらねぇご託で子供を縛り付けて遊ぶやつなんて、
僕は異国でそうやって餓えて死ぬ子供をどれ程見てきたか。
白衣の奥からルガーを取り出してハンマーに親指を掛ける。
「熱海さん、待って」
潤くんの泣きそうな声がした。
「その人殺すくらいなら俺を殺して」
そう言われて頭が冴えた。
「潤くん」
「俺が悪いから」
そう、純粋な目で。
子供らしくもない泣きそうな笑顔で言われては堪ったものではない。
何が悪いというの、君は。
だが殺意は消えた。
ぶん投げるように栗林の髪を離し、「命拾いしましたね精子野郎」と吐いては立ち上がり、潤の元へ行き手を差しのべた。
「立てますか」
「…ちょっと無理っぽい」
「全くとんだクソガキですね」
なんだよ、俺を殺せって。
ガキのクセに、このバカ。
仕方なく肩を貸してやり無理矢理立たせ、背負ってその場を去ることにした。
潤は観念したように「…ごめんなさい」と僕の耳元で言う。
この、クソガキが。
「謝るくらいならやるなって感じですよなんなんですか」
「すみません」
「あれほど言ったでしょ」
「ごめんなさい」
君は悪くないとしても、
いや、悪い。君はどうして自我を捨てるんだ。まだ、子供で未来があるのに。
「あのねぇ、いかなる理由があるか知りませんがそーゆーのは子供がやってはいけないんですよわかりますか?胸クソ悪ぃな。ガキはガキらしくおとなしく家でお絵描きでもしてろっつーんだよ」
権力で脅かされて死んだように生きるのなんて、バカげてるよ。
「でも」
「でもじゃねぇよバカ殴るぞクソガキ。
あー気分悪い僕の最高の戦艦どうしてくれんですかあームカつくあのクソ下半身野郎、沈んじまえ。やっぱ殺しときゃぁよかったなんなのあームカつく。
大体なに弱味握られてるか知らんがそんなんで貞操は返ってこないんですよわかってんの?まぁ大方わかってますよ?くっだらねぇ」
捲し立てれば。
「…そこまで言う?あんたに何がわかんのよ」
どうやら案外気は強かったらしい。
「わかんないわかんない全然わかんない。わかんないから言うんですよ。
たかだか3000万隠蔽してマリファナを海外に違法流出してるなんてねぇ潤くん、みんな知ってるんですよ」
子供じゃ手に負えねぇバカな大人しかいないんだよ、軍隊の上流なんて。
君が背負う意味なんてない。
「えっ…」
「…だから、子供は黙って見ておきなさい。大人が解決してあげます。
君は、自分を大切にしなさい少なくとも、僕の前で二度と死ぬとか言うな。僕はその言葉で何人部下を殺したと思ってるんですか。
ついでに言うと軍人は皆甘くないんで。栗林だけじゃない。他のやつらだって戦地に行けば皆あんなんだ。だからね、自分の身は自分で守りなさい」
「…ごめんなさい」
時間を掛けて。
ついに潤を泣かせた。
さっきまで頑張っていたのだろうが、残念ながら僕との口喧嘩勝ったヤツなんて戦友くらいしかいないんだよ。
「…わかったらもっと泣きなさい。いいよ。僕は何も見ていないから」
いつから耐えていたんだろうか。
君は、ずっと耐えて生きてきたんだろうか、擦れるまで、ずっと。
背中で震えるように泣く少年に、まぁ、少し息は整えようとした。
上官なんて、
身分なんて、
てめえでなんとでも生きやすくなるんだよ、僕は一回死のうがそうやって、生きてきたんだよ、クソガキ。
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