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 「殺すぞ」だなんて。
 銃突きつけられてあのクソ栗林にあの家で、床で。
 犯された時くらいしか言われたことねぇよ。

「お前、猫っぽいな」

ふはっ。
なにこいつ。
読心術かよっ。

「は?あんた何?」

ポカンとした。何故?

「もしやそっち系?」
「は?何が」
「違うの?」
「だから何が?」

えっ。

「え、それ素なの?」
「だから何がなんだよ!」

ふはっ!
やべぇ。
おもろすぎる…!

「マジかよぱねぇ!世間知らず過ぎんだろ!」
「あ?なんでお前に言われんの?」
「くっ…おもろい…!」

 腹を抱えて笑えるわ。
 でもそっか。普通はそんなの、想像しないよね。

「あわよくばちょっと遊んでやろうかと思ったけどやめた。あんた純粋そう」
「そうでもねぇよ。純粋なら今頃おとなしく出てるよ」
「…なんで警官になるの?」
「あ?」
「いや、普通はなんでかなと思って。参考までに」

 壽美田流星はぼんやり、空を見て考え始めた。正義感とか、強そうだけど、なんか、そんなんじゃない気もする。

「サブマシンガン」
「は?」

 ボソッと言った一言に。
 何故だか樹実さんの、あの拳銃を寄越してきた顔がまた浮かんだ。

「サブマシンガンを持った背中が忘れられないから」

何故だろう。

「それってさ、警察じゃなくない?」
「うん、多分違うな」
「はーおもろっ」
「お前は?どう考えても警察の厄介になる側だろ」
「うーん、成り行き」
「成り行きって…」

人生レール。
父ではない。じゃぁ、誰かって。

「まぁでもあんたと一緒かもね。船に乗る姿が好きだったから」

雨さんだろうな。きっと。

「それ警察じゃなくない?」
「うん、違うかも」
「俺の知り合いも、船が好きだった」

少し、切なそうに見える。
そういう人ってきっとさ。

「へぇ。大体そーゆーやつって変人だよな」
「そうだな。変人だった」

けど。

「ホント、変人だった」

海軍訓練所を潰すくらいには。
今は、パソコンをカチャカチャやってて。
きっとつまらないに違いない。
あの人はこの警察学校ですら、つまらないと言ったんだ。

「つまんねぇなぁ」
「ホント、クソつまんねぇ」

 国家が聞こえる。
 多分これが平和で、揺らがない正義で、常識なんだろう。

「ミナイ、クラクション、ベイベー」

ははっ。

「うわぁ、世代」
「え?わかる?」
「知り合いがこの前動画見てた。好きなやつがいたからってさ」
「趣味が合うな」
「確かにかっこよかったけど、もう聞けないんだよなー」
「ギター死んじゃったからな」
「下手にメンバー編成されるよりあーゆーのはいいよね。俺聴くやつメンバー2回代わっててさ。てかソロのが好きかも」
「誰」
「リンゴ」
「うわぁ、それこの前借りたわ」
「うわぁ、うぜぇ」
「なんでだよ」
「サブカルクソ女子っぽい」
「うるさいなぁ」
「つかだったらベンジー聞けよ」
「聞くよ。知り合いが好きだからな」
「うわぁ、ブレないな」
「なんだよウザいなぁ」
「とか言う俺はミッシェルもベンジーもよく知らねぇけどな」
「なんだよ」
「世代じゃねぇし。俺の世代はチキンだよ」
「は?」
「知らないな。あ、あとアヴリルとか」

 なんだろ、この会話。
でもさ、やっぱりつまらないはずだよ。けどね、初めてだよ。

「あー、それ留学中聞いたよ。あっちじゃ、も少し前感あったけどな」
「留学中だぁ?うざっ。
あー、あと韓国のかわいーねぇちゃん達とか。あとはパクりばっかしてるなんか5人組とか。あとはなんだろ」
「サザンは?」
「あんたらは聴いてろ」
「マサムネは?」
「やさい」
「野菜?え?」
「うーん、優しいみたいな」
「うーん、あっそ」
「あ、ジュディマリはわかる」
「何それ」
「あんたのが歳上でしょうよ」

 ぼんやり壽美田流星は何かを考える。
俺は引きこもりやってたけど、あんたは海外行っても、日本を知らないらしいな。

「聴いてみるよ」
「いや、いいんじゃね?多分タイプ違うよ」
「あそう…」

でも、いいんじゃねぇかな。

「世間知らず、かぁ」
「え?気にしてんの?」
「いや、なんて言うか…まぁなんでもねぇよ」
「でも知らねぇっつーのもまぁよくね?俺なんかニュースとか世間しか知らなかったよ。
 逆にここ半年くらいはよくわかんねぇけどな。引きこもりだから」

 いつ日本にいないか知らないけど、ホント、飛行機がアメリカのビルに突っ込んで父親がイライラしたりさ。良いじゃん。そんなの知らない子供でも。

「は?そうなの?」
「まぁね」

やんなって、引きこもりやっちゃうんだぜ、こういうのって。

「わからんもんだな」
「そんなもんだよ。
なんかあんた変わってんな」
「あぁそう」

 ピンと来てないらしい。「お前が言うかぁ?」とか。

「うん。俺が言うくらいな」
「あそう。自覚あんのか。タチ悪い」
「うざっ」

なんだか。
どちらともなく笑ってしまった。

「あー、早く終わらんかな」
「あと何時間?」
「一時間くらい」
「ゲロ吐く」
「トイレに行ってきな」
「めんどい」
「厄介」

 暇な時間が長く過ぎ行く。
 取り敢えず無駄話ばかりしてテキトーに過ごして。

 わかったことは。
 案外まともに人と付き合うとクソほど疲れると言うことだった。

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