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「…」
無言。
なにこの微妙な圧力。
雨さんに連れて来られたのは小料理屋の様なところだった。
なんでも、ここは樹実さんと雨さんの行きつけらしい。
「やらかしましたね?」
と、俺は帰って早々、雨さんに告げられた。
しかし、そっから無言。いまや腕組みしてずっと俺を向かい側で見てる。
「あの…」
やべぇ。
圧がすげぇ。まさしく低気圧なんすけど。
「はい?」
しかも。
めっちゃ笑顔が黒いんですけど。言うてタバコめっちゃ吸いまくってるし。
「いや、その…」
これこの後。
樹実さんからもこの圧掛けられんの?もしかして。俺一人とかマジ耐えられなくね?
「えっと、その…」
ふぅ、と雨さんは溜め息を吐いてタバコを消し、今度は頬杖をついて凄く見てきた。
「言えないことですか?」
あれ。
意外と声、優しいかも。
漸くちらっと見上げれば「何されたんですか」と聞いてきた。
「えっ…」
「いや、君のことだから、なんか初日からこう、嫌なことされて言いにくいのかなって」
ん?
まぁ、言いにくいけど。けど。
栗林のあの嫌らしい息遣いやら、汗ばんだ顔やらが浮かぶ。
勘違いさせてるか、俺。
「えっとあのその…苛められたとか、いや、苛められそうにはなったけど、えっと、雨さんが想像してそうななんかエロそうなやつじゃないと言いますか」
「ん?」
え。
「え、なにが?」
えっ。
それじゃないの雨さん。
「え?」
「え?」
「なに、雨さんそれじゃないの?」
「ん?いや、まぁ言われてみればそれもありそうだけど君ってびっくりするくらいガードゆるゆるだから」
「えっ」
そんなぁ。
「え、じゃぁなにを…」
「いや、僕の名前書いた件でも「あいつ、親だとか言ってたぜ」とか言われましたけど、いや、だからこう…。
ほら、僕ってブラックゾーンじゃないですか?だからまぁ嫌味しかりなんて言うか偏見ありまくりだったかなとか」
「は?そんなはっきり言っちゃうの?」
なにその開き直り。
大人の余裕?
「え?違うの?」
「はっ、」
わっ、
「ふっ…ははははは!え、ナニソレ雨さんそんなん気にしてたのまさか!」
「いやまぁ…保護者だしって待って潤、普通そんなに笑いますか」
「いや、だっ…ふ、いや、は、ははは!ヤバいヤバい凄い天然過ぎて俺いま、はっ」
ヤバい喋れない。
雨さんポカンとしてる。
「違う違う、俺入学式バックれ」
「何してんのぉぉ!」
あ、笑いとまっちった。
え、けどやべえ。沸点わかんねぇ。
「へ?」
「へじゃないよね。そりゃクソつまんねぇお経みたいなの延々と誰だかわかんねぇおっさんから聞かされますけどえぇ!?潤ってそんな樹実みたいな不良になっちゃったの!?」
「樹実さんマジか」
「陸軍のとき上官に発砲して「やっちった〜」ノリで辞めた」
「えっ」
似てるけど今日の話と!
なにそのマッチング感。
「あぁぁ〜…僕ってば潤にはあんな変態のように育って欲しくなかったのにぃ〜!」
頭を抱えた。
「いや、あの、雨さん?」
「君をあんな|催涙弾《ティアガスグレネード》トリッキークソテロ野郎に一時預けたから…」
「え待ってあんたら何してんの」
「普通預けないですよね、「3秒後に30mだから〜」って」
「え、うん」
薄々わかってたけど。
この人たち次元が違うんだけど。
「あ、えっと雨さん。大丈夫。俺流石にサボっただけだから。上級生も違うやつがやっつけてくれたよ」
殴ったけどね。
「は、ナニソレ」
「えっとね、うん、入学式バックレたら先輩に絡まれたけど変なうざいやつがやっつけてくれて二人で呼び出しを食らった、です…」
「はっ…」
気が抜けたらしい。
なんでだよそこ。俺サボったけど。
「なぁんだ潤〜!ビックリしたじゃないですか〜!あーよかったぁ」
「はぁ、」
よかったんだ。
まぁそっか。そんだけグレてるんじゃ俺なんて子犬か。
そんなときだった。
暖簾を分け、樹実さんが現れた。
件の壽美田流星を連れて。
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