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家庭内事情に関しては概ねわかったのだが、肝心の「カフカ」が出てこない。
「カフカ」が居なくても最早この家の者達と同じ、「目論見を知らないのであればそれが自然」と、やはり葬ることが出来る。
こちらに対して恐らくユーリイは今、「こじつけ」という認識のままでいるだろう。事情が事情なのだし、単純にクロエが家を出てカフカの軍隊に入ったのかもしれない。
それはこの家族としては「知らない事情」で済むが、一つミハイルが言った、カフカがクロエを「引き取った」で漸く繋がる話だ。
これまでの「開けっ広げ」と「隠された物」を正すのであれば、カフカはやはり「隠された物」に分類される。
わざわざ、事故が起きて1年も経った今更「捜索願い」を出したのも、見事にピースが嵌まる。…ことに、すっきりしない。
ここにはやはり「バザロフ家」と「カフカ」の因果関係が隠されているというのが妥当な線だ。
…しかし、これが限界だ。警察は何かが起こらなければ動けない。
ならば、起こすしか真実は明るみにならないだろうと朔太郎は考えた。
そうなったときに確実にいま切れる尻尾はクロエしかないのだ。
アレクは受付時間の10分後あたりに「警官関係」という名目でしれっと現れた。
朔太郎はユーリイの挨拶までの受付・入場の間は護衛をミハイルに任せ、ジョフと共に受付の手伝いをしたが、正直人員としては余るので、然り気無くふらふらと見張りのようなことをした。
「…いまのところ、シバタさんがピックアップしたここ、“警察関係”という洗い出せなかった一人、と、“防衛関係”のうち一人は入場しましたよ。
確かに、言っていたように結構普通そうな印象でした。金持ちの…なんか、ああいう“品”ていう感じでもなく、本当に普通だったんで却ってピンと来ました」
「まぁ国際的な危ない橋を渡るやつは抜かりないというのが定説だな。
そういうやつは不思議と“同業者”でしかピンと来ないような癖や…雰囲気がある、例えば肩に力が入っているような、そんな印象を受けなかったか?
それはしかし「普通だから普通より格上の場所に来て緊張している」という感覚として見られるくらい、ある意味場に馴染むもんなんだ」
「あぁ…そう言われてみればそんな気もしてきた…。
シバタさん、凄いですね。なんというか…わかりやすい」
「そうか?まぁ国を出るとそうなるかも」
いやいやいや…と言うジョフをよそに、しかしそうなればその者達は恐らく「白いピース」だと思えた。
その者達の目的が今回の事件には必要…。
などと考える。
FBIやCIAの潜入捜査とあれば「厳密な裏付け」が目的な筈だ。これらを読み込み済みなのであれば…本当にそうだったとして、従来通りカフカが首謀だとすればかなり、カフカはイカれた野郎だ。
「ジョフ」
「ん?はい…」
「その他怪しい人物は?」
「んーまぁ正直未知数ですね。みんな怪しく思えてきました」
「うーん」
これは却って、我々には「当たり前の状況」か。
「…身構えず見つめてみると良い。普通のやつの方が怪しいかもしれない」
「…なるほどね」
「自衛隊関連者での代理、あたりで」
それだけ言い残し朔太郎はそろそろか、とホールに向かう。
その他会場内での合図は、大抵は視線のみと打ち合わせがしてある。
ぼちぼち時間が迫ったあたりで、ユーリイは用意したマイクスタンドで挨拶を始めた。
朔太郎はユーリイのすぐ側、克つ、アレクとジョフも捉えることが出来る位置に立ち、「親愛なる皆様へ」と語るユーリイの口上を聞く、その間に例のFBI、CIAに目星をつけた。
…しかし、当のクロエは見当たらない。
まぁいずれにしてもこの場所が非常にキナ臭いことに変わりはない。
口上を聞き終え、所謂「交流」が盛んになる頃合いで漸くレイラとミハイルが現れた。
状況的にはここからが漸くだろうというとき、「こちらいいですか?」と現れたのは「防衛水産の代理秘書、スウェーデン人のグニー・ベリト・スヴェドボムと申します」と名乗る白人女性だった。
「あぁ、どうも。防衛科日本人のシバタと申します」
「ねぇ、よろしければあちらに行きません?」
彼女は、何人かの女性、男性、いずれも恐らくはそれなりの地位があると思われる6人ほどがいるテーブルを促した。
こういうパターンも考えなかった訳じゃないが、場所的には確かに後ろの方、見渡すには良いかもしれないと「はぁ、ありがとうございます」と乗ってみることにした。
行ってみればどうやらマスコミ関係者も同席したテーブルで、「やぁ、グニー」と40代くらいのアジア系の男が頭を下げた。
「彼、日本人みたいですよチャンさん」
「あぁ、やっぱり!
どうも。チャイナテレビのチャンです」
…チャイナテレビなんて、リストになかったような気がするが。
テキトーに相槌を打っているが、最早チャンはお構いなしに「日本と中国の関係について」などということを語ろうとしてくる。
そうはいっても国は出たもの同士なのだが、場は適度に盛り上がって行くのだから焦れったくてイライラもする。
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