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「うんまあそうだろうと思ってた。そちらの反応からすると微妙な線だな」
「……だから。マジにめんどくせぇのよ」
「ハイハイ被告を忘れてる」
発言権を得ようとクロエが手を上げた。
「……つまりは俺の単独犯でOK?確かにFBIとCIAには調子狂ったけど」
「つーことはマジに信じると、クロエちゃんはDOじゃないわけね」
「じゃないね」
あっさりクロエが言う。
やはりこれからの主導権を自動的に握ることになりそうだとクロエは踏んだ。
「それってマジでお前はあそこを吹っ飛ばして墓場にする気だったのか」
ぼんやりと眺めた朔太郎はクロエの横っ面に「けっ、」と言っては2本目のタバコに火をつける。
「気が狂っていやがる」
「興奮しすぎちゃったみたい」
「それだそれ。あんな安っぱちの瓶、誰が作るんだ一体。あの瓶は日本産だぞ多分」
「へぇ、そうなんだ。闇医者くらいいるでしょ普通に。日本にはいないの?」
「一応そうなってる。まさかあんな形で母国と再会するとは思ってなかったよ。
んで、結局顛末はなんなんだ。DOの第8人目にしちゃ確かに随分安いとは思ってた」
「そうだねあんな野蛮じゃない」
お前が言うのかというツッコミを待たずして「まぁ一人でやろうなんて普通思わないよね」と、クロエはしれっとしている。
「…FBIだかCIAだか知らないけど、表向きでは俺一人で片付くという常套手段であんたら話はついてんでしょ?それ、事実だよ。
…さてこのFBIとCIA、本当なら厄介だね。DOの存在が政府にバレ掛けた。ありがとね俺の首飛ぶとこだったよ」
「…君見た目に反して…てのは慣れたけど良い性格してんねー、思ってないくせにぃ…。なんでそんな従順なの?」
「そりゃあのしつけて返してやりたいでしょ、タバコで良いから貰ってい?サク」
朔太郎は一本だけクロエにタバコを寄越す。
「ありがと」と言ったクロエは、薄く笑っているがどこか物憂げに伏せ目な表情でそれを咥えた。
「………経歴から話して良いかな、19歳でカフカに連れられアニシン第2基地に入隊した、は承知だろうけど」
だらしなく手すりに身を預けたクロエは煙と共に「ポンコツだったけどね」と吐く。
「言うならば「研修生並み」だったよ。まぁあんたらが思っているだろう、「アルビノには不可能だ」という理屈じゃない、俺はアルビノじゃないしねこう見えて。ただの色白美少年で引き籠りってだけ。才能とか純粋になし」
「…うんその開き直り方嫌いじゃないよ俺はね、続けてどうぞ」
「あははっ、ありがと。
そもそもDOと言うのであればそう、あの基地全てが特殊部隊だった、から、端からあの爆破は組まれたことだった、テロリスト第一試練だと思って頂戴な」
「それなのにあんたはDOじゃないって?」
「うんだって死んでるはずだから。
あのクソ溜めにはSだのMだのNだのでラリったアッパラパーしかいないしどんなスラムよりも最低だったよ。
ひとつのチームがすっ飛ぶには理由はひとつしかない、内争だよ。アッパラパーしかいないからしゃーないよね。
さてひとつ問題だけど果たしてこんなポンコツをどこの誰が使おうってんだと思う?」
「…カフカとは完全に独立してると言いたいのか」
「…いや、完全にではない。
グレネードには飛距離が重要だよね?見渡せた方がいい。もっと悪態吐くと軍人は全員犬でしかないんだ。これで左派政党をぶっ壊す理由が見えてきたかな」
「…じゃあ付け加えてみる、これに乗じて横槍を投げてきたファッキンクレイジーサイコパス野郎が存在したとして」
「…ただの人形に盛りすぎ。サクは言葉がヘタクソだね」
「…本星はカフカじゃないってこと?それ」
「…あくまで仮説。それならFもCも納得じゃないかな。まぁ何かしらの密偵にしろ本星にしろここでは敵なんだろうけど、あの場にいたのは密偵かなという気がすると、カフカに戻る」
「…表向きは確かに、軍事力を一番手にした政治家に近いからな、カフカは。思ったよりもサイコだな。不穏なほど目は黒いらしいけど」
「…誰がてっぺん食うのが早いかな。この件については一介のポリ公がどうこうする話じゃないね」
企てたバカ野郎はどうやらファッキンとクレイジーとサイコパスのトライアングルに嵌まっている。
…確かに泥沼だ。どうこうできる問題ではない。
そして不発弾と化したDOは最早不和のリンゴよろしく、こちらこちらから見れば争奪戦となっているようだ。
「…お前に人間的なことを聞いて良いか」
「犬でよければ」
「………そういう言い方をするんじゃねぇ。
カフカは何が憎たらしいんだと思う?」
いたく真面目に聞いてきた朔太郎にクロエは少々…言葉を呑んでしまった。
「…破壊神が望むものの先には挑戦と乾きがあるんじゃないかな。あの人はもう、そういう人なんだ」
「…従順なのは…お前には、犬に備わらない道徳かと過大評価するよ。
変な縁だな。公安も公安も公安なはずの組織に俺たちは最早歯向かう、それが正義になりそうだなんてな。確かにアレク、お前は」
「流石に今回は降りないよぅ、サク」
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