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見つけた新たな名簿は保存とコピーをしつつ、それも元にし手元にあるデータと共に新たな資料として打ち込んで行く。
「もしもし、捜1ですか。事経の柴田だけど。お宅らディル・イザードの猟奇殺」
切られた。
再び即掛け直してみる。
「もしもしっ、サーバーに上がってるディル・イザードのデータが|改竄《かいざん》されてるっつってんだけど」
「どんだけ嫌われてんの」と言うクロエを無視し、イライラした朔太郎はパソコンから手を離してタバコに火を着け、また作業をしていた。非常に器用だとクロエは感じる。
「はぁ?改竄は改竄だっつーの。本名がえっと、」
クロエの顔を見れば「ヴィリバルト・ヘル」と返答が来てそのまま「ヴィリバルト・ヘルで、」と続けた。
「アニシン第二の名簿からたまたま、サーバーにあったインチキ名簿に行き着いた。お宅らそれでディルとして調べてんだろ?なんか知らんがサーバーに上がってんのデタラメだぞ。
あ?だから事経だっつーの、元のちゃんとしたデータは持ってんだよ、19人の死傷者の分はね。結果この名簿は役員データをシャッフルして乗ってる。んーまぁ嘘だと思うなら来いよ。確認したらお宅からサイバーへデータ復旧要請してくれ、俺じゃ「復旧要請許可書」が必要で時間が掛かる。
だから、マジだっつうの。そいつパクったのあれだろ?防衛科役員強盗立て籠りの後だろ?それまではデータちゃんとしてたわけ、確認済みなのっ。
なんなら猟奇殺人なんて、今すぐ特犯1に流しても良いぞ?そっちのが事案だろうよ。どーする?……はい、はぁい、はぁい。待ってまーす」
切った。
ふう、と一息を吐いてファイルをペラペラ捲っていれば見つけた、ヴィリバルト・ヘル。確かにディルという黒人に成り代わっていた。
「あったあった。
んー、しかしざっと見このディルってやつの方がNEWデータだな。ディルってなんだっつってたっけ」
「いやそいつはなんも言ってない。んー…、正直あんま人の名前覚えないんだよね」
「あぁ、そう。まぁいい書き直してみながら5人分のNEWデータを取り敢えず割り出す」
「へー、どうやって?」
「こうやって」と、違うデータを別の場所にコピペしファイルを見ながら抜き出したり入れたりをすれば「気が遠くなりそうだね」とクロエは言った。
「まぁまぁデータ管理なんてこんなもんだ。復旧を待ってもいいが、例えば書き込んですぐ保存をせずにシャッフルしたならサーバーに残らんから、NEWデータのちゃんとしたやつは出てこないかもしれないし」
「あー、なるほどね。俺がわかればいいけどぶっちゃけ人の履歴書なんてわかんないよね」
「まぁそうだな。けど顔と名前が一致すればまずはいいわ」
チマチマ、チマチマと朔太郎がそうしてヴィリバルトの経歴書を直しているうちにコンコン、から間も待たずに忙しなくドアが開き「どーもぉ、厄介者シバタぁ!」と、かなり嫌味な口調で、なんと、日本人が現れた。
「よおカツマタ。久しぶり」
「あぁ?」
そしてクロエを見て「なんじゃこりゃシバタぁ!」と、やはり嫌味ったらしかった。
「ナイスチューミー」
「あぁナイスチューミーチュー、タイチ・カツマタ、ジャパニーズ。
おいてめぇなんだっつーんだシバタ、捜1様を呼び出そうとは」
「…はぁ、トーキョーモンは朝から賑やかですなぁ、ご苦労さんどす〜ぅ、なんや忙しいんかい、たまには茶ぁでもシバきますか〜」
「あぁはぁ、雅な事でっ。なんだっつーのこの落ちこぼれが」
…きっと国の言葉だ。あしらわれたクロエは、キッとなっている日本人と欠伸でも出そうな日本人をぼんやり眺めた。
「だからデータ改竄だっつーの、ほれ来て見ろこれぇ」
「つーか…なんだよこのねーちゃんは」
という会話は戻ったので、Nice to meet you「too!」と、強調してユリ・クロエと取り敢えず名乗っておいた。
「…どー考えても」
「そーだっつーの。こいつどー考えてもアフリカ系ではないんだっつーの、ドイツ人なんだって」
「はぁ!?」
ドカドカと側に寄るカツマタに「ほれ」とファイルを渡す。
「お前が見てたのこれだろ、これ」
「…なんじゃこりゃ」
「ついでに全貌を話してくんないか。予想するにこいつの被害者はアニシン第二の無傷で生き延びたなやつなんだろ?だったらこの名簿完成させたいんだけど」
「……どーなってんだこれ」
「少なくとも特犯1が取った事件は、まぁこいつ、クロエ・ユーリエヴィッチ・アヴェリンくんをパクるまでは正常で、それはこの手元のファイルで、だからパクれたわけなの、」
「はぁ?」
クロエのファイルのページ、フォルダーのページ、そして本人を代わる代わる眺めては「インチキ臭ぇよお前がっ!」と、まだカツマタは半信半疑なようだ。
「いや、現にこいつは正真正銘、あのユーリイの息子だから。俺現場にいたし」
「それもまたなんでだよ、」
「なんだぁ?四の五の言ってっと特犯1にぶん投げるぞてめぇ。上げてぇんだろ?捜1で」
「うるせぇよこのネクラ野郎」
「はいはい。で?どーする?こっちのファイル持ってくか?」
「…あたりめぇだろこのカス、」
「んで?このアフリカ系、ディル・イザードとなっているヴィルバルトくんをパクったで間違いねぇな?」
「あ?」
「取り敢えず取り調べに連れてけ。誰殺したっつってんだこいつは。あとどーやって見つかった」
「は、」
「こいつは一応このネクロフィリアと知り合いだぞカツマタ」
またクロエを見つめたカツマタは溜め息を吐き、「まずてめぇが持ってる情報寄越せ」と言った。
「なんでこいつがここにいる。特犯1の事案だったよなあれ。お前がなんでアニシン第二に繋がってんだよ」
「ん。まぁ座れ。
クロエ、取り敢えずこの高慢野郎に茶ぁ入れてやれ、気に入らないけど」
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