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 15人中3人という意外と少ない数、だが確かに木を隠すにはと言うべきか、残り12人は本当に無差別だったのかもしれない、いずれにしてもアニシン第二関連は3人だけだった。
 …NEWデータに二人足りず。ここの余罪を洗うべきなのか。

 朔太郎が資料に見入っていると「うひゃひゃひゃひゃっ!」とラリった笑い声が聞こえ、クロエが一瞬強ばったのに気付いた。

 朔太郎がハマり込んでいるいるうちにどうやら取り調べは開始していたようだ。

 笑い声を制するようにカツマタがガンっと机を叩いたようだが、それでも「っひひひひ…」と、最早あれは廃人だろうと思える。

 …死んでいることにしてしまってもなんら上手くまわりそうだ。

 ふいにそう思った。

「お前はヴィリバルト・ヘルだな?ディル・イザードはお前が殺した野郎の名前だろ?」

 ピタッと、止まった。
 ふとクロエが「サクちゃん、ちょっと死体見して」と言った際、朔太郎は急にピンと来た。

「…もしかしてこれ、ディルじゃないのか?」
「……なんともいえないけど、基本的なことを考えてみればディルは黒人だから、ヴィリバルトと入れ替わってるんじゃないのかってすぐわかったって話でさ…」
「…ディルが生きていたとしたら…。
 お前、ヴィリバルトはどれかと言えばDOじゃないかと言ったよな」
「うん、俺もそれちょっと思った」

 「こいつだけ殺し方が違うな、」と詰め寄るカツマタの声がする。

「DOのメンバーの中にディルはいないの?」
「いまのところ。ちょっと賭けてみるか」
「は?」

 そういうと朔太郎はごく当たり前に取り調べ室に侵入した。

「は?」

 カツマタが驚いてるなか「特殊犯罪1部隊のシバタだ」とこちらもインチキを提示してふと、カツマタに退けと合図した。

「…んだてめ」
「ウチで先日アニシン第二の生き残りとして、お前と同室だったクロエ・ユーリエヴィッチ・アヴェリンを引っ張ったんだが」
「…くろえ?」

 間を置いてヴィリバルトは急ににへらと笑い「クロエが…クロエかぁ!」と再び廃人に成り下がった。

「ああ。着々と自供中だ」
「クロエも居るのか、」
「ああ。ところで聞きたいんだがお前これ、ディルじゃないだろ」
「は!?」
「はぁ?」
「…ディルはアフリカ系だが見てみろ。こいつは違うよな?トロフィーマニアにしては拘りがないな、こいつだけ」

 あった少なすぎる情報を突きつけてみた。

「いや、シバ」

 カツマタに喋るなと制する。
 ヴィリバルトは黙って眺め「なんだと、」と、覚束なく言った。

「見失わないように言うがお前がヴィリバルトだというのはクロエから調書済みだ。ディルはいま過激派組織DOへの加入が疑われ捜索中なんだが」
「……でたらめだ、」
「何故そう言える」
「だっ、」
「で、別件のこいつ。エタン・エミール・リシャール・サマン。フランス人の教官でゲイを大公言していたそうだな」
「…エタン、」

 表情が変わった。
 「あんの、くそやろぉ!」と覚束ないが着火に成功したようだ。

「クロエはどこにいる、クロエはぁ!」
「ちょ、」
「触るなカツマタ。そいつは軍人だ殺されるぞ」

 ガタッと覚束なく立ち上がったヴィリバルトに「うるせえよ」と朔太郎は銃を額に押し当てた。
 怯えたように座りこけたヴィリバルトに「おい、」と詰め寄る。

「てめぇは一体誰を殺ったんだ、思いだせポンコツ。見たところ皆白人ばかりだな、バーカ、エタンは爆発事故の際に死んでるはずだろ?あぁ?誰探してんだてめぇ」
「……は…?」
「ディルに言われたのか」
「違、」
「じゃぁエタンか」
「は、」
「案外まともじゃねぇか。お前が探してるクロエならもういねぇぞ。で、このズタズタは誰なんだ。早く言わねぇとお前も消されるからな」

 ぼんやりし始めたヴィリバルトを解放し「そう言うことだ」と朔太郎はカツマタに言い、用は済んだと言わんばかりに立ち去ろうとするが、

「いやどういうことだよ、」
「はぁ?」

 終了してしまった。

 しれっと出てきた朔太郎に対し「流石に俺でもわかんない」とクロエはぼやく。

「死体が変わったことに変わりはないが行方不明者はNEWデータを含めエタン、ディル、ヴィリバルトと…3人ほど確定したかもな。エタンとディルの疑いの線はアレクに持って行く。だが、あいつビビってただろ、キメすぎて敵味方わかんねぇっつーのはジャン中あるあるだ」
「…なんで俺出したよ」
「便利だろ、お前。お前を探してるのは何もカフカだけじゃねぇかもってことだな」
「……気持ち悪っ」

 去る前に取調室をちらっと見た。
 最早ヴィリバルトの空気は抜けてしまったようだった。

「…俺が悪かったって言うの?」
「さぁ。取り敢えず立ち位置的には…お前は相手方に厄介だと言うことだ。一つお前の身の潔白を明かしてやったんだが?」
「…気分悪い、」

 思い出したくもないことは山ほどある。それは死体の数に比例していた。
 …確かに、身のない死体ほどに自分は都合は良い存在だった。

「…普通に生きるのが難しい」
「今更かよ。まぁ俺にはお前の心中が一番わからない」
「…別に、」
「思ってる通りなら同情くらいはするけど。過大評価として」
「…ホントに性格悪っ」

 だがヴィリバルトを見ていて、自分もああなのかもしれない、でもその方がましだと少し思うのすら、クロエには具合が悪かった。
 ヴィリバルトも本当はただ気の弱く優しい青年だったのだ、元は。どうやって潰し合うのかを外ではどうやら待たれているらしい。

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