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例え、小さなおかしいことが朔太郎の行動にあったとしたって、相手の神経をこんなに逆なでる事ではなかっただろう、これくらい使えないただの人間の医者はいくらでもいるはずで。
さて、Sirとは。
「Sirか、ご執心なようで。ここの院長様はなんだ、軍人なのか?
配属されて2日なんでね。まだいまいち掴めていないんだが、より、わからない。
場所柄武装隊が待機してるのはまぁ、わかる。そのわりには二階に3名ほどだったか?一階はもう少しいそうか、で、君。随分小隊だな。
現状、病院だから自然か、いや、どちらにしても不自然に思える。この病院は一体なんなんだ。軍隊とあれば君たちは国から雇われている救助隊だとして、しかし医務官はそうじゃないようだが?」
「何言ってるんだ?もう少し上手く喋ってくれよ」
「ソーリー。アイムジャパニーズ」
「Huh?」
「タバコが吸いたいだけだよ」
カルシウム足りてないんじゃないか、まぁ自分と話す人間ではないなと朔太郎は構わずに去ろうとするが、「待て、貴様」と拳銃が背後で鳴ったのもわかる。
「ソーリーソーリー」と、両手を上げ階段を降りれば、コラ、だのなんだのとどうやらそのままついてくるよう。
二階でも一階でも、どこかしこから医者たちが患者のケアをしている声が聞こえる。
一階の医務室は蹴破られたままで、武器庫も同様だった。
開け放たれたままの医務室ではオーリンと一人の軍人が話し込んでいた。朔太郎とシグザウェルの使い手を見つけると怪訝そうな顔をする。
「マイク、何している」
オーリンと話していた白人の軍人がそう聞けば「三階にいた」とぶっきらぼう。
「あぁ、シバタ。
Emile,Hän on uusi japanilainen lääkäri.Haluaisin tulkin,」
「…Oh,Ymmärsi.
新人の医者だそうだ、マイク」
何語かすらわからなかったがそういうことだったようだ。
あれこのヤブ、さっき普通にクロエとすら英語だったじゃん。胡散臭い。それとも、なんとなくマイクは米国至上っぽさが漂ってるからか?俺もつい今言語をバカにされたし。
マイクはまだ不服な顔で銃を下げる。
オーリンも不信そうに「タバコじゃないんですか?」と不機嫌そう。
「あそこ吸いにくいんで、院長に直談判しようかと思ってましたら、それどころじゃなかったですね」
「……はぁ、」
「元気になったようで何よりですが、この人、脇腹当ててましたよ」
振り向けば普通にマイクが「何だ?」と睨んでくる。
ミルカも普通に「そうですね」と返してきた。
「いまから引き取りに行こうかと思ってはいますが、彼はどうやら元軍人だったようです」
「はぁ、そうですか」
「テロかもしれませんねぇ」
「テロ?」
「ここは色々な患者が来ますから」
「……じゃぁ、やはりそれも含めて院長には」
「言いませんでしたっけ?不在ですよ」
「確かにいませんでしたね」
「……というか、」
ふと、オーリンが軍人二人に目線をやった。それに二人はわかったとばかりに、捜索へ行くのだろうか、立ち去る素振り。
どうやらマイクも朔太郎に一息、溜め息を吐いたので解放はされたが。
「先程の患者ですが、最早彼は指名手配のような物なんですよ。ピンと来ませんでしたか?」
「はい?」
「テレビとか見ないんですか?」
「いや、」
「あれは院長というか、そうですね…そんなものとされるお方の御養子と言うべきでしょうか」
「意味わかりませんが、どういうことでしょうか」
「先月、まぁ、いまは少し話題は反れてきてメディアもボチボチですが、我が国では政治家邸襲撃事件があったんですよ。そのとき逃げ仰せた人物ですよ」
……ほう。
「そうなんですか」
「院長はその子をね、軍施設で預かってたことがあって」
「つまり?」
「あの子としては家がなくなっちゃいましたからね」
「パッと聞いているだけだと、ではその養子先を頼って来たんじゃないんですか?」
「でも、死んだふりしてましたし。何よりあり得ませんね。
先程言いましたがここに院長はいませんからね。最もあの子がそれを知っていたか」
「俺、ここへは日本政府から派遣されましたが、この国には半年前から住んでるんですよ。そんなニュースありましたっけ」
ミルカはそれに閉口した。
「あまりニュースは見てませんでしたが、犯人割れてたんですか。先月、そういえば左派政治家の家が吹っ飛んだって、そればかりでしたね。あれ、あの子がやったんですか?なら確かに、あんなことを…いや、一人なんですか?」
「……さぁ。少なくとも出回ってるのは一人で。その他ネットでも話題にはなっていますが、なんとなく信憑性は薄い。なんせ、私は彼を知ってますから」
急に濁したな。
「そうですか」
実情を知らなければこの「そうですか」で済むくらいにはゴミのような情報かもしれないが、こちらは報道規制を国単位で掛けている。果たして予想だけで喋っているのか。
いや、違う。
「しかし……いまいちどう繋がるのか疑問ですけど」
「いや…、私もいまいち……」
クロエの内情など、こちらですら調べてしかわからなかったことで、クロエの父親であるユーリイの少し下に就いているカフカですら、クロエのことはこちらに捜索願のようなものを出してきている、これは秘密裏というか、アレクがこじつけたに近いのだと朔太郎は知っている。
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