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 僕らは何処に行こうとしているんだろうかと、胸に滲みるそれに、「痛いの痛いの飛んで行け」。密かな囁きと痛みに、たまに僕は叫びそうになることがある。

 君から逃げるつもりもないけれど。
 照らす光もないけれど、僕はユカと何処に向かうかなんて。わかるはずもない。
 だけど、僕らは光を欲している。息をするために逃げ続ける。

 車が、濡れた地面を走りる音がする。

 僕はどうして。

 光輝くその先へ、「Adieu(さようなら)」と言った羽根が生えた天使ような幼い君のせなかの夢を見る。

 あのとき君は、何て言おうとしたのだろう。君の眼は、その空白に何を観るの?

 僕の眼は、何も見ないかも知れない。

「逃げ出そうよ」

 「行き止まり」だって、誰かの声がする。誰が云ったっけと、最近の夢はこれなんだけど。いつもの、世界の果てで朝を迎える夢で。

 僕はそれすら君に言えないでいる。
 
 世界の果てが綺麗かどうか、真っ白な光なのか。君は微笑んでいるのに、僕は一人で立っている。これは拒絶を表すのか、聖書を表すのか。
 寝てる君の鼓動は暖かい。僕の鼓動と変わらない。
 僕らは愛し合っているはずなのに、僕は夢すら話せない。君を見つめる度に、染みが、どんどん白を汚していくような気がして眠れないんだ。

 またその白い、光輝く世界まで飛んで行こう。僕には何錠か、神父に貰った不眠薬もある。
 汚れてしまった鞄からそれを取り出し口に含んで。

「ユカ、」

 小さな僕の声すら、この毛布のなかに消える。
 眼を閉じて君の呼吸を感じて、僕は君の涙のあたりに生温い、透明な体液で汚して、混ぜてしまっているんだと、一度世界を終わりにした。

「ねぇ、ユカ」

 と話しかけるのは、もう夢か現実かわからなくなってしまって。
 キラキラと輝く髪も、ワンピースも、その光も白く。君はどこか遠くを見て微笑んでいて。

 サイレンが遠くで聞こえる気がする。
 君は、光に何かを言おうとしているけど。
 遠くからみる僕にはその先の景色も、声も、聞こえない。

 僕に与えられた暗闇は夢なのかも知れなくて。

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