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あの白かったワンピースは薄汚れ、その下がうねうね蠢いている。
あの透けるような金色の長い髪は、汗やら埃やらでベタついている。
天を仰ぎ見てステンドグラスから太陽を浴びた君は、神に救いを乞うように、その白い首に透明な涙を流していた。
僕はすぐには動けず、君が叫びそうなのを見て漸く「ユカ、」と一人言のように声を掛けたのだ。
すぐにスカートの下の蠢きは止まり、「Qui es-tu、」と吐き捨てた男と、ユカの空虚な碧眼に釘付けになった。
彼女は相応に歳を重ねていた。
起き上がろうとする男に、彼女は少し喘いだ。
僕の憎しみへ火が点いたのはその時で、僕は迷いなく、護身用に持たされていたジャックナイフを、震える手で持ち、そこへ掛けた。
男にすっ飛ばされたユカは、壁に身を打ち付け踞った。
僕はユカがいた男の上に乗り上げ、まずは男の頬を力一杯に殴り、殴り、手首を取られようものならジャックナイフでそれを切りつけ、切りつけ、いつまでそうしたか。
赤い血が乾いて男が待つ終演を見届けて僕は、踞ったユカを見つめる。
君の吐く息はどうやら白いようだ。
震えて僕を見つめる彼女は泣いている。
僕はだから、「ユカ、」と名前を呼ぶのだ。
かちかちと歯を震わせるユカは、涙を溢して僕を睨み付けている。
僕はだから、「Je suis là pour t'aider.」と彼女に微笑みかける。ユカはその碧いビー玉を丸くして、滴を浮かべ続ける。
「ケイだよ」
名乗れば彼女は喉を鳴らして、息を止めたように僕を見つめて。
僕は立ち上がり男の元からユカに近付く。
怯えてしまって体育座りの膝の中へ隠れようとするが、僕は紳士だ。
頭を撫で、顔を手で上げ、目を見て微笑む。まだ驚愕の彼女の涙を救い取り、その手を舌で舐める。
埃と塩辛さがあった。
君の血液成分から出来たこの涙は。
君の赤い血はまだ乾いていない。
僕の恍惚はそれきりで、「久しぶり」と微笑みかければ彼女は息を呑んだ。
いまここで何を、待ってんの?君は。
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