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展示会の打ち合わせ、二日間は僕にとって非常に有意義で刺激的だった。
期間中の僕には緊張もあり、けれどわくわくもしてまた眠れない日々が続いたりした。
ゆずさんの体調は、相変わらず微妙というやつだった。
それは天気のようにころころと変わるものらしい。たまに調子が良い日は縁側で池を眺めたりしている。
僕は期間中にゆずさんと、筆談で話すことが少しだけ増えた。先生の言う通りで、大変お花には詳しいようだった。
夜は、先生の帰りや疲労があるのだろうし体調の兼ね合いもあるのかもしれない。二週間、夜でも灯りがつくことは少ないし、ついていても寄り添うばかりに見えた。
僕は僕でその期間、昼間のゆずさんの表情をたくさん知った。
先生がいない時間だからこそ優越感やらに浸り、妄想ばかりも広がる一方で。
例えば彼の見えない表情はどんなものか、熱の時のように赤らみ、心配をかけまいとする控えめな表情はそれと一緒なのか。
白く、しかし赤らむ体はどのような体温なのだろうか。
寝る前の妄想か夢なのか、まず朝起きた瞬間に鼻血が出ても、僕は対処を学んでいた。
そうやって二週間僕は彼を汚した、汚されていって、最終日。
彼が起きてこないのだから、具合が悪いのかと、書斎で字を書きながら気を払っていた。
お茶をお持ちしようと思ったときに、たまたま気が付いた、はぁ、はぁ、と小さく荒い息が押し殺されている。
苦しいのだと気付き、僕はすぐに「ゆずさんっ、」と声を掛け、戸を開けてしまったのだ。
ゆずさんは寝ていて、非常に驚いた顔で僕を見ては、はっと息を呑んだようだった。
顔色は少しばかり赤らんでいて潤んだ瞳は僕から反らされ、居心地も悪そうにごそごそ、ノロノロと片手でティッシュに手を伸ばした瞬間に、僅かな生臭さと手を拭った所作を僕は一瞬にして理解し、「あっ、」と短く声が出てしまった。
そうか…。
そうだったよなと、急に気まずい空気が流れ、「す、すみませんっ、」と謝罪し一度扉を閉めた。
「あっ、あの、お茶を…」
いまこの人は…。
先生と、離れていたから…。
頭に血が登り鼻血がすっと出てきて、下半身にも一気に熱が溜まってしまった。
彼になんと言えたかはわからない。だが僕は何かを言い残しすぐにその場から立ち去り、トイレに向かっていた。
…彼も当たり前にそうだ、男性、僕と同じ身体の仕組みで、あの、苦しそうで…熱い呼吸で、きっと苦しくて堪らなくていま待っている、あぁ、もし僕だったら、あの熱い、歯を少し噛んだ表情で恥じらい…、きっといまこの快楽は広がっている。それが欲しくて堪らなくて…とても寂しいそれに襲われるだろう。
色付いた想像をしただけであれを、一人の彼を先生は知らないんだ……。
頭が真っ白になった。
息が苦しくて止めたような錯覚に至る。
…過呼吸を再開したらその空気の濁流に頭が冷えた。僕は最低だ。
ふらふらしそうな足で僕は台所へ向かいやけに手を念入りに洗い、ぼんやりと湯が沸くのを待った。
彼もいま非常に気まずいだろう。極力無にならないとと、それでも震えそうな手でお茶を運ぶと部屋よりまず、ゆずさんは縁側でぼんやりと座っていた。
僕はまだ整理がつかないというのに。
しかし彼は少し伏せ目で手の平を縦にし頭を少し下げて「ごめんなさい」をするのだから、一瞬足が止まりそうだった。
どうしていいかわからなかったが、ゆずさんの手は綺麗だったし手を洗い流したのだろうか、気まずいままに用意した茶を間に起き、隣に座った。
こんな時に、言葉がない静かさが重いと知る。
それは僕だけなのか。ゆずさんは案外何事もないような真顔でふと僕を見て、金魚の餌を見せてきた。
意味もないままそれを渡してくるので、僕はきっとぎこちなく受け取っただろう。
しかし他にやり場もないし、静かな池のほとりにしゃがみ、餌を撒いてみる。
どれほどか池を眺めた。
凪いではいない、やはりドキドキする。
ついに振り向いたらゆずさんは僅に微笑んで、鼻の前で人差し指を立てていた。
………秘密。
「…何かございましたら、…お呼びください、」
結局どうしてもダメで、けどやはり麗しくて…。自分のメンタル維持にもと、僕は自分の部屋に戻ることにした。
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