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 由紀子は然り気無くT字を横にして二列を消した。

 修介は丁度I字が来たあたりで「ホントに思い出したくない…」とげんなりし、ましてやその待っていたI字が一つヅレてしまい焦りは加速したようだ。
 それを春夏が面白がるように「聞きたいか由紀子」と笑い煽り始める。

「うんそれなりに」
「パンツよりヤバいぞこいつ」
「本気でやめろトラウマなんだって」
「…のわりにあれから通いつめたよなぁ、お前」
「あぁ、あれはな、」

 I字は来ないがL字で三列を消した。修介へ三列分の攻撃。

「あれだあれ、心霊スポットでカップル成立理論だよ……うーん…、恐怖のドキドキと勘違いしてみたいな」
「勘違いだったんか」
「いや、ちょっとハル、今ヤバイから待ってくれ」
「あんなにしつこく来たくせにか、毎日、放課後」
「やめろってば恥ずかしいな二重にっ!」

 危機的状況に修介の操作はスピードを強いられ始めたらしい。
 こうなれば楽勝だ。

「そんなに?」
「おうよ、何事かと思ったわ」
「しゅうちゃんって…」
「意外と情熱的な」
「やめろぉぉお!」
「誰に向かって口利いてんだクソメガネ、シバかれてぇのか」

 テンパりすぎて大変なことになっていた。

「何っ回摘まみ出されても諦めず、ウチのに睨まれても諦めず。気付けば実家にまで来てたわ」
「うわぁお!」

 まさかそんな話とも思っていなかった由紀子は、早くもゲームオーバーした修介に「いやったぁ!」と素直に喜ぶ。

「あぁあぁあ…っ!」
「バカだなぁ、お前棒狙いすぎなんだよ。なぁ?」
「そうだね。いつもそうして負けてるしゅうちゃん」
「メガネは死んだし俺とやるか?」
「うん、そっちのが面白い」
「終わったら宿題な宿題。おバカメガネとは違うぞ俺は」

 蹲っている修介を足蹴にし場所を変わった春夏に「それで?」と由紀子が促しゲームが再開する。

「そんだけだけど」
「でも私と会ったときはもう、二人は出会ってたよね?」
「ん?ギリギリまだじゃねーかな。
 俺あのパンツ事件は…本家に連れて帰ったぞテンパって。まだ、だから実家出てな……。
 あれ、でもそっか、由紀子が菓子折持ってきたときアパートで……そうだよな、しゅうが出たんだよな」
「んーもぅいいですぅ…。実家近かったからそうしたんじゃないの?
 あん時確か俺、一徹さんから呼び出しを食らって、で、家まで送ったよ。あの人「俺じゃちょっと…」だなんて、あの顔で言うんだもん」
「あれ?そうだったの?じゃあ、お菓子を持って行ったときはすでに私、しゅうちゃんのこと知ってたの?
 あの時「誰だろうこの人」ってなったんだけど…」
「まぁ由紀子は覚えてないだろうなぁ」
「え、じゃぁ私ハルちゃんの実家に行ったことあるの?」

 噂の?と聞いているうちに下3段がせり上がる。

「あるよ」

 春夏のそれは由紀子にとって、謎に包まれている設定となっているところだ。

 春夏本人は、由紀子が春夏について気付いているかもしれないと薄々思ってはいるのだろうけど、開けっ広げつつも一応、実家についてを口にしない。
 それを知る修介から「知らないことにしとけよ」と言われている。

 春夏は結構、悪い人なのだ。

 更に2段と2段が下から積み上がってしまった。

「…大きいって噂の?」
「そ。大きいって噂の」
「えぇ〜、覚えてないよぉ!」
「気絶してたからな。
 いやあれはビビったわ。そんなにタバコが子供に有害かと思ったもんな、テンパって」
「そゆときハルって、そゆとこあるよな。バカな俺ですらわかるわ、それ違うって。まぁそゆとこ好きだけど」
「あっそ、」

 軽やかに笑う春夏は、会ったときから綺麗だった。未だにたまに感じる。

 しゅうちゃん、その心霊スポットがなんたらの気持ち、確かにわからなくもないよ。

 と思いながらも小癪に由紀子はI字を、積み上がったところも含めた隙間に落とす。
 「バックアップうまいなー、由紀子は〜」と修介が感心した。

「由紀子は良い人いないんか、相変わらず」

 そう言ってダルそうに画面を見る修介の眼鏡にはテトリスが映っている。
 「いないなぁ〜」とのんびりと言った由紀子は更に下の段を詰めているが、春夏は攻撃をすっきり相殺していた。

「二人とも得意だなぁテトリス。なんで端開けずにいけんの」
「ちょいちょい責めんのがいーんだよ。その方が積み上がる時の穴が段続きじゃない」
「そうなの?」
「試しにやってみると、」

 由紀子が、丁度4段空いた場所にI字を入れると確かに、穴が4段続きの列が春夏の画面に返った。

「あ、そういう仕組み?」
「由紀子早ぇなもう溜めたん?」
「これは私の得意分野だからね」
「小せぇ頃は勝てなくて不貞腐れてたのに」
「あれはハルが悪いだろ、やり方教えてやらなかったじゃん」
「あのねぇ、世の中叩き上げが一番良いんだよっ、あぁ、」
 
 一気に攻めた由紀子は春夏に勝利した。

「あー久々だ…。まーいやRPGやってろメガネは。由紀子は宿題」
「はぁい。今日は英語と絵日記持ってきたよ」
「絵日記とか、高校でもやんの?」
「いや、絵には描かないけどなんかそんなやつ。あと、読書感想文はハルちゃんかなって」
「てめぇでやりなさい。なぁ、お前卒業したらどーすんの?」
「んー…」

 そこはまだ、ぼんやりしている。

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