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顔を反らしながらも素直に恐る恐る目を閉じた律に「声が響く気がするでしょ」と、焦らしてくる対抗策を打つ。
「…ん、たしかに…」
「頭の中、暗いのに白くて」
「…待って、」
やっぱり焦らすようにそういった理性を見せるのは、一体なんでだろうと知りたくなる。
そして「戻れなくなるでしょ」と、くだらなくもやはり愛しい朧月な目が開いた。
全く、くだらないなぁ。
きっとこの人はごちゃごちゃ考える…繊細な人なんだろうな。生きにくそう。
「焦らすねぇ…」
「だって、」
「いいんだよ。
今だけでも…ホントはこれからも、どこにも戻りたくねぇんだ、俺」
本音だった。
どこにも行きたくない。
彼は静かに俺をじっと見てくる。
今、何考えてるのかな、だなんてもっと知りたくなって。
ただ震えそうな手で、おっかなびっくり耳元に手をやってくれたのにじわっと心が暖かくなっていく、帰りたくない。
これか、今夜は帰さないってのは。熱さは同時に泣きたくなるらしい。
無茶苦茶、ぐちゃぐちゃになりそうで俺はその耳元を最早舐め尽くした。
普通で長いオーラルセックスが始まって、それがじんわりと胸を締め付ける…暖かくて仕方なかった。
こういうのも…焦がれそうで良い、好きかもと「何が好き?」「どんなことがいい?」と調子に乗って聞きまくったのが項をなしたのか、 律は息が上がった頃に「黙って、」と、漸く唇を食んでくれた。
「…どこが好き?」
「…ん?」
「乳首とか良い?」
喉が鳴って声が漏れる。
「…ん…いや、ちょっ…好きに、していいから」
「するよ?」
「…気にしないで、お願いだから」
脱がせ始めて確かに、物凄く初。そしていじらしい、凄く。
「いいとこくらいあるよね?」
「…わかんなくて、」
滑らかな肌が凄く気持ちいい。俺より少し低く感じる感触が相まって。
「じゃあ探そう?」
「…アキヒコくんの、好きなことで、」
この泣きそうな理性の先を見たくなる。はぁはぁとする息遣いに。
「どうして?」
「…アキヒコくんが、気持ちよければ、良いというか…」
あぁなんだよそれ。
舌で肌に触れると更に絡まる、その感情。
「ホント?俺も同じ。だから教えて、教えるから」
「…あたま、おかしくなりそう…」
俺はもうおかしいけどね。
そうして素直になって行く。
俺乳首はそんなに感じないよ、とか、そこまで正直になれたし、後で聞いたらどうやらその感情は、ネコ専あるあるだったようだ。
でも、身を捧げなくたって全然良いんだよなんて、優しくも激しい熱い情動に絡め取られる。
というか、次にはそれしか求めなくなっていた、ゆったりとする繊月のような。
その頃幸せに包まれていて。
苦しくて、絞め殺されそうな甘い時間。熱くて擦りきれそうな。
殺してやりたい、殺してくれとまで思えて、どれだけ目映くてもまだまだ知りたくなって。
何より、むちゃくちゃエロかった。
始めは大体相性が悪いと聞く、だからしっくり来なかったのかいままではと、ぼんやり考えながら「あのさ」と、その先、その先とついつい深追いして「んあぁっ…」というのを待ってしまうほど。
律が一瞬ぴくっと痙攣したような気がしたが、戸惑っていた。
そんなに相性悪かったのかなと抱き締めれば「あれ……?」と熱が籠っていて。
「…ごめ、あれ?大丈」
「…出てない、」
ん?
何それ。
入れながら二人で一瞬固まった。
「あれ?待って、おかしい……」
何より本人がこんな状態。
「…どゆこと?」
流石に心配になって抜けば「ぁっ、やば、」と声を捻り出す…のだが。
「…もう一回いいかな…」
「え?」
「いや、なんか変で…」
「…もしかしてだけどさ。
それ、やめた方がいい気がする」
「なんで?」
「…あれ、初めて?」
「いや…」
「それ、あ、そっか。女抱かねーもんね…中イキとか言うやつじゃねーかなと…」
「なに…それ?」
「男にもあるって聞いたことあるけど…そんなよかった?」
「え?」
俺はイケてなかったが。
うぅ、やべぇなハマりそう。あと、一歩なんだ、これは。
だけどぐわっと上がってきた熱に、律を背中からぎゅっと抱き締める。これは心が満たされる…半端ねぇ…こんなの初めて…。
「………待って、こんらん…」
「ん、そーだね、俺も…」
「…アキヒコくん、全然だけど…どうしたら」
「いーよ。今なんか長くて疲れた…より…なんか、嬉しくてイキそう、天国に…」
「待って!」
「…次も会いたいんだけど、よろしい?」
「えっ」
「ダメなら良いんだぁ、悲しいけど」
首筋に息を掛ければ「待ってぇっ!」と、うるせぇな好きだっつーに、まだ早ぇからいーけど。
「責任取って、次」
「えっと…まず今、口…、とか」
「ゴム噎せるだろうからいーよ。来週とか」
「…マジで言ってるの?だ、大丈夫?」
振り向いた律にぐちゃぐちゃなキスをして決まった。来週会おう。
わぁやった。けど身体は着いていかない。ついでに素股した。
こんなとき根性がクソ野郎な自分で良かったなと、賢者タイムと高揚の微妙な空気で自分を肯定出来た。
本当にありがとうと伝えたかったから、このまま終わりにしたくなかった。
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