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「…君は少々、心を殺しすぎているとセンパイ的には心配になるわけデス」
「…そんな風に見えるんですね。でも、その通りですよ。流石ですね」
加東は「ハゲます」と言って昇の手を…払うわけではなく、握って側に置いた。
その左手がやはり、…震えていることに気が付く。
「…お姉ちゃんは、先輩みたいな人でしたよ。すぐ、僕のことに気付くんです。特に、何を話さなくても」
「……うーん、そうかぁ」
「でも、だから好きって訳じゃないみたいです。だって、お姉ちゃんの方が逞しかったですから」
少しだけ加東に元気が出たような…いや、影もあるような言い方だが…。
世界には怖いことが、たくさんある。きっと、この後輩は自分よりも見てきているのだろう、そう思えた。
あれ、てゆうか。
「え、GPSって何」
時間差で来た。
なんだそれは。
あれ、てゆーか待て、お姉ちゃんどうたらこうたらも、あれ?
「え?場所とかわかる」
「いや、それはわかるよ?え?何?どういうこと?」
「入れてると相手の場所が表示される」
「えっ、あ、そっちはそーなんだ…」
「浮気防止とかで使ったりとか、あるらしいですね」
あまりに加東が普通に言うので「そうか…」と流されそうになったが、「え、待って何それどゆこと」と…ちゃんと追求しておこうかという気になったが。
「え?」
純粋に首を傾げられてしまったところで、「この辺で良いですかぁ?」と運転手は言ってきた。
「あぁ、はい」と料金を払ったところで、手も繋ぎっぱなしのまま二人でタクシーを降りる。
なんか、連れて来てしまったけど、これでいいのか謎だ…と思いつつ、ぼんやりと自分の部屋まで加東を連れ込んでしまった。
あぁ、なんか飲みもんとか、別にねーかもと思ったが、そうだと昇は思い出す。
忌々しくもあの浮気女が何故だか持ってきたなんたら紅茶があったなと、昇はテキトーにカップを漁り、湯を湧かした。
夏間近。超季節外れだと感じたが仕方ない。
加東は自然とリビングの椅子に座り、「なんか大人の余裕〜」と純粋そうに言った。
「すごーい。僕ん家5万なのに〜」
「あんま見なかったけどそうなの?4階じゃん、思ったより広かっ」
たかなぁ。やべぇなあんま見てなかった。
「4階だからですよ」とよくわからない理論で返されたが、うんまぁ加東だもんなと、少し馴染んできている自分に驚いた。
「あ」
てゆうかこいつ具合悪かったなと、「つーか悪ぃ、コンビニとか行って」と言ったが、「あぁ、大丈夫です」としれっと返されてしまった。
「…貧血、なんで」
「貧血…」
あまり男で聞かないけど、まぁこいつほっせーかんなと、「いや、やっぱなんか」と言ったが、「少しだけ、後で眠らせてください」と言ってきた。
「……寝てないの?」
「あんまり。あの人言ってたと思いますが」
あぁ触れないようにしてたやつ…。
「朝まで犯されちゃったんで、あの手この手で」
うわぁ、だから触れないようにしてたんだっつーの…。
もう天使でもなんでもねーわ…。
はぁ、と溜め息が出そうになり殺した。
…近所の、お兄さんねえ。まぁ確かに、自分と同じ年くらいかなとは思った。つまり、えーっと、10歳近い?
まずは紅茶を出してやった。砂糖と一緒に。
「…お洒落」
「いや、なんもねぇけどこれだけあっ」
「元彼女さん、とか?」
察しがいいな…やっぱ、外回りもありかもなと少し思い「はい、すませんね」と気まずい。
また、「頂きます」と言いつつ「熱いっ」となっている加東の姿にデジャブか、とも思った。
「すませんな…」
「いえ、大丈夫です。確かにどうかと少しだけ思いますが」
「…意外となんか、ハッキリ言うのなぁ」
なんだかゆったりティータイムみたいな雰囲気になったが、いや待て、これ結構異常なんだよなと「うーん、熱い」とやっている加東を見て、自分も状況をまとめる、言うならばデスクワーク的な時間が欲しいなと思い浮かんだ。
「ん、まぁ…お前が寝てるうちにまず飲みもんとか買ってくるわ…テキトーに寝ててい」
「お姉ちゃん、………自殺だったんですよねっ…」
急にまた泣き出すから何事かと思えばとんでもない話題をぶちこみやがる加東に「ふへぁっ、」と変な声が出た。
え、ど、え!?これ、どーしたらいいんだと更にぐるぐるしている中「寝室の、クローゼットで、」と進め始めてしまうのに、ああなるほど…ハンガー?と無駄に行き着いたが一度「まぁ待て!」と昇はストップを掛けた。
…ダメだこれ俺のメンタル渋滞すぎる……。
「…とにかく、無理せず一回落ち着こうぜ?加東」
「……ぅぅうっ、」
無言。
……辛っ。
え、デスクって凄かったんだな、チーム良いわぁ…と変に噛み締める。
けど、ここで去ったらなぁ…と、昇は加東と出会った日を思い出した。
あんな公開処刑、誰も何も言わないのか、まずリーダーいんだろ、とか、思ったものだ。
皆が見捨てていくから、問題の一切が解決されない。
あれからチーム編成を行ったとき、これは加東の力であると昇は思ったのだ。
それを踏み台としてはならないとも、自分の中のエゴに反論し議論だって重ねたわけで。
ふぅ、と一息出た。
多分、少し暖かい息。
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