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姉はいつも、笑顔で優しい人でした。
それに比べて僕はどちらかというと、内向的であったと思います。小さい頃なのであまり覚えてませんけどね。多分、暗いヤツだったと思います。
……いや、僕が暗かったから、姉は「明るくいよう」としていてくれたのかもしれませんし。
まぁ、そうでしょうね。
いや、別に無理しているわけでもないですよ。なんか…慣れですかね?わからないですけども。
…姉とは8歳離れてました。よく、幼稚園に迎えに来てくれて、こうやって…はは、手を繋いで歩いて帰ったんです。
ふふ。
なんか、いつも「楽しかった?」って聞かれるのが定番でした。
僕はいつも「楽しかったよ」と答えるのも定番だったような。
いや、まぁどうだったんだろう。嫌なこともあっただろうし。
あぁ……うん、なんかそんな時に姉は「じゃあ明日、仲直りできるといいね」なんて言って、あぁ、そうだ、それで喧嘩した友達と仲直りしたことも、あったかもしれない。
まぁ、そうですね。仲が良かったことに変わりはなかったです。本当にね。
「お姉ちゃん、がっこーは楽しかったの?」
とか、たまに聞いたこともありました。たまーにあったんですよ、お姉ちゃんがなんとなく、元気がないかもしれないなってこと。
でも、テストがねとか、お友達が男の子とのことで悩んでいたの、とか、僕にはわからないことだらけで、どうしたらいいんだろうなってよく思っていたりもして、僕はよく聞くようになったんです。
「がっこーって、よーちえんとは違うの?」
とか。
「うーん、そうだね、ちょっとだけ違うかもしれないね」
「どんな感じで違うの?」
「お勉強をしに行くところかな。澄音は幼稚園でこの前、ひらがなと、数字やってたでしょ?」
「うん、やった」
「あれをずっとやるの」
「そうなの?」
「そうだよ。他にもあるけどね。お昼寝はないし」
「…ぼく、お昼寝出来ないとき、あるの」
「…どうして?」
「わかんない。先生が来ると目を瞑っておかないといけないけど」
「お昼寝も大切だけどね、眠るのを覚えるんだってさ。澄音は最近楽しい夢、見た?」
「う〜ん…わかんない」
「じゃあ、覚えてたら話してね。お姉ちゃんも教えてあげる」
お姉ちゃんと話すのが、好きだったんです。だから、帰りの時間とかも、全然寂しくなかった。
僕の家、少し大きいマンションだったんですけど、いつも帰りにそう…丁度入ったところ。101なんですけど、そこのお兄さんとよく会ったんです。
101の前には、まぁ、公園と呼ぶにはちょっと小さな……。
そう、あの、作らなきゃいけないやつです。
そんな公園があって、お姉ちゃんともたまに、家に着く前にそこで少し話をしてから帰る、なんてこともあったんですけど。
えーと……いつだったか…曖昧なんですけど、一時期確かに…目の前ですからね、住人がいなかったこと、あって。
ある日、その公園にお姉ちゃんと同じ…学生服を来た男の人が一人で、ぼんやりと…あの、登る遊具ですよ。
………あ、そう!ジャングルジム!あれに座ってたことがあって。
この人も学校に行ってる人なんだ、て思ったので覚えてます。
はい、お察しの通りそれが“ひろのりさん”です。
「こんにちはー」
姉が挨拶をしたんですけど、あっちもなんか、ビックリしたみたいにというか…まぁ、ちょっと驚いて「こんにちは」って返してきました。
僕は、中学生って珍しくて…ぼーっとしてたんで「こんにちはは?」とか姉に言われちゃって、しどろもどろになっちゃったんですけども。
それで…あぁ、101に引っ越してきたのかな?とか、なんとなく彼は特定されました。彼は結構特殊でしたね…101ってわかりやす…
え?
あぁ、普通に毎日どこかしら引っ越しているものなので、あまり気にしないというか……。
……へぇ、これ都会特有なんですか?
あ、はは、まぁそう、村感覚で有名人に、とかではないですね。
そう、前の101の人、見たことはないですがお花がね、綺麗で。一階って狭いけどベランダあるんで、ガーデニング出来るんですよね〜。
でも、ある日からお花、なくなっちゃって。ちょっと寂しくなったねと、話していた矢先だったんですよ。
ん?僕ん家?10階でしたよ?なのでちょっと羨ましかったんですよね。お姉ちゃん、お花好きだったし。
僕も多分、お花の名前、少しは知ってますよ?名前くらいですけどね。
あ、ベランダって実はあまり物置いちゃ行けないんですよ?共有スペースだから。まぁ、1階じゃないと特にね。
ひろのりさんの家は、お花はありませんでした。
最初はやっぱりよそよそしかったけども、何回か挨拶しているうちに、まぁお姉ちゃんと同年代だったからでしょうね、よく話すようになりました。
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