2


 一度、一つだけ禁句を堀り当ててしまったことがあったんです。

 何気なくでした。わかっていなくて。「お姉ちゃんと同じがっこー?」って。

 お姉ちゃんは普通に「違うよ〜」と言ったけれど、ひろのりさんが一瞬、物凄く嫌な顔をしたんですよね。
 お姉ちゃんはそれを見てはいませんでした。

 なんか、不思議でした。ころっと表情が変わる人なんです。まぁ、あまりありませんけど、基本的には人当たりが良い人なんで。

 だから余程、なんか、地雷だったんでしょうけど、当時の彼にとっては。
 後々僕も中学生になってから知りましたが、彼、学区外で、しかも電車とかを使ってわざわざ通ってたんですよね。

 いや、カーストとかもわかりませんね…それくらい遠かったかな。でも流石に中学の評判って、有って無いようなもんじゃないです?そこは都会も地方も変わらないんじゃないかなぁ…。

 でも確か…東京に行きたい高校があって引っ越して来たらしいんですよ。
 でも…中学は別に…市街ってだけだったんだよなぁ。

 そう、中学なんです。高校じゃなくて。
 しかも高校も、結局市内の…まぁ結構頭良いところは出てましたけどね。

 電車で通ってるんだ!て興味を持ったのはありましたね、お姉ちゃんは徒歩とバスだったので。

 まぁ、可能性としては、始めは中高一貫の場所だったのかなぁとか。そうすると、案外高校って、そうでもないところになっちゃうじゃないですか、あれってお金持ちアピールでしょ?親の。

 まぁ、その辺はよくわからないんです。彼の中学の名前すら知りませんからね…。

 ひろのりさんとお友だちになってからは、お姉ちゃんとマンションの前まで帰って来て、公園でひろのりさんと遊んだりしてから帰る、が日課になりました。
 ひろのりさんはいつも、お姉ちゃんに笑顔でこんにちはをして……てのを、覚えてます。お姉ちゃんもその頃は笑顔で僕を預けてましたよ。

 …いえ…それは普通に遊んでいました。

 受験シーズンなんか、に、差し掛かると…夕方は寒くなるし、……ひろのりさんのお家にお邪魔して…。
 えっと、他愛もなく、きっと普通の男の子のように、遊んでました。ゲームもあったし…あ、おもちゃも…ありましたね。

 …………正直どこからおかしかったのか、えっと、わからなくて、普通に、普通に結構……遊んでたんですけど……、ホントにどこからだったんだろう…。

 お話も沢山したんですよ、僕の中では「お兄ちゃんが出来たみたいだ」と思ってたんだけど…。

 あ、いや、えっと…心配は、ご無用です。ちょっと、整理しているだけですから…。

 …はい、無理はしません…ね。先輩、こんな話…聞きたく……。

 ははっ、どっちでもいいか。まぁそうですね。

 …そうだな、もしかすると、受験シーズンですかね、僕が小学校に上がって……。うーんでも、ごちゃごちゃかもしれない……。

 いや、両親は僕が、ずっとひろのりさんにお世話になっていたことは…まぁ、知っていて……

「いつもご迷惑を掛けているから」

と…そうだ、お歳暮みたいなやつ。ゼリーかな。両親から夏くらいに持たされたことがあって。

「わぁ、ありがとう澄音くん」

 彼はそう、笑顔で受け取ってくれたんですが、僕と一個ずつ食べたら、なんだかあとはその場でばさっと、捨てちゃったんです。

 …わかりません。
 僕の中ではなんか、ちょっと信じられなくてというか、びっくりしたというか、…ショックだったというか、そんなこと、初めてで。

 何回かそのあとも両親から言われたし、持たされそうになったんですけど…捨てちゃったとも言えないし、兎に角でも、「あんまりいらないのかもしれない」と伝えてみたりはしました。

 ふとしたときに、両親もそういうのはやめたのですが、お姉ちゃんからちょっとしたときに、「ひろのりさんとなんかあった?」と聞かれたことがありました。

 その時に、…心苦しかったんですが、姉にはそのことを話したんです。
 多分、それです。お姉ちゃんがどう両親に言ったかはわからないですけど、僕がそう、少し話しにくそうだなというのがわかったんだと思います。

 両親の対応も、それを感じさせるものでもなく自然とだったので、なんか、お姉ちゃんが上手く言ったんだろうなとは、思います。
 …例えば、ご家族も少ないし、だとかね。挨拶に行くのも微妙だねえって話なんかも、そう言えばあったんですよ、最初。

 10階と1階で、僕の家はなんて言うんでしょう…左側で、101は右側だったんで、本来会う機会もそんなになかったんですよね。

 左側って、そう、エレベーターの話をしましたが、なんて言うか…うーん方角とか、小さかったんでわからないけど…。

 そう!なんかそんな感じであったんですけど、そうそう、そもそも1階ってエレベーター、使わないし…。
 自然と、遅くならないように早めに帰って来なさいってことにはなりました。

 けど……僕実は、ひろのりさんのご両親って、一回もお会いしたことないんですよ、まぁ、出会ってから…あ、そっか、20年ちょっと、経ってますよね…。

 ですよねぇ…僕も変だと思います。

- 24 -

*前次#


ページ: