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 ……あぁ、間違いなく…これもか、地雷一個あって。
 お友達とは違うの?て聞いちゃったんですよね。いま思うと多分あれです。

 ひろのりさんは何も答えませんでしたが…覚えてます…。

 あっ………ホントだ、震えてる手………。じゃぁ、あんときやっぱり怖かったんだ……。
 もう感覚なくて…正直。あの、多分先輩が思っているより深刻じゃないです、これに関しては。

 いや、悩んだ時期とか…あったのかな。わからない……けど。

「だって、助けを求めたからこうしてんじゃないの」

 ………んぇ……?いや……、えっと……。
 ん………あ、はい、出来る限り…。

 うんでもね、深刻じゃないのは本当というか、僕ももうなんていうか、それなりに楽しんでますよ、だからそれもなんか……。

 …ま、いいです。
 僕が小三で、お姉ちゃんもまた受験の時期でした。
 …なんとなくお姉ちゃんは、そう、ひろのりさん、彼女出来たんだねとか、その辺からですね、一回僕…聞いちゃったことあるんです。

 お姉ちゃんが両親に、なんか、おかしくないかなあの人って言ってるの。
 両親はでも、よく知りませんでしたから、ひろのりさんを。

 お母さんが一回だけ、心配そうに、何かされたの?てお姉ちゃんに聞いてました。
 そうじゃないって…お姉ちゃんはそれから話をやめてしまったので、僕は、聞きに行ったんです。

 なんか、話しにくそうだなって。

 でもお姉ちゃんは、「…澄音、あの人と特に、大丈夫だよね?」って。よくわからなかったんですけど…いま思うと多分、勘なんですよね。

 僕はそれもあって、本当になんか、あまり近寄らなくなったというか、控えめになったんです。

 お姉ちゃんは、
「ご迷惑掛けちゃうから、お夕飯にはお姉ちゃんが迎えに行くからね。ダメよ」
って言ってました。僕はまだわかってなかったんです。

 確かに、たまに遊びに行くと、なんか楽しくて、長居しちゃうこと、あったんですよね。
 まぁ、彼女っぽい人がいるときは離れてるし…でも、それに慣れてきた頃また公園に来て…が、結構定番化してました。

「暫く来てくれないから、寂しかったよ、澄音くん」

 て。

 決定的にあったのが、小三。
 テレビ見たり話したり、いつも通りだったんですけど、家ではそんな話も出てたんで、明るいうちに帰ろうと思ったんです。

 あの日も、そんなサイクルの中の、“久しぶりの日”だったな。

 帰るねって言ったら、ひろのりさんが、なんだか引き留めてきて、流行ってる遊びがあるんだって、学校で。
 じゃあちょっとだけならいいかって、また…ソファに座ったんですけど……。

 景色も…なんか、鮮明に覚えてます…。
 …ニュースか何か、ついていたかな。目の前ではジャングルジムで…小さな、一、二年生くらいの、ヘルメット被っていた子達が遊んでた。
 どんな遊び?て、僕は彼に聞いた。とても楽しそうな顔してましたけど…歪んでたのかもな。それで………。

 冗談か悪ふざけだと思いました。見てって。彼は子供のような顔をしてました。ちょっと、やめなよなんて言って……。

 僕はその時されたこと、当時はわかりませんでした。そんなに悪いこととは思ってなかったけど、それよりも恥ずかしくてしょうがなかった。なんか…止めて欲しかった、それだけは鮮明に覚えてますけど…。

 彼は僕にきちんと言いました、「恥ずかしいでしょ?誰にも言っちゃダメだよ」って。
 それを聞いた瞬間、これ、もしかするといけないことだ、て、わかっちゃったんです。

 お姉ちゃんが迎えにきた時、そう、なんとなく彼がその…手を洗って玄関に出てったとき…なんか凄く覚えてます、僕ずっと必死で手を洗ってました。
 言われなくても誰にも言えなかった。

 別に何がどうっていうわけじゃないのになんか…お姉ちゃんに会いたくなくて。ずっと手を洗って…。
 一緒に手を繋いで帰りましたけど…何をされたかわからないのにとてつもなく、恥ずかしくて顔も上げられなかったんで、お姉ちゃんはすぐに気付いちゃいました。

「……ねぇ澄音、なんかあったの?」

 凄く心配そうなお姉ちゃんに、余計に言えなくなってしまって、ドツボにハマったというか、「ねえやっぱりなんかあったよね!?怒らないから言ってごらん、ねえ大丈夫?」って、エレベーターの中でしゃがんでね、言ってきてくれましたけど。

 なんか、悪いことだったのかもしれない、悪いことをしてしまったんだ、でもなんだかわからないって…恥ずかしいのも交ざって、混乱してしまって。
 お姉ちゃんはいま受験で悩んでるしと、あとで言おうかなと思ったけど、やめました。

 あと、頭によぎるんです、耳元でね、「誰にも言っちゃいけないよ」っていうのが。その度に引っ込めてました。

 ホントを言うと所謂本番ってその後だったんですけどね。
 その時の方がぶっちゃけヤバかったというか単純に痛くて死ぬかと思いました。これ、最悪ですよ?羞恥も罪悪感も身体的痛みもぜーんぶありますから。最初なんて気持ちよくもなんともないですよ。

 …あぁ、すみません、ちょっと、喋りすぎました。そんな顔しないでください。

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