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 なんか、お互い通じるものがあったんです。いま思っても不思議です。

 一日目にはなんの違和感も感じず、寧ろこれから新しい生活だって、前向きだったのに、二日目です。
 その時なんだか僕、物凄く胸騒ぎがしたんです。

 別に思い当たることなんてない筈なんですけど、不思議でした。
 なんか急いで、荷物持って玄関開けたら、お姉ちゃんがいなくて。

「お姉ちゃん…?何?買い物?」

 よくよく考えたら声も普通掛けませんよね。

 姉の寝室を見て、何が違和感だったのか…ベッドでしたかね、よれてて。
 すぐ側にウォークインがあったんで、考える間もなくです。

 一瞬何があったかわからなくて、もうパニックで、でも、なんか、わからないから側に寄って、声を掛けたんですけど、その時は生きてて、ただ、ごめんねって言ったんで、両親か救急車が先かわからないけど、電話して…。

 ハンガーを取ってあげようとしたんだけど、最後、弱々しく払われたんで、怯んじゃったんですけど、ぐぐってなったから、やっぱり外さなきゃって。

 ビックリするくらい重かったし、何より僕は多分テンパっちゃってまごついちゃったんです。

 救急隊員の人に、なんだか凄く話したけど、僕も宥められてるくらいの状態で。

 運んでる途中に心肺停止になっちゃって、処置とかしてたんですけど…救急車、音止まったって。

 病院について即、死亡と判断されました。
 お母さんもお父さんも、状況がわかってなかったし、僕も信じられなかったし、もう、どうしようって、ばっかりで…。

 後で聞いたんですけど、ハンガーだったんで、殺人とかも視野に入ったそうなんです。でも僕の、よくわからない話の中から、やはり自殺となりました。
 いま考えれば僕が何も言わなきゃちゃんとって……。

 …ええ。
 まぁ、犯人ではないです。でも、僕が…余計なことを言わなければ捜査くらいはしてくれたかな。いや、お姉ちゃんは嫌だったかもしれないな。

 あぁ、ごめんねって……言ったやつです。

 お葬式をしながら荷物は実家に戻して…みたいな状況になったんですけど、両親は僕の事を考慮して、新居には近付けさせなかったです。
 実際、僕も行けませんでした。

 火葬までも、顔も見れない状態で。僕、お姉ちゃんのこと送ってあげられなかったんです。
 ……いまでも、フラッシュバックに悩まされます。服屋さんとか入れないんです、特にレディース。

 ……はぁ、…はい。

 スーツ屋さんなら問題ないですね。マネキンだから。大体だから、ネットです。

 暫くしてから、葬儀にひろのりさんが来ました。

 その時は茶髪で眼鏡にしてたし僕は引き籠ってるし、というか両親はそもそもあまり会ったことがなかったんでピンと来なかったんでしょうね。

 清花さんとお付き合いさせて頂いてる、なんて言われて驚いたそうで、一緒に住む予定だった僕に確認を取りに来ました。

 驚いたというか、なんでだろうって、その時が一番の恐怖でした。この人、どうして知っているんだろうって。なんせ、家族葬でしたし、姉との引っ越しも言ってなかったから。

 そこで少し考えなくはなかったんですが、そう、ひろのりさんはちゃんと、101の阿久津博紀ですって両親に自己紹介して、ちゃんとした、人当たりの良い人をやっていました。

 僕はそれどころじゃなくて。なんか、ヤバいかもしれないなって、初めてでした、あの人の嘘臭い表情というのを感じたのは。

 僕、そんなわけで高校とか、初っぱなから行けなくなっちゃってたんです。
 お母さんも、学校になんか、色々話してくれてたみたいだけど、行けてない日もあって。

 そんな僕の姿も、よくなかったんです。

 ひろのりさんが両親に言ったそうなんです、元々、お姉さんと僕が家を出るのも知っていて、交際もしていたし、僕の事をよく面倒見ていたからって。
 自分もお姉ちゃんの引っ越しを期に、少し一緒に居やすいところに越したばかりで、なんか、お姉ちゃんもそれは知ってるからとか、言ったらしくて。

 それで両親は考えてくれたんですよ、実家にもお姉ちゃんの物があって僕は泣き暮らしてる。もしよかったらってひろのりさんが言ってくれてるって。

 そんなわけない、おかしいって、僕はまずひろのりさんにどういうつもりか聞こうと思いました。

 もうわかってましたし、彼がなんだかおかしいというのは。
 てゆうか、なんで知ってるのかとか、確かめないといられないじゃないですか。

 あと、やっぱり引っ掛かってたんです、ハンガー。
 その場にあったものとしては、確かにそうですけど、確実性もない気がして。

 というか、偶発的に、だからその…計画的に自殺した訳じゃないというのも思ってたんです。ああいうのって、準備するでしょ、多分。僕だったらしますね。

 何より、お姉ちゃんにそんな素振りはなかった。
 何か負担になっていただろうかってゆうのも勿論考えましたが、ひろのりさんが来たことに、恐怖を感じた。

 いや、結局は確かに自殺だったんです。…そう、お姉ちゃん、痛かっただろうなとか、苦しかっただろうなとか…そんなところからも僕のリスカは始まってます。

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