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「君が死んだら俺も死ぬことにします」
「え?え?謎なん」
「好きだから。
 ……以上っ!」

 はぇ?となってしまっている加東を見れずにまた歩き出す。

 「先輩、ちょっと待ってよ……!」と切羽詰まって言う加東に振り向くと、加東は立ち止まり…少し俯いて、顔を隠すように涙を拭い始めた。

「……意味、わかんないけどっ、」
「え、なんで?」
「わかんないっ!」
「え」
「ぅうっ、ふっ、」

 めちゃくちゃ泣いてる加東に凄くいたたまれなくなる。あぁダメ俺これ泣きそうになるわと、再び抱き締めて「よし…よし、」と髪を撫でる。

「…なんで、」
「んなもん、わかったら苦労しねぇよ…」
「…でも、」
「お前俺が殺されんじゃないかって走って来たんだろ?あんな状態で自分のことはどう思ってたんだ、」
「だってぇ…」
「それと一緒だわ、全く、可愛いやつだなお前は全く、」

 ぎゅーっとなる。
 震えてるのまではっきりわかるし、熱いのもわかる。
 だからこそ、泣かないで欲しくて、昇は「おい」とぶっきらぼうに呼び掛ける。

 「…はい?」と加東が上を向いた瞬間に軽めのキスをお見舞いした。
 ぽけーっとなってしまった加東の間抜け面に「っははははは!」とついつい笑ってしまった。

「…え?え?」
「泣くなのおまじないです。信用してないなその顔」
「………着いて行けてません…」
「だよなぁ…うーんどこ行こっか。近くだと上野」
「ホテルの話ししてません?」
「バレたか、バレたね。早いし休憩でもと…」
「…マジで?このノリで!?」
「おう、マジだ。どうする嫌ならバッサリがっつり振ってく」
「いや行く!!」
「…宜しい。ドキドキしながら歩きましょうね」

 …上野より多分近くにあるよな…皇居回りなんて…とぼんやり思う。

 結局残念ながらレンタルルームしかなかった。少し遊ばせてやりたかったけどなと思いつつ、いや、遊べるほどなのかもわからんなと過りつつ。
 しかし予想していたよりもお洒落で風呂場まであって…と感心した玄関での矢先、真っ先にささっと加東が風呂に消えてしまって唖然としそうになった。

 なんだよお前はネズミかなんかかと、少し自棄になり開けてやったが。

「うわぁっ!」

 と、加東は本気で驚いたように振り向き……尻を洗っているのに「わ、すません」と去ろうとすれば「バカなの!?」と湯を掛けられてしまった。

 …これは俺が悪いね、と、加東が出てくるまで、昇は濡れて冷たいまま待った。

 少しして出てきた加東はバスローブを羽織り、昇の隣に座ると「どうぞ空きましたんでっ!」と…めちゃくちゃ態度も冷たかった。

 これ、ダメかもしれないなと思いつつ済ませるうちに、ドライヤーの音とかも聞こえ始める…。

 例のちんこ問題は阿久津が起こした交通事故でなんとかなったか…と想像してみる。あの夢の感じ…俺多分大丈夫と、しかし前例もないし不安があった。

 気まずさもあり、シャワーの後は自分もまずは髪を乾かして…と無駄に先伸ばしにしたが加東はそれでも待っていてくれて、「お水をどうぞ」と渡してきてくれた。

 …鼻血は出ないけどさぁ…とふとベッドを見れば例のローションがほん投げられていた。
 よかった、萎えさせたわけではないなと枕元を見れば、カッターも側に出ていて。

「…すみませんね、あの、」

 まぁ…。

「別に良いよ」

 そして見つめ合い、手を伸ばして左耳に髪を掛けてやった。一瞬ビクッとする。
 ちょっと面白いなと押し倒せば、加東は少し濡れた目で「…先輩、」と声を落とした。

「…ホントに?」

 まるで、泣きそうな声だけど。

「ホントホント」
「…嘘じゃない?」
「あの威勢はどこ行っちゃったんだよ。嘘じゃないってば、」

 じゃあさ、と、唇を少し食み、舌を入れてみた。
 口の中で加東の舌がビクッとし、引っ込んでいくのに、深追いして舌を舐める。
 …凄く熱いくせに…何を今更と、「も少し出してよ」と要求した。

 恥ずかしそうに顔を反らし目を伏せ、口を手で抑えた加東に、慣れてなかったりしてと過れば……不思議な気持ちだ、温かくて。
 その左手を絡めとりカッターの側に据え付け、またキスをする。

 少しそうしていると「ふはっ、」と、やはり慣れていなかったらしい。
 首筋を晒したのでそのまま耳輪に甘噛みし舌でなぜ、ピアスに当たった。

 はぁっ…と苦しそうに息を吐いた加東を見て、欲も愛も湧いてくる。可愛いじゃん、こんな表情と、嬉しくもなってきた。

「加東ちゃん、」
「…はぃぃ、」
「澄音って呼んで欲しいの?」
「うぅ…はい、あの」
「ん?」
「耳元、つらい…」
「んー…」

 そんなこと言うんじゃ仕方ないなと、鎖骨を舐め乳首まで下がると「うぅ…っ、」と、あまり温度は下がらなそうだった。

 …つるぺたでもなんだろ、めっちゃ鼓動がわかりやすいんだな…と、地肌を沢山触った。
 固さはあるけど、結構肌触りも悪くない…むしろ筋がフィットして新感覚。

 これが、こいつなのかと確認していく。
 その一つ一つに息を吐く加東は…あの夢以上に色っぽい顔をしている。
 嬉しい、楽しさもある。ゆらゆら涙目の向こうに、一体どんな気持ちなのか。

「…澄音ちゃん」
「う、はい…」
「どんなところが良いわけ?」
「んぅ………」

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