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 まぁそういうヤツだよねと、早速パンツの上から触ってみると熱くて、あ、これめっちゃ馴染みあるわとグリグリしたら「ちょっ…と待って!」と、あろうことか澄音に手を払われてしまった。

「え?」
「…だって、恥ずかし…ない方が…」

 ごちゃごちゃうるさいなと、昇が一気に脱がせると「わー!ダメだって!」と澄音が恥ずかしそうにする。
 にんまりしてしまった、思わず。

「なんでよぅ」
「…だ、だって、」

 出ちゃったからにはねと触ってやると、うわ人のってこんな感じなんだ…とこれも新感覚。

 「う〜!う〜!」と唸る澄音に「大丈夫だよ」と囁いてやった。

「澄音こそいいの?」
「…んぇ?」
「俺…男だし」

 ピタッと、止まるように澄音は昇を見上げている。
 少し懸念だった。これほど…と左手首から手を握る。こんなに傷だらけで、どれ程苦しかったのだろうと。

「やることは大差ないんだよ?澄音」

 澄音の目にどう映ったかはわからないけども。
 少しもじもじとする澄音の手を誘い、「宜しければ俺のもどうぞ」と言ってみた。

 澄音はそれにとても驚いた表情を見せ、「あぁ…ま、マジで?」と弱々しく戸惑っているけど。
 ぱっと肩へ抱きついてきた澄音は「…先輩がいいなら…」としどろもどろだ。

「…も…と、したいかも…しれない…」

 耳元で聞こえた声は少し湿っていた。
 顔を覗けばまた泣きそうで、そうだね…と、昇は澄音にキスをした。

 髪をなぜて、温かい。口の中だって温かくて、抱いている薄い身体も温かい。

 はは、可愛いやつだなとグリグリさせてやると、伏し目で何も言えなくなった澄音の火照った表情。
 そのうち少し眉を潜めて震え、切な気な表情に変わる澄音の様子に、ローションを借りることにした。

 期待と不安がせめぎ合う表情を見せた澄音に何度か「大丈夫?」だの「痛くない?」などと昇は囁いてみたがそもそも自分が不安だった。これ、こいつ死んじゃわない?本当に大丈夫なのかと。

 いざ頭を入れてみたら、そこは物凄く狭くて…こっちが圧死するんではいかと思うくらい苦しかった。
 澄音は声にもならずに少し背を反らし、やはり心配になったが「…当たる…っ!」と言っていた、確かにそこはごりごりしていて新感覚。

 かなりゆっくりと「ホントに大丈夫?」「痛かったら言うんだよ」「無理はしないで」と澄音に声を掛けまくって漸くとなったが、これはヤバイ、動くとかの問題じゃないわ…と。

 ただ、「…せんぱい、」と朧気に耳元で言うのに「澄音、」と返事はしてやって。

 こんなにも…と真っ白になりそうなとき、澄音が髪をちょろちょろと弄ってきた。

 苦しそうながらも少し笑った澄音は「…このまま死んじゃっても良いかも」とまた泣きそうになったので「だめです」と髪を撫でた。

「沢山生きようよ、澄音」

 悲しいほど、どうしようもない、もどかしくて泣きそうだった、だから…温かい。
 ぐちゃぐちゃになりそうな感情。

 温かい、この肌心地。
 にへっと笑う澄音に、じわじわ、胸のあたりが溶かされ混ざっていく気がした。
 悲しいときに似ているこの痺れ。

 切る前に互いにイッてしまったけど、澄音からしてきたキスは甘かった。

 それから再び風呂も済ませ、昇は試しに聞いてみた、「土日行きたいとこない?」と。

「先輩は?どこかあるんですか?」
「…特別はないけど、強いて言うなら食器とか?」
「食器?」
「うん、使うだろ」

 昇が自然に言うと、「ふふ、」と微笑み腕を絡ませて来た澄音は「いいんですか?」と首を傾げる。

「…それって」
「…まぁ、デートとか考えたけど…」
「うん」
「いまなんかハイスピードですっ飛ばしてないかなって。いきなりヤっちゃったし」
「うん?」

 まぁぶっちゃけ、一回寝てから考えても良いんじゃないかという気持ちが決定打になった面もなくはないが…。

「まぁ、家でもいいんだけど」
「付き合うで…良い感じ、ですか?」
「…え、違うの?」
「んーん、」

 慣れないくせに舌を入れてくる。

 …これ、めっちゃハマるかも…と溶けそうなくらい甘いそれに、やっぱり「ふはっ、」とさせてしまうけど、この息苦しさに、澄音がにやっと笑った。

「帰ったら?」
「…きょーはもういいんじゃない?」

 ふふ、とまた笑い「確かに死にそう」と澄音は言う。

「でもしたい」
「…うん、まぁ」
「土日。食器も買う。嬉しくて死にそう」
「…ダメ。せめてもう少しずつでいいから生きようぜ?」
「うん、わかった生きる」

 左耳を甘噛みした。少し澄音がどうしようもなさそうに縮こまる。
 お姉さんすみませんが弟さんを貰い受けましたので、宜しくお願いしますと願を掛けて。

 いつか、このカッターも、なくなれば良い。
 色々な物を紡ぐように、少しずつ拾い集めて。泣かないで、凍えないでと、ゆったり髪を撫でた。

「…あと」
「…はい?」
「どうせなら俺も昇にしませんか澄音さん。まぁ自然体が一番良」
「昇ちゃん…」

 にや〜っと笑って澄音は言った。

「…なんだよう、」

 ちゃん付け…あっさり出てきやがったな、こっちは呼ぶの照れ臭いのに。
 またわしゃわしゃ、ぎゅっと抱き締める。

 ちょっと似合うかわからないけど、流されたので良いとする…。

 これは、もう仕方ないな。いつの間にか完璧にやられているのだから。吊り橋でもなんでも良い、兎に角可愛いじゃん、と顔が綻んだ。

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