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あの時何を話したっけと思い出す間も無く「ほら、よかったな久瀬」と三澤が言ってさらに思い出した、そうだ、そんな感じだった。
「こーちゃんがジロジロ見るからほら、黙っちまったじゃねーかよぅ」
「えぁ!?」
え、そうだったかな。
「違うよ裕翔くん、」と少し笑ったような葵に、やっぱりそうかと…完全に霧が晴れたような。
じゃあ、確か…。
「寝たら治った気がする。お前も大丈夫だった?」
「え、」
あの時は確か…。
「別に何も」
…儚げに俯いていたあの頃の闇に俺は気付いてやれてなかったのかと、人形のように張り付いた表情の葵に、年月を感じる。
もう、子供ではないのか。
当たり前か、そんなものは…。
「何もって…」
煮え切らなさに「はい、」と手を叩き間を取り持つ三澤と目が合う。
「昔もあったな、こんなん」
それを流すように「そだ久瀬、俺ノートしか取ってねぇから意味わかんなかったんだけどさ」と話題を繋げてくれている。
「あ、そうだった…ありがとね二人とも。
裕翔くん…えっと何が分からなかったの…?」
「化学化学!」
「いやお前それは流石に嘘だろ…」
「CO2ってなんの略なの!」
「は?………は!?」
「2はわかるんだ二酸化炭素の2だろ?」
「え、そう来たの裕翔くん。着眼点がなんか違うね…」
「2なら酸化と炭素なんじゃないのか普通」
「違ーうよ、えーご!なんの略!」
「ノート関係なくない…?」と呟く葵に、なんだかふと笑ってしまった。
「そこで英語来るのは予想外だろ…、な、なんだよCO2の略って…っ!」
「大学で出そうだもん」
「確かに…っ」
「確かに、え?どこ行くの裕翔くんは」
「頭良いとこ!医学部!」
「あ、頭良いとこって………っ!」
全っ然関係無さそうだな二酸化炭素。いや、あるかもしれないけど多分学科違う。
あぁ、そうかも。
いつもこんな感じだったかもしれないから。
「…俺も免許行ってくるわ、夏休み」
「あっ、マジ?」
「うん。進路も考えよ」
「車か〜、カッコイイねこうちゃん」
「ドライブ連れてけ、海とか山とか」
「まだ夏休みには取れねーよ。あとお前も取ればよくね?」
「後回しだな。これからは足として生きてくれ長内。山から街のキレーな景色を見下ろして車内で良い感じになれそうなところリサーチよろしく」
取り敢えず三澤を蹴っておいた。
「ふふ、こうちゃんいつ18?」
あっ、そっか。
「誕生日は秋だからその辺からは本免らしい、資料見たら」
「秋生まれだったんだ」
そういえば知らなかった。
HRのチャイムが鳴る前に三澤は席に戻った。
ふと、葵が手元でケータイを弄り「これ」と写真を見せてくる。
ドーム型の綺麗なイルミネーション、城のようなものもありそう。遊園地だろうか?
次に見せてきた写真は、一面の花畑で。
「冬以外は花がね…秋はほら、マリーゴールドがこうやって、綺麗らしいよ」
…一度、そうだ。
洸太の入院中、葵は何かの花を数本、手に持って来ていた…。
時期的にはおそらく、マリーゴールドじゃないけれど、多分。
あの時の色、この色は、果たして何色に見えるのだろう。
公園だからみんな入れるみたいだよ、と少し楽しそうな葵に「ここ、なんて言うところ?」と聞いてみた。
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