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 改めて久瀬を眺めてみた。

 まぁ、背は低いか、自分が見下ろすくらい…といっても自分はバスケのせいで背が伸びたからな…宛にならない。
 久瀬は文化部だし特別肉付きがどう、というわけでもない感じがする…。顔は、やはりあれがそのままちょっとだけ大人になった感じで…。

「どうしたの?」

 見上げてくる久瀬の目にはっとした。

 ここは正直に「いや、小さいなって思って」と言っておけば「よく言われる」と素っ気ない態度…そうか、やはり身長は低めなのか。

「長内くんは大きいよね。何センチ?何部…だった?」
「183かな…バスケ」
「…やっぱり!そんな身体してる」

 そんな身体してる。
 初めて言われたな、男になんて。

「いや…バスケじゃ普通くらいだよ」

 「ふーん」と、別になんでもない平坦な声色と、「あそこ!」と、声色を上げ指した緑の看板。

 久瀬には何色に見えるのだろうか。目立つ黒字は、きっと黒なんだろうけれど。

 ここは楽しい雑貨屋だ。文房具だけでなく、色々置いてある。
 久瀬も楽しそうに、一回りしては関係もなくケータイグッズを見たり、絶対に使わなそうな生活雑貨を見たりして少し二人でブラブラとした。

 肝心な文房具コーナーに来ると、試し書きの落書きのクオリティに「凄い!」とはしゃいだりして。

「凄く上手いけどさ、これ、結構困るらしいんだよね〜。落書き禁止になってるしな〜」

 マーカーペンを見て、久瀬はそう言った。

 そこは、微妙に違う色のマーカーペンが虹色のように並んでいて、久瀬は「うーん」と唸っていた。

 その落書きをよく見ながら久世は「これならD74と…あと…」と、ポケットからメモ書きを出し、「D97と61と10だ」と、洸太にもよくわからない違いのペンを選ぶのについ、「何色なの」と聞いてしまい、はっとした。

 一瞬固まり間があった後に久瀬が、「今、林檎を書いてるんだ」と答えた。

「模写って言うか、そういうので。これが足りなくなっちゃって」
「なるほど?」

 「あと、青いボールペンだっけ」と、マーカーペンから普通のペンのコーナーに移り「これで良い?」と、一番スタンダードなペンを二本取り、一本を渡してきた。

「うん、ありがと…てゆうか」

 ごめん、と言おうとすると、「別に良いよ」と、また言った。

「…家、この辺?」
「え、うん」

 会計を済ませ雑貨屋を出てすぐ、洸太は何故だかそう、自然と聞いていた。

 春先の夕方。少し暗くなるのが早いけれど。考えすぎか、久瀬にはあの夕日はどう見えるのだろうか、なんて考えてしまって。

「送るわ」
「え?」

 間はあったが、すぐに久瀬はまた「…っは、ははは!」と笑ってくれた。

「そうやって女の子の家に行ってるの?」
「いや、そうじゃなくて…」

 …確かにそんな日も、たまにあるけど。
 こんな時間では大体、夕飯時だし上手くいかない。

「変なの。まあ近いし、いいよ。お茶でも飲んでって」
「お、おぅ」

 茶って……。

 まさかそう来るとも思わず変な反応になってしまったが、少し路地に入ってすぐの場所で「ここ」と久瀬は指差した。

 普通に見えるようではあるが敷地はデカい気がする…。

 門は、久瀬が定期入れからカードを一枚取り出しチャイムにすっとスライドさせてやっと開くくらいの高価な物だった。

 多分、停まっている車も…見ない感じ、高いとわかるくらいのやつ。

 扉がカチャッと開き玄関に入ると、白髪がよく似合っているおじさんが、帰りを待っていたかのようにいる。
 そして初めて見た、マジなメイドが3人ほど、飾られたドレスの前に立っていた。

「お帰りマモル」

 ふとその名前が出て、洸太ははっと親子を眺めた。

「ただいまです、お父さん」
「そちらの子は学校の子かい?」

 白髪中年(久瀬(父))にそう振られ、「あ、はい、」と反射的に返す。

「あ、えっとおさな」

 い洸太ですと名乗る前に、久瀬父は「ねー見て見てマモルー!!」と、ドレスに向きじゃじゃ〜ん!と音がしそうな程に手を広げ見せてくる。

 …多分、ブライダル系?いや、でもちょっとロリータ服、という方が近そうな。

 …白いのと薄黄色いのと、青いの。この人、久瀬の色弱を知っているだろうに「今日の新作。どれがいいと思う?ねぇねぇ」と楽しそうに聞いていた。

 もしも本当にあの時のマモルくんだとしたらと、考える。

「真ん中のやつのフリルのとこのリボンが然り気無くて可愛いかも。
 でも青いのの、しゅっとしててもふんわりしたスカートも受けがよさそう」

 そこで久瀬がふっと洸太に振り向き、

「あぁ、お父さん、ファッションブランドの人なんだ。ブライダルから趣味系から色々って…まぁ、噂になってるし、知ってるか」
「…ん、」

と聞いてくるのは良いのだが、なかなか、どう答えたら良いのかとつい、寡黙になってしまう。

 久瀬は楽しそうにそのドレスの側まで寄り、「今回はみんな真ん中分けなんですね」と久瀬父に「このレトロなやつ、中世の…というか文明開化っぽいけど可愛い」等と意見をしている。

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