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うるせぇな…
雨の音が耳の中で残っている。傘を持っていこう。午後には降りだしそうだ。
実家から送られてきたミネラルウォーターを冷蔵庫から取りだし、鞄をひっつかんで家を出る。
ドアを開けたって雨なんて降っていないのに。ずっと、雨の音が耳の奥から聞こえるんだ。
嫌になってイヤホンをしてロックをかけたって。意識はずっとそっちにいってしまう。
何でこんなにうるせえんだよ。
しとしとする音も、俺の呼吸が早まるのも。
どうせ今から死ぬってのに。
ここら辺で一番高いビルを目指して。
“歩きタバコ禁止”の張り紙。もう関係ない。
大通りに出てからタバコを一本出す。ホントはこんなもん、旨いとなんてひとつも思ってないけど。死ぬまでにした遠回りな自虐行為。
煙を嫌がる人が俺を避ける。構わない。
ビルの前に差し掛かった時だった。
道路に、頭から血を流した少女がへばりついていた。そこら辺には血ではなくて真っ白な羽も散らばっている。
あぁ、こいつは天使なのか。
鳥でも上に乗っかってんのかとも思うけど違う。
そいつの空虚な目は確実に俺を捉えていた。
だが、こんなに派手に死んでるのに誰一人目もくれない。もしかすると、俺にしか見えていないのだろうか。
車も天使を踏みつけている。
だがふと、そいつが俺を見て、悲しそうに笑ったような気がした。
しばらくそれに見入って、そいつの目が静かに閉じられたとき、フィルターギリギリまで燃え尽きたタバコを携帯灰皿に捨て、ビルを通過した。
雨の音は、気が付いたら止んでいた。
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