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シャーッという音が止まり、洗濯機の音と、シノが扉を開ける音が混じる。
ふっと身体を眺めても、綺麗なもんだし、バランスもいいけれど。
用意してやったタオルを手渡すと、シノは少し迷惑そうな視線で「何」とぎこちなく身体を拭き始めた。
目を離し業務的に洗濯物を乾燥機に移しながらぽろっと、「綺麗だなと思って」と言ってしまっていた。
「…ん〜…ガクはいいよねぇ嫌味ない感じに締まってて…ドストライク」
「ジムとか行ってみる?」
「やっぱ行ってる?」
「いや、特別って程まではやってない」
「どゆことよ、それ」
「俺も好きだけどなぁ」
特に飾りなく言うのに苦労した。少し、ニヤけそうで。
「女の子の方がモテる?」
……なのに、なんの探りを入れてるんだか…。
「まぁ…。でも、あんまないな」
確かに少し不安にはなるけど、それもいいかなって…。
やっぱり、家着を貸してやった。下着はそのままで申し訳ないが。
「ありがと」
「これすぐ乾くから、その間。パンツはすまん」
「…っ、なにそれ!」
ふふふ…からくつくつと徐々に笑って腹を抑えるシノにニヤけも誘発された。
そんな雰囲気だったけれど、服が乾きタバコを吸ったら、シノはすぐに帰ってしまった。
一人のベッド、少しだけまだ温かい。そして熱い。
身体に悪いかもしれないが、まぁ自分だけならいいかと、楽はクーラーの温度を下げ風呂に入り、一気に来た眠気に負けてしまった。
夢を見た。
大きな噴水のある公園だった。
少し歩いて見えてきた東屋に、男二人が並んで座っているのを発見し、あながち都市伝説じゃないかもしれないと感じた。
その二人を見ないようにはしたが、あちらからの視線は痛い。
ジョギングをする人達も減ってきた頃合い。それなりに整った顔の男が噴水の手摺りに寄り掛かっていた、それがシノだった。
何かを待っている雰囲気でもなく、ただただ池を背に黄昏てタバコを吸っている様が妙に絵になっていて。
案外、さらっとした美形でもこちら側だというのはすぐにわかった。そういうものだと、都市伝説を頼りにするくらいの経験則でもわかる程度には、遊んでいたから。
妙な色気、抱きたくなる方の。実際は接触しなければ、どちらなのかはわからないけれど。
目が合った瞬間、シノは何も言わずにタバコの箱を「吸う?」とでも言うようにふとポケットから出したので、これはいけるんだろうなと確信はしたが、対処がわからず無言で頷き側に寄った。
少し戸惑ったのはシノもそうだったらしく、タバコを咥えモゴモゴしながら「あれ、そーゆー…初めてじゃないよね?」と言いながらタバコをしまおうとしたので、その手を取り「はい…」と答えた。
自分から差し出しながらぐぐぐ、と力を入れ「末…青年では、ないよね!?」と、やっぱりしまおうとする。
意外と慎重派だな、こんなところにいて、と、つい手を離して笑ってしまった。
「はい」
大学の学生証を見せた瞬間「いや、」と相手は一瞬目を離したが、大学名が目に入ったらしい。二度見する形で「マジで!?」と驚いていた。
それからまた目を離し、タバコを一本くれながら「普通身分とか明かさないと思うけど…悩んでんの?」と聞いてきたので、残り僅かなシノのタバコから火を貰い煙を吹き掛け「別に悩んでないですね、今」と返したが。
「…やり口が古いな〜!」
そう言いつつも煙を掛け返し、ちゃんとケータイ灰皿にタバコを捨てたシノは「まぁ、たまには付き合うよ」と言った。
「社会勉強に」
「…じゃ、」
車のキーを見せると、彼は自然と「ん〜…シノ」と名乗ったのだ。
「俺は」
「あーいい、いい、いい。なんて読むの?ラク?ガク?」
「うーん…じゃぁ、ガクです」
「ガクくんね。車、正面?後ろ?」
「正面です」
「奥だよね?」
「ですね」
「ここの門、20時に閉まるから」
楽はシノを車へ招待した。
鍵を開けるとシノは後部座席に寝転び、楽が上に乗ろうとしたのだが、その前に彼は「一応、どっち?」と聞いてきた。
「え?」
そんな楽の反応を予想外そうに眺めたシノは、伸ばした足を抱え体育座りになり「…あれ?初めてな人?じゃないって、さっき…」と、若干脅えた……いや、明らかにノリ気では無い表情に変わった。
「あー…経験はあんま無いけど、あるにはある。未遂くらいのとかも」
「未遂…」
楽は取り敢えず開いた一席分に入り込み、ドアを閉めた。
「すげぇ酔ってて…男連れてホテル入ったらさ…相手も俺も機能不全状態で…その気だから真っ裸で一緒に寝た」
「ふっ、」
シノはそれから徐々に徐々にと遠慮なく笑い、「はー、なるほど…」と誘うような目で楽を見、「俺さ、どっちもいけんだよね」と言った。
「色んな意味で。君、割と経験浅そうだし、お兄さんに任せなさいな」
間もなくシノは前にのめり楽のチャックを開け、カーセックスが始まった。
木に隠れてわかりにくいが、何台か揺れている車もあったと思う。
バックシートを抱きしめゆっくり、ゆっくりと腰を降ろされ、声は抑え気味だった。車だからか満足しなかったのかと危惧したが、それからホテルへ移動しても、積極的に四つん這いになり「入れて?」と態度も変わらず…寧ろ余計にエロくて。
随分いじらしいと感じた。
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