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“夕焼け小焼け”で目が覚めた。少しだけのつもりだったが、確かに長く夢を見た気がする。
勃起している…嫌になるな、痛いし。そして流石に寒い。クーラーのリモコンを見れば、16度になっている。寝ている間に肘か何かで押してしまったのだろうか。
微妙な時間だ。本当に、喫茶店にでも誘えば丁度良かったなと、急いでバイトの準備を始めた。
誘ったところで来るかどうかなんて定かじゃないけど…なんとなく来ないだろう。今頃何してるんだろう、やっぱり遊んでいるのだろうか。
一回目より二回目、そして今日の方がなんとなく気持ち良かったけど、今日はキツかったな…遊んでいないと思いたい、だなんて。
確か二回目は会った瞬間から少し疲れた様子だったし緩かった、すぐにわかった。別の男と遊んで間もないなと。
その時に確か、「イッてるけど出ないの」と言われたのだ。
だけど紅潮した頬と身体…乳首がやけに赤く見えて痛そうだったかも。けれど笑って、「中イキみたいなこと」と教わった。
その日の朝、シノとホテルで別れたあとに即調べた。確かにあるらしいが、それにも開発がいるようだし、正直、「これじゃ女は抱けないだろうな」と思った、もし本当なら。
でも…。今日のを思い返す。うん、確かにそうかもしれない…いやわからない、三回程度では、多分。
まぁ、あの様子では今日は女となんて遊べないだろう、そう、女とは。
試しに今日は家に呼んだのだが、早計過ぎただろうか。結構仲良くなったと勝手に思っていたのだけれど。
まぁ、友人だったとしても三回遊んだ程度じゃまだまだ友人でもない、探りながらの状態だろう…自己紹介すらしていない関係だ。プライベートな話などもしていない…セフレって果たしてこういうものなのか…大体その場で流してきたし、そういえば三回以上なんて、あぁ、切ってきた気がする。
1人、関係を切った女子の気持ちがやっとわかったかもしれない。
三回過ぎたら大学でも堂々と腕を組まれ、「私たち付き合ってますから」面をされたから関係を切ったのだ。
これ、乙女思考?
「セックスの回数で恋人かどーかって決まるもんですかね?」
バイト上がりのスタッフルーム、店では清楚で明るい印象の女子が、スマホを弄りながら「セックス」だなんて単語を普通に言ってきて、一瞬びっくりした。
案外この手の女子…実は男側の印象と中身が違うのかもしれないな…。
「…高塚さんは、どうだった?」
「うーん、なんとなく、気になる男子とは…話してたらいつの間にか好きだなー、とかなんで…高校生までは」
高塚はふいっと上目遣いで自分を見、「永町先輩はモテそうですもんね?」と、返答に困る、いや、そもそも返答を求めているのかもわからない質問を返してきた。
「いや、別に普通に」
「普通な人はなんだかんだ、セフレからってなくないですか?」
…このビックリはなんのビックリなんだろうか…。
「楽しい学園ライフ〜、モテまくって遊びまくって〜て、私は時間や単位とかで案外無いんですが、大学はあるもんなんですか?」
確かに、専学生と大学生では、時間の詰め方は違うかもしれない。
「う〜ん、まぁ人によるけど、サークルとか学科とかに」
「そう、サークルって部活みたいなもんですか?」
「まぁそう」
「いいな〜」
とは言いつつこの子、ここのバイトと割と親しげだったりするけどな…。
「私なんて必死ですよ。終電ヤバいんで先に着替えても良いですか?」
許可をする前に更衣室へ向かうので、「どうぞ」と促し、自分はその場でジーパンに履き変えVネックのヒートテックシャツの上からシャツを羽織り終わったのだが、急いでいると言う割に高塚は出てこない。
…そういえば、高塚とはいつも、三駅くらいか、一緒に帰っている。
楽がリュックを背負ったタイミングで更衣室の中からチャリンと、定期だか鍵だかの音がした。
高塚はケータイを弄りながら出て来て「あ、一緒に帰りましょ?」と誘ってくる。
…いつも誘われるけど、タイミング合わないような、合うようななんだよな…。
ケータイを弄りながらでもたもたしてる。面倒だなもう良いいんじゃないかとイラつく間際で「お待たせ」と、やっと目が合った。
…微妙にタイミングは合わないのに、声掛けキープをされてしまうと、なんとなく待たねばならなくなる。少し苦手な分類の異性。
「ごめんなさーい、待たせちゃって〜」
言葉とは裏腹に当たり前のこと、という態度の彼女は多分、自分の中で気持ちを回している。こういうのは、気にしない方が良い。
店長の「仲良いね〜お疲れ」に挨拶を返す。
ふと、しゃがんだ高塚に手を引かれた。
彼女はいかにも履きにくそうな底の高い靴をぱっと履き、上目遣いでニヤッと笑った。
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