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仮にも盗聴か盗撮をされているしあまり答えられないな…と思えば、海江田はぐるっと見回しふとしゃがみ、玄関の角から何かを拾って見せてくる。
小型のチップ。海江田はそれを指でパキッと破壊した。
探知機を眺める。
どうやらまだ、反応は強い…。
次は靴入れの…中型の無線のような機会が端に置いてあった。
それを眺め…電源を見つけたらしい、オフにしたようだ。探知機の反応が薄くなる。
顔を見合せ、家を出た。
「す、凄いですね…」
「いや、なんとなくなんとなく。
ママ友の誰かならそんなに手の込んだことは出来ないでしょ。てなると単純に目線の先とか、そういうとこ」
「いや、チップはわかるけど靴箱は…」
「出来なくはないんじゃない?席とか立つだろうし。まぁ、かなり大胆だったけど」
「…まだありましたよね…」
「ライト?点いてたもんね。同じ原理かもよ?
この無線なんて…微妙に奥ではあったけどあまりに堂々としてて逆に見落としそうな…チップはテキトーにポケットから落とせそうかなぁ?まぁ、手癖が悪い人がいるみたいだね」
「どうしようかなこれ」と言いつつ、海江田は仕方なしと、無線をジャケットの内ポケットに入れた。
「…すみません…色々と」
「いやぁ、まぁ…大変だなぁと…」
はっきりと目を合わせ「君、猫型ロボットと同じ生活してるのね」と、よくわからないこと言って話題を変えてきた。
「…なんですか、それ」
「え?ポケットからなんでも出すやつ」
……何を言ってるんだろう…。
疑問を隠せないでいたせいか、海江田はついでに取り出したタバコを咥え「あーいや、日本のアニメ」と気まずそうに言う。
「未来からタイムリープしてきたんだけど昔の漫画だからさ、今となってはそれ、現代なんだよね」
ふう、と一息を吐き「押入れに住んでんのよ、そのキャラクター」と目を細めた。
「あ、そうなんですね。すみません、疎くて…」
「…国民的アニメだから知ってるかと思った。すまん、ちょっと忘れて」
「はぁ…」
「それより、疑問そうな顔だから言っとく…とうかちゃん、昨日疲れてたよね」
「え…あ、まぁ…」
「副作用かな?一応受け答えは出来ていたけど…。
ここに連れてくる際に荷物を少し運ん」
「へ!?」
「あー、あー、ごめん。いや簡易的に。
あまりにもぐっすり寝てたから…要するに俺が連れ帰ったんだけども」
「……えっと、」
「確かに不安はあったよな。だけど…まぁ込み入った話を聞くのも…と思ってたが…ええっと、安定剤少し強いの貰ってるよね」
「あ……」
顔を背けるしかない…。
「ジイちゃんには胃薬って伝えてるようだけど…ここだけの話にしておくから」
「……すみません、」
「謝ることじゃないけど、用法用量は守ってる?なんとなくすげぇ飲んだ風には見えなかったから…合わなかったりするのかな?」
「いえ、少し若干、1錠とかくらいは確かに飲んじゃいまして…怖くて震えが来たもので…。
夜、おじいちゃんに頭痛は…確かに伝えました…」
「うん、そっか」
ふう、と吐く煙をぼんやり眺めた海江田は「23にしちゃ、あんまり長期で飲まない方がいいよって、言われてない?」と言われてしまった。
…なるほど、身分証も見られたか。
別に構わないけれど、あんな意味もないもの。
「え、」
「あ、まぁ経緯はごめん、不可抗力だった。ジイちゃんがどうしても先に帰してやってくれとね。とうかちゃんを帰したら迎えに行く手立てになったんだ。そんとき、まぁ、ね?」
「あぁ…」
この家に来る前、胃の手術をしたとなっている。施設にいた最初の頃はこちらの気候に慣れず、よく腹を壊したからだ。
「…すみません、なんだか」
「いや、別にいいよ。大人の仕事だから…。
大人の仕事ついでに言えばその安定剤、少し前に薬機法が変わって、若者には長期処方が難しくなったんだよ。それに応じて弱くはなったけど。とだけ言っとく」
「…詳しいですね、そうだったんだ…」
「表向きはね」
そう言って海江田は口を閉ざした。
…この人も精神とか、病んでるのかな…?
「アンジさんも……?」
「俺?そう見える?」
「タバコももう、連続なんで…」
「あっ、」
灰が落ちそう。無意識にもう一本取り出そうとした指を引っ込め「日本では合法だが、俺のは普通にチェーンというか、ヘビーというか…」とバツが悪そうに言う。
「ま、それも精神の問題だよな、確かに。
率直に気まずいから話題を変えるけど、ジイちゃんは…今家に帰すの…?」
「あ、そうですね…。
すみません、気まずいんですがその様子だと僕、少し健忘がありそうですね…。母はいつ頃帰宅しいつ頃からお茶会してました?」
「来た時はすでに、かなぁ…。
ちなみにとうかちゃんは…30分くらい?は寝てたかも、自宅では。あっちでどうしてたかはわからないけど、お母さんは普通に帰宅したのかもしれない」
「…いつまでやるのかなぁ、お茶会…。昨日の時点で2時間くらいで終わらせてくれとは、頼んでいたんですよね…。
最近おじいちゃん、外出も2時間くらいまでが限界…とまでは言いませんが、疲れていそうで…。
って!」
そうだ。薬。
「おじいちゃん朝薬飲んだかな…っ!」
「あ、元気そう…とまでは言わないけどまぁ、そういうのは多分大丈夫そうだったよ。ジイちゃんなんの薬飲んでんの?」
「軽い痛み止めと…湿布が、」
「あ、湿布はやってやれてないな、とにかく急ぐか…ジイちゃん多分眠れてないよな、あれ」
「…え!」
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