無色透明色彩


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三 ウィキペディア
オオルリアゲハ

オオルリアゲハ(学名:Papilio ulysses LINNAEUS[1]、英:Blue Mountain Butterfly,Blue Mountain Swallowtail)は、チョウ目アゲハチョウ科のチョウである。

 ユリシスバタフライ…ユリシス…。

♢AIによる概要

ユリシス(Ulysses)には、次のような意味があります。オーストラリアのケアンズなどに生息する蝶の名称で、鮮やかな青色の羽を持つ美しい蝶です。日本名は「オオルリアゲハ」と呼ばれ、翅の外側は黒と茶色の模様で、翅を閉じている時は目立たないのが特徴です。その姿を見ると「幸せになれる」「お金持ちになれる」というジンクスが伝えられています。

 ……ギリシャ神話に登場する…。

 ハッと気付いた。
 時刻は4:16。一体何を調べていたのかと、もうひとつ開いていたノートパソコンに目をやり「あっ」と気付く。

 プログラミング言語がだっと並んだシステムのエラー画面。

 はぁ、と溜め息が出て額に手を当てる。
 やってしまった。端末ひとつロスト……強制シャットアウト出来るか…。私用なのは運が良いのか悪いのか…。誤魔化して警察のサイバー化に直して貰うか…現段階じゃ余程の収穫がないとただの違法アクセスになってしまうが…。
 USB…突っ込みっぱなしだし…。

 てゆうか、何やってんだ一体。

 一息吐こうと視界が拓ければ灰皿に気付く。かなり吸った。そして部屋が白い。
 仕方がないと、灰をゴミ袋に捨て羽目殺しの窓を開ける。

 パッケージは既にクシャッとなっていた。これが最後の1本か…と、安慈はタバコに火を点けた。

 …随分嵌り込んでしまったな…。

 部屋に充満した煙が外へ一気に逃げて行く。改めて周りを見れば…これは環境が良くない…。そう気付けば目までしょぼしょぼしてきたような気がす

「ぅひっく、」

あぁ、身体がヤニを拒否している…喉開けて出来るだけ下に吸い込まねば「ひっく、」ああ失敗した、痙攣する…喉が…。

 タール17、ニコチン1.4。坂下が言う通りいい加減減煙した方が「ひっ、」いいかもしれない…。

 タバコなんてなんで吸い始めたのだろうとぼんやりと考える。12年付き合えば今更だ、当初の目的なんて…どうせ大した意味などなかっただろうに。

 ひっく。

 こんなに拒まれても愛してやまないなんて、なんてことだもう常習、いや、中毒すぎて訳も意味もない、無い方がおかしいのだ。

 ……今日は天気が悪いな。
 ハイライトの匂いに混ざる、雨の匂い。この、湿った匂いが割と好きだ。
 現場の乾いたような、鉄の湿ったような、あんな臭いよりも。

 隣はどうやら静かだ。
 そういえばと、安慈はスマホを眺めた。

 あんなものではなんの証拠にもならない。どさくさに紛れてテキトーに盗聴器を仕掛けたが…ジャマーか何かを仕掛けているのかもしれない。

 その時点で既に訳ありだ。普通の人間は…ましてやあんなにガバガバセキュリティの家になんて仕込まないだろう。
 余程隠したい秘密…そりゃ、母親がそこそこなインフルエンサーだったとしても、そんなことに気を使うならSNSに挙げられている写真のアングルは考えにくい。画像検索を掛けられれば簡単に住所は割れてしまう。
 つまりはそこに重きを置いているわけじゃない。

 ひっく。

 …幸せの青い蝶ねぇ…。
 青木アオキ透花トウカの顔が浮かぶ。

 青木透花の“引渡し”に何らかの条件があったのかもしれないが、結果潰されてしまったのなら透花の養父…SNSに幸せそうな写真が1枚だけ上がっていた。眼鏡で優しそうな人だったけど。
 養父、忠恭は何も知らず透花のことを慈愛精神で引き取ったのか押し付けられたのかは、本人死亡とくれば立証が不可能だ。

 そこまでしか、調べられる材料がない。

 裏で見つけたキワモノ映像。徐々に徐々に過酷化していたが、あれだけのことを幼少期にされたのなら、透花自身が覚えていない可能性がある、色々な作用で。だとすれば彼の、どうにも感情が欠如したような淡々とした対応にも納得がいく……。

 あー、ダメだな今日は。情報整理が出来ていない。寝てないせいかハイなのかローなのか…朝イチに規制線解除とか…チェックアウトは確か、9時。つまり8時くらいには隣のふたりをあの家に帰さねばなるまい。

 灰が落ち、あぁ、買いに出ないとな…とぼんやりケータイを見ると、坂下からメールが来ていた。

齋藤は恐らく飛んだ。
 
 やはりか。

 …前回の団地崩壊は恐らく1ヶ月程度でやられた。
 タバコ12年と考えれば、なかなかなスピードだ。

 薬物被害者が常用していた30錠入りのプラスチックのパッケージには青い蝶のマークがあった。

 謳い文句は“更年期障害の薬”。
 含有成分に中毒性があるものが含まれていたが、表記通りの量、配合ならば法には引っ掛からない。しかし中身に差異があった。
 
 健康食品の成分表記の規制が厳しくなったのは確かに最近で、現在、法解釈が曖昧になってしまっている。
 結果としてあの団地は崩壊してしまった。何世帯何人が精神病棟にぶち込まれたかわからない。

 それを嘲笑うかのように、押収された数少ない物でも、使用者により含有量も含有物も違った。
 急速な過剰摂取によるアナフィラキシーショック等で死人が出なかったのは、恐らくその巧妙さだ。
 現に末期の中毒患者は半分ほどいたが、その患者から押収した健康食品は中毒性のある成分量が極端に少なかった。
 あれではリピートするハメになる。ヤクザ商売の典型例だ。

 …青木透花の脇腹にあったタトゥー。あのパッケージの蝶より綺麗なものだったな…。

 取り敢えずと、安慈はコンビニに行くことにした。

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