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仕方がないなと唯三郎の病室を覗けば、確かに平良と…江崎のツレがいた。
安慈と目が合った平良は声を出さないがまるで「うげぇ…」とでも言いたそうな顔、例のツレはコクっと頭を下げ、ふっと平良に耳打ちし立ち上がる。
去り際にツレが「起きて知らない人がいると怖いかなっていう…やつです」と、説明なんだろう、一言添え、手を振って病院を出て行く。
すっと病室の扉を閉めた平良につい「…どういったことで…?」と、自分でも「よくわからん日本語だな」と思いつつ小言を呈した。
「…寄り道ですか?」
「…アレとアレにあんたが来るまで頼まれたんですよ。あんたこそまた寄り道してたんですか」
差し入れを見て言われた。
…なんなんだここの関係性…謎すぎる…。
「あー、まぁはい。気にしないでください。
“アレ”にはまぁ…よろしく言っといてください。平良さんにもご迷惑をお掛けしまし」
「坂下はあっちで事情を洗いざらい話し中。あんたの変わりに」
「…え、」
「言ってなかったんだろ?」
…確かに?言ってしまったからには、なのだ。そして自覚もある。自分一人では出来ないから手を伸ばしたわりに無謀だったと。
徐々に…「…先輩達には、1本も2本も」腹が立ってくる「取られっぱなしなようでっ。お手数かけましたね」とつい袋の取っ手を握る。
ふいっと腕を組んだ平良は溜め息を吐き「そうも言ってられないだろ」と、正論を冷徹にぶつけられるのに…抑える。
「ところでここ、タバコどこで吸えます?」
「…車内じゃないっすかね、一番近いのは。俺はさっき」
「じゃ、あんたが来たことだし、俺も帰りますよ。
一応一早くと思ってアレからの情報。DNAは柏村と山ノ井で間違いなく、どちらも麻薬の常習者と…まさかヤクザまでやるなんてねぇ?猿以下の小物でした、こっちの線は。こちらはまずはそれで行くしかない。
あんたが早期提供したパソコンも、警視庁には役に立ったらしいが…」
キリッと、メガネが光る。
「こちらはアレに借りが出来ることになった」
「……それは柏村の確保ってことですか…?」
「いや、違う。勿体ぶらずに言えば花村病院に」
「……待った、それって」
「あぁ。まあ……」
「情報があれば、こちらにくるけど…」と、平良が急に口吃った。
「そん時はあんたと坂下にしか流せない。つまり、」
「根本的な解決に至らない、」
「そういうことです」
「…なんで、」
「あちらを使うということはそういう事ですよ。全部が全部褒美だと思う方がどうかしている。
自分の捜査に自信を持つには早すぎますよね、管轄も警察かこちらか決まってないし」
返す言葉が、まだ、ない。
「江崎がどうにか成功すれば上手く纏まるけど。俺とあいつは相性が最悪でしてね、気を抜かな」
「ん…?それもちょっと待った。あの人、」
「ま、精々柏村の雁首抑えるくらいかなと思ってますよ?お陰であの子もじいさんも消息不明にはならないかもしれない」
少し冷めてきたぞ…微妙に話が噛み合ってないような合ってるような…。
「…現段階でそこまでやっちゃって、あんたら大丈夫ってか…柏村の方もまだ、そこまで追い詰めたら何しやがるか」
「それこそギャンブルですよ。だから言ってんだ、あの子の見張り含め、坂下と行動を共にしとけと。
俺はそっちの手柄。あんたには切り札として、詐欺師インフルエンサーが」
「あの人、そのインフルエンサーに一発撃っちゃってたりなんかしちゃったりして…」
「………は?」
予想外だったようで、あからさまに肩の力を抜き「おいおい聞いてないけどっ!」と言った。
…なるほど。やっと繋がった。
これはあれだ、第一発見者の原理か…。
このコンビヤバくないか?てゆうか、そうやって成果に繋がってたわけ?
しかし、確かに…やるなぁ江崎新。てっきり団地ドッキリは平良がなんか口添えしたのかと思ったがあれ、単独だったんかよ、怖っ。
「え?逆にえ?」
「……ちょっとマジでちょっ…あぁっ、全く!じゃまたあとでっ!」
なんつーギャンブルしてんだあの陰険眼鏡。一歩間違えたらそれ、お縄じゃん。
花咲穏健派も江崎には着いていそうだし、そうなれば平良は微妙な位置にいる…。
まぁ、確かにこんなもんか。
しかし気は抜けない。これはつまりディープでグレー。いかにも職業病だな…と、安慈は透花の病室に向かった。
こちらの病室には確かに坂下がいて、透花は眠っているようだ。
蹲るように眉間を揉んでいた坂下はふっと安慈を見、取り敢えず手を挙げ挨拶をしてきた。
「少し前に寝た」
「…そうですか」
「お土産?」
「あっ、すんません、先輩コーヒーとかいります?」
「…忘れる?普通」
「…ははは…」
「まぁ、ちょっと、」
坂下は自然と土産を受け取り「星座早見盤?」と言いながら透花の机に置き、立ち上がって病室を出るように促してくれた。
先を行きながら「自販機な」と、いつも通りで。
「平良に会った?」
「あ、はい」
「あいつマジどうかしてねぇ?お前もお前だけど」
「すみません…」
さっと自販機の前に行きすっと金を入れれば「プレミアム」と指定したかと思えば問答無用で押す、どうやら自販機の中で一番高い飲み物だ…。
2連続で押したらしい、取りにくいじゃん…と引き出しを漁るうちに更にガコンと2連続押しされた。何、何この迷惑行為…。地味だ…地味に怒ってる多分…。
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