無色透明色彩


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「マトリっつーのは国家公務員だ。孫がああなりゃ、なんか手当でもくれるんじゃないかな、あんたらが本当に被害者なら。因みにそうなれば、俺はあんたらに金は貸せないし取れないよ。
 事勿れ主義はここまでだ。孫に会っていいか?肝心の被害者なのに、会った事がないんだ」
「……連れてってくれるか?俺も…会えてない」
「なるほど。わかった。
 俺ら設定は一応…イトコとハトコだ。遠い親戚なら、駆け付けるのが遅くなっても自然だと思ってな。
 ついでに言っとく、あんたらが命綱にしている花村病院は厚労省認可じゃない。孫に言うなよ」
「…はぁ!?
 待て、でもあそこで俺は」
「金を貰ったんかな?その書類のハンコを見ればわかるが…死亡手当金、多分行政からは出ていない。忠恭は今、一般的には裁判保留中となっている。
 だから再審を狙ってるならやめとけ。最悪詐欺で持っていかれるぞ」
「なんで、」
「獄中死はあんたらが独自に掴んだ情報で、世間には出ていない。つまり…あくまでこっちの見解だが、獄中かどうか不明となっていると推測出来る。
 あとは、今更時効だ。これはよくあることで、あんたが知ってるかは置いといて、あんたもあの子も、忠恭が死亡したと行政が認めているんなら、あの子に賠償責務はないはずなんだが?どういうつもりで誰が首絞めてんのか知りたいもんでね。
 お上が来る前に話せるのはここまで。車椅子押していくから早く行こう」
「…待て、それって」

 一睨みする。どう出るかだが、老人は至って純粋に「…忠恭は死んでないのか!?」なんてバカをほざきやがる。

「んなの、殺されたと、こちらなら考えるよ。
 なるほどあんたの間違いはわかった。災難だったな」
「そんな…!」

 …つい、感情的になってしまいそうだが…。

「…あんたが“祖父”であり続けあの子が“孫”でいることの意味が…ちゃんと、見えないものならそれが原因でやられたんだ。だから…意味を潰すことは…例え孫が察していたとして」
「っうぅ、」

 あんたは、どう捉える?今俺が喉元にあてたナイフを。

「…じゃ、行くか」

 どんな悪党でも、強い綱を切るのは難しい。
 …悪党になりきるのも…決めるのは他者だ、難しい。

 車椅子を押す中、「泣くな」と言う新の袖をちょんと摘んだ慧が「やっぱり…」と、何かを言いかける。
 俺は悪い人なんだよと目で語れば、黙ってくれた。

 …だから、中途半端にきっと、手放すから。綺麗に片付けないでくれ。

 唯三郎の孫、今回の対象である透花は看護師と話していた。
 透花が唯三郎を見つけた瞬間の安堵や…泣きそうな表情を見て、今まで話したことは間違いではなかったと少しだけホッとした…ような。

 「よ」と手を上げた唯三郎の気丈な声と…震えた右手にそうか、と、「こんにちは、はじめまして」と言えばさっと…本当に心配だったのだろう、思わずという勢いで車椅子が手から離れていく。

 ならばと…どうしてか、歳のせいかもしれない。ついつい熱くなったりする。あの“天使ちゃん”はやはり随分痩せているし、こうして見れば本当に…普通の子だ。

「…一応、元気そうだな」

 よかった。これならあのイカレ闇医者に頼めば一発だ。

 取り敢えずの業務連絡を終えた頃、部屋を覗いていた慧も「……はじめまして」と、相変わらず人見知りを発揮したが、すぐに仲良くなれたようだ。

 青木透花の様子を伺えばどうやら、話せないが声帯に問題はなさそう…記憶が混濁しているのか…慧も経験がある。

 少し不自然さがあれど空気が明るくなった頃、モグ隣人が現れ困った顔をし、宴会場のようになっていることに苦言を呈してきた。

 丁度良いと外に出し、状況を説明した。特に自分が裏へ回るとしたらあの、イカレ闇医者と柏村の件だ。

 平和に解決出来そうかなと纏まりかけた頃…やはり、自分がヤクザで少々強い口調で事前に脅したせいかもしれない…。

 急に唯三郎が情緒不安定に「死後離縁を申し立ては出来ないんだろうか…」と、アホみたいなことを言い出し空気が変わった。
 モグ隣人も深刻そうに「…出来るけど、どしたの…」だなんて乗りやがる。

 あぁ、そう考えたのか。
 だから悪いんだよ。

「…遺書を書いて、」

 どうして気付かない、このカモジジイは。それではより酷くなる…あぁ、だからか。

 エゴは相手を殺す武器だ。それも使ってこちらは稼ぐわけだが。

「おいクソジジイ。んなんだからこんな詐欺師野郎に騙されんだよ」

 つい、余計なことを言ってしまうエゴ。
 偽善なんてなんの役にも立たない幻覚、反吐が出る。

「ナマ言ってんなら左の腎臓売ってこい?な?ジイさん。
 てめぇもてめぇで絆されちまったんか?ん?同じ詐欺師でもなぁ、お上に騙されんのとこっちに騙されんのじゃ重みや痛みが違ぇんだよ、お前にはわからないだろ?そんで落ちてくるやつ何人見てきたと思ってんだシャバ僧が。
 だから……あのガキが傷モンになってんだよ、」

 底辺に底があれば救いようがあるものを。泥濘では足を引っ張られ沈む以外にないんだよ。

「んな、手放してはい終わり、なんて自己満よりか。老い先短かろうが役に立つ方法なんてな、いくらでも」
「少し泥に染っちまったからって悟った気になってしゃしゃってんじゃねぇよ」

 ハッとした。
 モグ隣人…なるほど、良い目だ。こちらを睨みはするが、筋立った理性を感じる。

 少しすっとし思わず「ははっ、」と笑ってしまった。
 お前もマジで向いてねぇよ…そんなんじゃ潰れちまうっての。
 だけど多分、だから立っていられるんだろう。

「……向いてねぇよ、お前も」
「あんたもね」

 なるほど。
 ならば丁度良い、こいつの援護射撃をしてやるのが多分、今回自分に課せられた仕事だ。

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