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ガヤガヤしている。多分、居酒屋だ。
本当に「あ、セイさん」と、待ち合わせだろう、少し遠くから聞こえてきたので「てめぇらっ!」と吠える。
「おい変われてめぇ本気で殺されてーのか陰険ゲス野郎」
ガシャガシャ『新さーん?』普通テンションで変わる慧に「慧!てめ、おいお前な、」と話す間もなくガシャガシャ『はい、変わりましたよ』と、まるで一休さんだ。
『はい、お願いひとつ聞いてくれますかね?とは言っても今回は同僚の頼み事なんですが』
「……はぁ?人質とか何?ナメてる?」
『あ、六本木の46歳成金変態おっさんと…いまURL送ったんでその辺のヤツ知りません?』
「お前人の話聞けねぇのか?」
『で、ライブは終了したんで送ったリンクの履歴の』
「意味わからんしわかりたくもないから知りませんよ腐れ外道め」
『いーからいーから。年額も突破してあるんで』
「会話出来てねーよ国語通じる?」
向こうで『あっ!この子かわ…超かわいーけど何これ合法?』という慧の声が聞こえる。
強行突破かよ、俺は何をガサ入れされてんだバカ野郎め。
仕方なく、捨てアドから届いたメールを開く。
こいつの番犬の名は伊達じゃない、というのは知っている。
「…2個あるけど優先順位は?」
『取り敢えず』
「上だな」
アドレスを見ればなんとなくピンとくる。こちらも似たような商売はしているから。
…古いと言っても…裏にまで流れているやつじゃないのか。
言われた通りに開くと急にバンっ、と、肌色多めの動画。
「なんの嫌がら…」画面の左上に「LIVE」とあり、開く前の一言を理解した。
「…リアタイ配信かなんかか?」
『まさしく。アーカイブは残されてないんで、ついさっきのを抑えた録画ですが』
あー、なるほどね…。
金…茶髪碧眼…外国人か。青年か曖昧な…体型は成人しているかいないか。胸はないが、まさしくお人形というか天使のような子…アカウント名“天使ちゃん”。
ハゲデブおっさんが天使ちゃんのガウンに手を突っ込んでぬめった息遣い…が、荒すぎるな。
「……お前こんな趣味だったっけか?確かに可愛らしー子だなぁ!何見せられてんだ俺は」
『…いや、流石にない…』
マイノリティコンテンツ故に年額や投げ銭設定は高いのかもしれない…その上アーカイブを残さなければ視聴者を集中的に集め即搾り取れる。どうせ短期商売だろうし…上手いな。
「このおっさんがその成金?これなんかヤってるよな。
…え、これ本勃ちだよね、なのに何この大人の玩具みてーな埋込み」
『シリコンでしょ?』
「いや本題ズレるから変なとこに着眼点を置くな、眼鏡してる?」
『今帰りだからコンタクト』
「…今のは俺が悪かったわ。
いや、ん?なんで俺が謝ってんだ、この成金がどこのカモ…てかバカか知りたい…わけじゃねぇよな…」
稼ぎ方は倫理、道徳、哲学、TPOがまるっと欠如しているが儲かりそうだ。
パタッとパソコンを閉じ「多摩、ここわかる?」と解析を頼む。
「…六本木でしたっけ、丁度間取りも見えますし画像検索を…」
『あ、見終わったなら』
「はいはい2番目な。
……うわぁ、開いた瞬間にバカでもわかるな、露骨な詐欺ステマじゃん」
ホス狂いによくいるような、なんともパッとしない女の“楽して痩せる謎の物”の無料キャンペーン広告。
これもトンズラするには楽な、流行り商売だ。
「…これなんのどこ産?」
『その人ん家の住所送りますね。この人と“天使ちゃん”の素性はわかってるんで追加で送…』
「ここ、四ツ谷付近のタワマンですね、恐らく。
……あー…会長、この物件ですが地主の名前に見覚えがあります。
花咲の分派の…新派閥の組長候補、柏村隆太郎という…」
「誰」
『えっ』
「………誰だっけ?
え?誰?マジで」
『あぁあ、なるほど……。
その運転手が言ってるのは…俺たちの始まりの事件…お宅にアテ付けたヤツですね…』
「…あのキメセクアッパラパー野郎、そんな名前だったんか」
『あー、先輩の資料、部署行けばあるかなぁ……』
「…なんか知ってやがんな?お前」
『いや目を通したくらいで。
『八海山になります〜』あ、はいありがとうございます』
「…酔っ払って掛けてきてんじゃねぇよクズ」
向こう側で「カシスソーダでーす」と聞こえ、2人で「カンパーイ」をしたらしい。
「………100万くらいな?」
『同僚の依頼なんで。ピンと来たからあんたに今頼んだだけで』
「そいつ、お前くらいの出世は…いや、お前が払うのが義理」
画面を伏せていたパソコンの音声がなんとなく変だなと再び開けば、天使ちゃんは咳き込んだりなんだり…AVなら失格なくらい嫌がっている…のか、体調が悪いのか…。
「…これ、マジの素人モン?需要あんの?…閲覧と登録者はわりといるが…誰も通報しねぇもんなのねぇ。
組対のサイバー課と連携してるよな?」
『あ、見てなかった』
「……最底辺地を行くよなぁ、お前。俺お前の趣味に興味ないんだが」
『この成金…』
「あぁ。お宅か、無理なら組対本部じゃね?」
『…ウチに近いですよね、やっぱり。
このアカウントの過去ログも送っとく。それで判断して欲しい』
「…ウイルスバスター代含め1000万」
『恐喝だ、ちょっと同僚にも連絡する。
あんたを頼る理由、わかりましたよね?』
「はいはい、まず頭金で50。くだらなかったらマジで1000万、内容証明郵便で領収書送るから、職場にお前宛てで。腹立つからこっちも言い切り了承スタンスでやるかんなバーカ!」
切った。
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