無色透明色彩


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 「仕方ねぇな」と、過去ログを少しと、名前が出た順で調べていく。

 ファイルを漁り始めたあたりで再び平良たいらから連絡があり、「悪い、俺の手帳を持ってさっきの住所に押しかけて欲しい」というクソみたいな依頼が来た。

「……ガサも潜入捜査もお前らの仕事だよな?おい」
『俺もまだ事態がわからないんだよ、』
「死ね」

 再び切る。

「…しかし今更花咲とは…面倒ですね…」

 確かに、それはそう。

「なんだろうな?全く…。
 今日は俺運転すっから、割り出しを頼む」

 と外に出た。
 車に乗りパッと、平良から送られてきた地図と…追加の概要を見る。

柏村隆太郎関連。行けばわかる。

「ヤクザかよこいつはっ!」

 ついケータイをぶん投げそうになったが、その瞬間に当の陰険クソ腹黒ド近眼サイコ野郎から着信があり「あぁ!?」と怒鳴る。

 “待て”が出来ないのかこの番犬野郎は。切って何分だっつーの。

『忘れてた忘れてた、手帳手帳〜』
「はぁ!?
 …つーか何?お前、マジ酔いしてね?」
『ほどよく〜』
「あのさぁ!」

 後ろで「カシスソーダです〜」が聞こえてくる。

『手帳渡したいから慧を…うーんどーやって渡そう?』
「っざけんなよっ!おいソレに手ぇ出したら缶に突っ込むぞてめぇ!」
『…でも』

 平良の声がスンと落ちた。

『あんたもなんか感じたからっしょ?』
「覚えはあるからなぁ、ありすぎるようんうんかなりな!」
『裏で穏健派と和解したのも知ってますけど?八十田やそだ連合が仲介したと』
「はいはいそーですよー」
『余程俺の事嫌いだよな』
「まぁもう二度と命掛けてやりたくねーなって思うくらいにはな。殺したくもないくらい。
 ただ、借りも貸しもある、皮肉なことに」

 ……腐れ縁というには、朽ちているが。

「で?こんなんじゃこっちも車回せねーんだが?」
『…さっきの住所は当の、その花咲のシノギ…というか。
 雑に言えば同僚が今モグってる案件らしい。詳しくは解析中だからピンと来た、としか説明が出来ないが…。
 さっき少し動いちゃったようで。動けば話は早い案件なんだ』
「……ほう?」
『あんた知らないか?その付近の』
「花咲ってとこまで追えてるんじゃ、あとは何もねぇよ。あいつらどうしょもねぇし日本語通じねぇから、お前みたいに」
『…………概要補足。対象の身柄がヤバいかもしれない。当の同僚は一緒に救急車だ』

 助手席でカタカタっとノートパソコンを弄っていた多摩が「あぁ、柏村の塩漬け物件でしょうね、モグリ臭い病院があります。1キロ圏内に」と言う。

 …なるほど?

「ケーサツ呼んどこか?」
『それより先に抑えてるからこうなってるんだ。
 それに、あんたにも結果、悪い話じゃないだろ?ちなみに今、部屋の中には対象…いや、マル害と対象の家族一人いる』
「SATでも呼べば?」
「総合病院みたいです、表向きは」
『あんたに1000万…いや、もう少し入るよ、上手くやれば。あと、同僚はあんたご所望なんだ』
「なんで?」
『優秀な同僚…か天然かはわからんが、彼はハイエナと呼ばれている。
 まぁこの時間だ、テキトーに通報入っただのなんだの』
「あぁ、確かに。柏村隆太郎、花咲過激派で、最初の事件に関わっていそうです…当時の資料、残してました」

 多摩の情報と平良の話を照合しつつ、溜め息が出た。

「……平良。
 犬とハイエナだったら、俺はハイエナの方が強いと思うぞ?慧に聞いてみな。
 俺は別に得も損もないし鉄砲でもないんだわ、この件。マル被マル被。
 ただまぁ?お前みたいなアホを仲介するような同僚とやらの肝っ玉と面くらいは拝んで来てやるよ。まずはお前の居場所を送れ」

 切る。

 根本は変わらないな、わかってはいたけど。
 あいつはどこまで行っても錆びたロープの上を歩き続けるらしい。未練がましく押し付けがましいが、まぁ、数少ない良い所のひとつではあると思っている。

 一般人に潜らせるという非道なことはやめたようだし、成長はしているらしい、慧をダシにされている気がするが。
 だから程よく引く。ここは、自分が成長した点だ。

 まぁ、あのライブ配信と胡散臭いインフルエンサーを見れば、何が起きているのか把握に容易い。

 どうやらそのモグり同僚は、手柄か守備かと言えば守備にまわるが踏み込み型、石橋は叩いて渡る派なんだろう。
 恐らく、昨今流行りの“団地崩壊”だろう。

 これはシマ云々の抗争を捨てた、義理もクソもないチンピラの手法だ。地盤がなければ足も付かない警察も掴めない、いや、使えないのが現状で、同職の品位を著しく下げている。

 実態がないと感じるのは、なんの害も全くない普通の一般人の“無知”を使うところだ。

 そうか花咲。あれからそこまで解体されたのか。もはや原型も殆どないほど潰されたな、あのアホ番犬野郎に。

 平良の正義も伊達ではない。全くもって暑苦しい。最早平良も根幹はこちら側の人間だ。腐れ縁、やっぱりこれに尽きるのかも。

 平良の居場所を確認する。
 どうせダシやら鉄砲に使われるなら、戦利品と交換しよう。それが一番平和だと、経験済みだ。

追記:家主、居留守。潜伏中。

 ……なるほど。まずは引っ張り出せばいいわけか…てゆうか潜伏中ってなんだ?

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