無色透明色彩


21


 車に乗り「さぁて」と言った平良は早速タバコに火を点け、あたりを見る。
 …慧も何気なく、新の事務所で見たことがある車を探しておいたがふと一台の…警察車両から二人ほど真っ直ぐこちらに歩いてきた。一人はジージャン、一人はパーカーにリュック。

「……早すぎるな」

 窓を開けていたせいだろう、「お兄さん、敷地内禁煙ですよ?」とパーカーの方が声を掛けてきたので、仕方なく平良は火を消し相手を見る。

 こそっと手帳を見せてきた、やはり刑事だ。

 となると…と、平良が慧を見る。慧はケータイを弄り始めた。

「…以後気を付けま」
「目を瞑りますが、お聞きしたいことがあります…宜しければお話を伺えませんか?」
「なんでしょうか」
「……貴方と入れ違いで実は、暴力団員が出て行きまして」
「へぇ、そうなんですか」

 刑事はギリっと目を細め「紺色スーツに痩せ型のこの男と、この男…眉毛あたりに…よく見るとこれ傷なんですけどね、この肩幅広い男なんですが」と、病院入口を出る多摩と高田が映る写真を見せてくる。

「すれ違ったりしてませんかね?」
「さぁ…人の往来もありますからね」
「割と目立つような気がするんですが…」
「あまりまわりを見てないのでなんとも……。
 この子…私の友人なのですが昼間に胃腸炎で運ばれまして、迎えに来ただけなんで…。まぁ、病院は暴力団でも来るでしょうね…」
「いやぁすみません、質問を変えます。
 本題はこの二人ではないんですよ…すみませんね。
 こちらで追っている事件の重要参考人が入ったタイミングで貴方が出てこられたので何か…と。たまたまかもしれませんが貴方の出入りとどちらも、割と時間差がなかったもので。
 知りません?海江田さんという方」
「……良い加減まどろっこしいなぁ」

 海江田さん?

「刑事部ですか。なんですかいきなり。普通そんなにペラペラと喋らんでしょうよ」
「あ、やっぱり?」
「…海江田は同僚ですが、刑事部が追っているとは初耳ですね。所長も知っていたなら意地が悪い」
「……あれ。
 と言うことはあんた…」
「確証なく絡んできたんですか?まぁ、海江田がどうしました?」
「…あはぁ、キャリアの方だったんですね」

 平良は隠しもせずに舌打ちをした。

「警視庁刑事部捜査一課 強行二係の高崎さんでしたっけ。所長に聞い」
「……では、情報提供を…。
 厚労省麻薬取締部とウチと組対薬銃課で捜査本部が立ち上がり、今頃書類が届いている頃です」
「…はぁ?」
「所長さんに連絡しておいた方がよろしいかと」
「……はぁ、わかりました。しかしそれなら、私が口外して良いか、聞いていいかどうかの判断が出来かねます。ご了承ください。
 では、お勤めご苦労様でした」

 そう言って平良はドアを閉め、手で合図をしてから車を走らせタバコを咥えた。

「捜一…組対かぁ…マジであの野郎ぶっ放しやがったな…」
「…あれって聞いていいやつだったんですか?」
「もうあそこまでくれば仕方ないだろ…。
 江崎が青木家で一発撃ったらしくてな」
「……えっ!」
「さっき聞いた。
 お前今、連絡して江崎の部下を足止めしてくれてたんだよな?」
「あ、はい…まぁ、わかってそうでしたが…」
「ん〜〜…となると、薬銃…江崎が警視庁に何かをタレこんだ可能性がありそうだな…ウチの礼状に乗っかる…にしてはあちらさんには決定打がなかったのか…」

 平良がちらっと慧を見る。

「透花ちゃんの話はセイさんから始まってるよね?新さんはセイさんと違って仕事の話は家でしないんだよね」
「……何も知らない、か…てか、地味に嫌味?
 まぁ…俺とお前と江崎は仕事繋がりだったもんな…」

 言っているうちに平良のケータイが鳴る。
 「うわっ、所長だ…」と言いながら、出ない。

「…江崎が今どこにいるか聞ける?拾うしかないわこれ……」
「…なるほど…」
「多分これは海江田と坂下を泳がせてると見た。俺は海江田に連絡するわ…」
「…新さん、一回事務所に戻る予定だったってさ」
「送信早っ」
「うーん……」
「…警察車両追ってきてないよな?」

 慧はキョロキョロとあたりを確認する。多分いない。

「…新さんの事務所に向かう可能性とか」
「あの話ぶりと態度や内容も、ウチに用があったんだよ。普通は待機していた江崎の部下に行くだろ?面割れてるんだから」
「確かに」
「…捜一と海江田の証言…銃痕が支給のだったのかも…普通に聞けばマトリ宅からヤクザが強盗事件を起こし許可なく海江田が発砲した、が筋としては立つかなぁ…そんで俺が江崎の部下と接触した可能性があるとなれば引き渡しとか」
『あーはいはい行きますよ、車はテキトーにその辺に置いとけ』

 平良がパッと慧を見たので、慧はケータイを見せる。普通に通話中のスピーカーだった。

『ご明察。発砲はそっちが悪いね、落ちてたから威嚇に使っただけ…ホトケさんはいない』
「……何してんのお前っ、」
『それは同僚にも言え。
 組対に売ったのも俺〜!どーせお前らだけじゃ無理だよ!
 しかし早かったな、まだ病院に張らせと………。
 待った、キャッチ入った、現場から。やべぇかもしんねぇ』
「…は!?」
『あ〜、うん掛け直すわ、嫌な予感当たりそう。
 花村病院に近いと助かるが…すぐ落ち合おう。多分会議とか待ってたら誰か死ぬわ』
「…え、」
『言っとくが青木家に穴開けまくったのはバ柏村のトカレフだから。じゃ』

 切れた。

「あー、クッソ、」

 あいつ、どうする気なんだ、一体。

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