無色透明色彩


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 ふっと、笑った平良は「はいはい」と…そうか、これが恐らくそれぞれ見ていた場所だったんだ。

「……なんか漸く…何年掛かったでしょうね…これがきっと、俺たちの形だったのかな」
「それはねぇよ。普通ヤクザとマトリと堅気は住み分ける」
「…確かに」
「でも、こうなったのならそれはそれで形は出来るでしょう?」
「堅気は普通、行政の元にいるけどな」

 しれっと言う平良を思わず見て顔を顰める新を見てつい、「ネチネチ〜」と、慧が茶々を入れる。

「…確かに。お前なんでこっちに来たんだかな…でも…わかるわネチっこいよなこいつ」
「…うるさいなお前ら2人して…!」
「あの生意気な薬剤師鉄材野郎に聞いてみるか?」
「多分「どっちもネチっこいし俺は堅気だから」って俺もあんたも慧を奪われて終わりますよ」
「……連絡取ってんのね、まぁ、ならよかったわ」

 カマをかけたのも気に入らないらしい。平良はふいっと外を眺めた。

 そんな雑談の最中、平良のケータイが鳴った。
 海江田だ。

「…こっちも早いな」

 新がパッと平良のケータイを取り通話、スピーカーを押しフロントに置く。

 向こうから聞こえる『父親と共に来院し二人共』…父親と共に来院……?
 平良が新を見るが、相変わらず涼しい顔だ。

「…はい」
『もしもし平良さん。今…どちらに?』

 随分形式的だ。仕方ない乗ってやるか。

「私用で花村病院ってところに」
『そちらにもしかすると柏村が、人質を連れカチコミするかもしれません』

 …それはもう知ってますが…。
 海江田は少し声を下げ『…あの人一緒なんでしょ、』と言ってきた。

 なるほど?

「へーい。続けろ」

 返事があったことに驚いたような間…いやなんでだよ、今いるのわかってたじゃんとツッコミたくはなったが『青木紀子が父親を名乗る男を連れ、透花と唯三郎両名を退院させたと、警視庁刑事部から連絡が今、来ました』と…。

 シクったのかあの刑事…。

 …あー、こりゃ使われたなぁ、マトリ特権「オトリ捜査」を。つまりあれか、警察の方でも捜査本部自体は既に立っていて、あとは事が起こるのを待っていた…。

 じゃあ、果たして新はどこまで読んでいたんだ?

「…それは確かなのか?」

 後ろで『男は40代程のガタイが良い、見慣れない男だったそうです。女は確かに免許証の写真等から、青木紀子本人だったそ』まで聞こえたので「わかった」と返す。

 そこまで割れているなら確定だ、確かに始めは海江田が警察に売っているんだった、あの「ウイルス仕込みパソコン」を。

「組対と一課と合同会議中だよな?」
『はい』
「はーい挙手。
 ちょっと組対…誰かわかんねぇけど変われる?江崎でわかるだろうよ」
『…いいんすか、それ』
「何が?お前らはそれぞれ現場に行けよ」

 ふっとケータイを取り新が主導権を握った。

 さて種明かしの時間だな、と「パチモンロレックス渡してやれよ」と燃料を投下すればいい。

『江崎かおい、』

 …聞こえてきたおっさんの怒号…あれ、この人なんかで面識…あったんだろうなぁ……声…聞き覚えあるようなないような…全然覚えてないや。

 平良が小さく「パチモンロレックス?」と言うので、なるほどと新も理解した。
 海江田、なかなかやるなぁ。警察を上手く使っている。これなら全員に間違いなく共有されるし現場もバッチリ決まる。

『お前だったのか!
 つまりあれか!?ルート知ってんのか!?』
「……ウマゴメさん…ボクらなんか会ったことありました?パケックスは確かにウチに来たんでケーサツさんに届けただけなんですが…。
 はぁ、じゃあ可能性として46歳無職六本木の成金変態も任意?
 うわ知ってんだ何そこまで知ってて踏み込めてないの?組対時代の優秀なケージさんどっか行った?大丈夫そ?無能しか残んなかったの?」
『……誰が無能だっ、他にも同時進行してたんだよ、知ってる事言わねぇとお前をしょっぴくしかねぇけどっ!?』
「え、だからボクたち初めましてじゃね?あそこ少し調べただけでも花咲過激派の塩漬けだってその日のうちにわかったよ?地主見た?件の柏村隆太郎だよね?あと撮影現場、明らかあそこじゃんその場で出てきたよ?画像検索で。サイバー仕事してる?
 は?
 バッカじゃねーのこいつらそんなん知るわけねーだろお前役職わかんねぇけど重鎮気取ってなんか知ってる雰囲気出さないでくんね?俺少なくとも7年以上は世話になってねえし。
 は?あぁ、ぶち込んでみろこの無の………あ、切れた」

 「バカ…」と平良が言うのにも「うるせーなてめぇのせいだよこの犬!」と行き場のない理不尽をぶつける。

「誰だよあんな無能をヤクザ事務所にぶっ込もうとしてるバカは!まさかこっち来ねーよな!いまの俺下手すりゃ」
「裏取らねぇままなら公務執行妨害付くよなぁ」
「どうしちゃったんだお前ら!張り合い甲斐がねぇ!」
「張り合おうとしてくんなよマジで」
「いや、今回はセイさんが持ってきたんだよ…?
 新さん、マジで多摩さんにお金頼む方にする…」
「だろ!?」
「……えぇぇ…何そのフラれ方…一応俺もそいつらより仕事してんだけど…キャリアだし」
「うっわ〜、そこでキャリア発言とかマジノンデリ〜、お前友達もいねーだろ、前から思ってたけど」
「…え、お前さぁ、仕事モードそんなギャルみたいだったっけ怖っ」
「どちらかと言えばこれが多分オフですよ」
「…てゆうかお前の若さにつられてんだろこれ。
 お前言ってたよな、俺らおっさんの分類だって!」
「そんなことより早く着かないかねぇのかこの車!」
「捜査外なんで道路交通法守ってるんですぅ、つーか言わんでももー着くよこのクソ野郎っ!」

 うわぁ。どっちかが昔言ってたんだよなぁ「会わない方がいい」と…多分これだな…と慧は初めて実感する。

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