27
新はオリバーの元へ運ばれ少しし、「全く」とストレッチャーに背負い投げをされた。
「っ゛」
「さて」
オリバーは棚からアルコールを取りポケットからピンセットとライターを出し、顔面蒼白の多摩を睨み容赦なく「足押さえろ」と命じる。
「待った待った待った待ったそれ!まさか」
そのアルコールを持った瞬間目をキツく閉じたのが悪かった、ヒヤッとした…包帯を巻かれチクッと…多分麻酔だ、一発打たれ間髪入れずにジッと痛みが走り「い゛っ………っ、」舌を噛んだかもしれない、声も出なかった。
ぐちゃぐちゃ…と音がする…利き手を見れない。わかる、弾を探しているんだ…。
「あった」と言い…骨からなんか「ふんっ、」と抜かれたのまで伝わってくる…何たる拷問だ、スナッフフィルムかよ…ヤクザより酷い。
「オマエ骨強いね」
「タマ、その箱とアレ取って」に、居ても立ってもいられなかったのだろうか、「はい…」と慧の死にそうな声が聞こえ目を開けた。
顔面蒼白だ……。泣きそうを通り越し硬まってしまっている……。
平然な顔をしてジョキジョキと、現場で腕を縛ってくれた坂下の制服を切り裂いている…弁償いくらなんだよ…。
そのまま血圧機だかなんだかのゴムで圧迫…ぃぃぃぃやこれ折れたんじゃないか!
ふーふー息荒く耐えていたらもう、明らかに糸…裁縫セットみたいなものが見えた瞬間、反射で目をキツく閉じたがやはり悪かった…痛くてなんだかわからない。でもわかる今、それで縫われている…。だから麻酔まだ効いてねえってば……。
でも無理多分見たらメンタルが死ぬ…。
オリバーは元軍医だ。手荒だろうと平気でスラム街で見るような施術をしやがる。
…だから殺しだの抗争だのを避けてきたのに…と思えば不意打ち…足だ。急に筋肉注射を撃たれ「いぃぃぃっ、」と声が出ない…え、なんで打たれたんだよそれぇ。
バッとオリバーが退いたのでやっと…再び目を開け慧を見ればあれから微動だに出来なかったらしい、「な…治ッタッテ」と辛うじて言った。
「なんのこれしき。オマエ骨ヒビ行ってるから…フツー折れるよコレ…まぁ一月ね」
はぁはぁ息を吸うのみでもう、冷や汗がバッと…いや血液が足りないらしい、滲む程度に出てくる…震えそうだし気持ち悪くなってきた…。
視界には血塗れのピンセットもあり「は、吐く……」とだけは言えた。
「吐く体力あればいいな。サトイ、経口補水液と甘い炭酸買ってきて」
「はい…」
慧が病室を去る際、オリバーは「ブカは隣な?」と言い、また多摩を見やがる、多摩は既に「エネルギーチャージ」と書かれた吸うゼリーを開けていた。
オリバーが出て行くのと同時に多摩は「はい」と側に来て飲み口を口元に持ってきてくれた。
「っは〜………サンキュ…」
「思ったより元気そうで安心しました」
「…え……お、お前…急にバカになんの、やめてくんないぃ…?どー…頑張ってもこれ」
「ほら、元気じゃないですか」
ふっ、と笑った多摩は「まー加賀谷くんには謝らないとなりませんね…」とドアを見る…。
「初めてでしょうからね…顔面蒼白で可哀想だったかな…」
「…お前もな…」
「ははは…何回見てもちょっと…会長もですよ」
「それよりあいつ…吐きに行ったんじゃないのかな…手が開いたら見てきてやってよマジで……」
だが言ってる側からちゃんと、経口補水液を持って帰って来て…泣きそうだったので「ごめん、慧、」と呼び寄せる。
「…死んじゃうかと、思った…」
「…一歩手前っ、マジ……つーか、眠くなってきてるあいつ何打ったん」
「鎮痛剤みたいです、大丈夫な方の」
起き上がれば「ええ何してんの!?」と驚く慧の声すらうわぁ、目眩半端ない…血が足りてないやつ…と一瞬ぼーっとしそうになったが一応痛い。
ポスッと、やはり力は入らないらしい、ベッドの硬さに気付く。
間もなくして海江田が何故か入ってきた。
オリバーがわざわざというように…なるほど、海江田も海江田で透花と唯三郎の説明を聞きながらこちらにも話を振ってきている…いま生き地獄真っ最中なんだがなんの生殺しだこれは…。確かに意識は保てるが微妙に説明が…眠くなるっつーねん。
掻い摘めば、唯三郎は廃人と化し…恐らく決断を迫ったところで今日明日の話だろう、流石の元軍医でも「薬物による自然死」は無理か。
透花はどうやら慧と同じ…いや、奇跡も奇跡、脳は正常らしいがこの後恐らく癲癇か…人格障害…?…記憶障害が残るかもしれない、くらいの病状らしい。
まぁ、確かに…子供の頃にも打たれたっぽいからな…。透花のバッドトリップは多分、幼少期の記憶だ。
皺となり今回…脳に新たな傷が一本、断ち切るかのように刻まれたのなら…。
余程だったのだろうな。神経が拒否をするほどの記憶。
オリバーに案内され透花に会いに行く海江田の背を見る。まだまだ、これからだろう。
「…慧」
「…はい?なんです?」
…怒ってるけど。
側にいたので…血塗れだけど忘れてたことにしようと頭を撫でる。
はぁ、と、息を漏らした慧の顔は見れない、見ないけど、まぁ、震えているから。
「…まだ、どうやら底は見えないらしい。だから、俺もまだまだ…大丈夫みたい」
「…底に行こうとしなくていいです」
「慧…」
やっぱ泣きかけてる。
「お前が引っ張ればいいんだよ」
「………」
ごすっ。
あれ。
腹殴られた。
「……っ!」
だから…っ、意外と力強いんだってば…っ!
「急にバカみたいなこと言うからつい」
明らかに多摩が吹いた。
「あーそうですかっ…!」
もういいやマジで寝てやると、新はそっぽを向いた。
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