無色透明色彩


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 今日はどうやら忙しいらしい…。

 オリバーが「面会拒否」の札を立てに来た。どうやら、夜中に青木唯三郎が息を引き取ったらしい。あれから…2日だ。

「あと1日でICUから出れたんだけどな」

 珍しく曇り顔のオリバーはパイプ椅子に座り言った。
 僅かに…線香の臭いがする。

「……麻酔出来ないアラタに聞きたい。
 脳の回復をと、強制的に麻酔を投与し眠らせたままなのは殺しと違うのか」
「…難しいことを聞くよな…。
 じゃあ俺の傷は麻酔で神経眠らせとけば治るのかっつー話で」
「いや腕は違うけど…」
「あそーなん?」
「そーだよ。
 脳はなんもしなくても動くから、伝達も何もかもをシャットアウトして脳だけをだな、」
「あー、なるほど。使わない分、萎縮したのを戻す的な?」
「そうだ。…夢すら、見ないほどの」
「…うわヤバそう」
「ちゃんとした方法らしい、ここではな!理にも適ってる…!」

 また急な喜怒哀楽だな。

「…夢も見ない、か。無意識も無意識だなぁ」
「…あの日のままなのかと思うと…だから嫌なんだ延命は」
「延命じゃないんじゃなかったか?それ」
「じゃない方法でコレ!ラリっちまわないかって私も思う!」
「なるほど。でもまー、楽にはなるだろうな。俺少ししか寝れてねーし」
「タバコは吸うくせにな?痛くないんか傷」

 目の前で堂々とタバコを出し美味そうに吸いやがるオリバーに「…多分てめぇのせいなんだけどなっ!」と、甘んじて貰っておいた。

「…これが良くて大麻がダメな理由もわかんない」
「それは俺もわかんねーけどんな大麻大麻言ってるヤツはイカれてるってのは……身に染みて知ってる。あんま言うとセーイチに怒られんぞ?あへん法かなんかで」

 はぁ〜、と重い溜め息と共に「残念だ」と吐く。

「私達がどれ程もがこうと…死なない方法を知っているのにどうしてなんだ」
「…生きる方法、と考え方を変えれば…その麻酔は安楽死なんじゃねーかな、オリバー先生よぉ」
「…だけど、」
「あの兄ちゃんにあんなに迫らなくてもこうなったんだよな?」
「覚悟が知りたかった」
「あんたもヤクザみたいだね。わからなくもねーよ?重みが違うから、それぞれ。
 ところで忙しい中サボってるようだけど、俺退院すっから」
「仕事してるよだから面会拒否にしてある」
「サンキュー。
 じゃ、タバコ吸ってくる」
「…ホントにオマエの元気どこからくるんだ?腹?」
「さぁ?ファミリードクター」
「顔だなさては。オマエは顔で生きてきたんだ」
「あんたが医者じゃなく優秀でもなかったら闇バイトさせてるわチリ毛金髪め」

 病室から共に出れば確かに刑事がいた。
 オリバーが「まだこいつメンタル死んでるから」とテキトーに言ってくれたので新は刑事とは目を合わさずにすっと屋上へ向かう。

 見慣れた制服を来た長身が…こじんまりと黄昏れ、タバコを吸っている。多分、キツかったんだろう。
 隣に寄り掛かり「よ」と挨拶をしておいた。

「…マジっすか江崎さん、もう歩けるって…あんた死にかけてるって聞いたけど…」
「あーマジ地獄だったわ。
 あのイカレ闇医者、「どっから元気出てきてんだ」って言いやがったかんなマジで」
「……まぁ、なんか元気ならいいんすけど」
「あ、平良には言っとけ、あいつ隙あらばツレにちょっかい出しやがるから」
「…それはこっちにバレるってもんだし…」
「大丈夫今日退院すっから。あんたも今休暇中だろ?」
「まぁはい…」
「制服着てるから謹慎ではないよなあ」
「いや謹慎って知ってますよねその言い方……」
「休めってことっしょ?」

 気まずそうにタバコを消し「今日だけは仕事だったんですよ」と言った。

「聞いた聞いた。そんで?透花ちゃんはどう?」
「…言いましたよ、ちゃんと。その上で…手続きしに来たんです」
「………へぇ」

 意外だったな。言えないか…言えたとしてもこんなに即日即対応出来るだなんて。
 海江田がふと横を向き黙ってまたタバコに火を点けたので、自分もタバコを吸う。

「ここ吸えるってよく知ってたな」
「……喫煙者は考えるでしょ、まず」
「まぁ吸っちゃダメだけどね〜」

 …天気がいいなぁ。
 久々でヤニクラと咳が出る。まだ地味に骨が痛い。ヒビは却って時間が掛かるらしと…折られそうになり阻止をしたのだ。

「あ、こんな素晴らしい天気で、ふっ、ははっ、思い出しちゃったんだけどさ…」
「はい?」

 やはり沈んだ表情の海江田にさっと、共に青木家に突っ込んだ際の事故画像、「海江田、柏村の強引美人局トラップに引っ掛かりかける」を見せた。

「っあぁっ!?」
「こ、これさ……お、俺のツレとオリバーと多摩で見てさ……ふっ、わ、笑っちゃって昨日寝れなかったんだわ……っ!」

 骨に響くー…。

「ちょっ、はぁ!?見せるか普通!でも…なるほどだからかあの医者…」
「逆レイプじゃんって……っははは!なんかあったら提出してやるよマジで…っ!」
「これについて聞かれること……あったから出しましたんで消してくださいよマジで!軽くトラウマなんでっ!」
「え?だってこんなことくらいあんじゃないのぉ〜?お前顔割といい方かもしれないしキメてそうな女抱いて検挙すんだろぉ〜!」

 ちょんちょんとすれば「テンション高……」と的外れな回答。こいつも多分、ちょっとネジ錆びてんだよな…。

「まぁありますけど、それも…いや何あんたが知ってるマトリってそれなの…?平良さんホントに風評被害だな…」
「でもあいつ今現場行くん?」
「行きますよたまに。来たでしょ今回」

 海江田がパっとあのラミネートを出し「ありがとうございました…」と言う。

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