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潜伏中って何
そいつが立て籠ってんの?
人質とか聞いてないけど
既読が付き“詳細がマジで不明。同僚のモグり先は隣人なので戻る”訳わかんねぇ。あー、確かにこいつじゃ今これ応援とか無理なんだろうな。
こんなに気を抜いていていいもんなんかな、陰険クソ腹黒ド近眼サイコ野郎。
大方やっと下北沢の件が片付いたのにまた仕事が入ったから、久々に今日は休んでやろう的なやつだろうな。慧にまで絡みやがって。
「…どうします?」
「テキトーにトぶ。引ければ、だけどな」
露骨すぎて弾がどこへ向かうかわからないが…。
「全部見てないけどありゃあ、国交だのなんだの面倒臭そうだし。しかしマトリじゃ余る案件かもな。
引き際ミスりそうなら俺を引っ張ってでも剥がしてくれ。素人はもう、こりごりだ」
…薬剤師の若者の件を思い出す。
あれはまだ、本当の堅気だからこっちから逃がすことが出来たのだ。
「あーっと……柳瀬…いや、高田空いてるよな。手配するか、先に現地に」
「畏まりました」
多摩がパソコンを閉じ、車のスピーカーを電話に変え「高田か」と交渉を始めた。
「マトリかサツが張ってたら1回連絡くれ」
うぃっす。
…たまに不安になる。
自分の言葉一つで命を投げ出すヤツに、命を任せているつもりはないはずだけど。
新の心境を読み取るかの如く、多摩がふと「会長」と神妙そうに言う。
「私がこう言うのもなんですが、たまに不安になりますよ」
「……奇遇だ、俺が言って良いことかと今、思ったこと」
「…ならば、大丈夫ですね」
…全く。
「大丈夫大丈夫。お前らは素直に俺に寄り掛かれ。だからこそ、自分の支えを失くすなよ」
「はい」
「…だが、お前はお前で良い歳だ。支柱に準じ、真っ直ぐ伸びろ」
「それは…」
「最近あいつ、なんか…プランターでナスとか始めたもんでな…」
「はあ…」
「…当たり前を考えろという話だ。自分の目すら疑うくらいに」
跡目とすれば、こいつしかいない。
自分は、跡目がいない時点で一生安泰か…逆に、一生泥沼か。捉えようによる。
そもそも、去るものは追わないようにしてきた。なのに大抵は身元が不明になるのだ、離れたヤツらは。おかげで分派争いなんて殆ど縁遠い位置にいる。
自分の微温湯に暗躍しているのは過保護な…親。
自分たちはそれぞれが親のために命をも無駄にする、など…我ながらいつ考えても気持ちが悪く、時代錯誤だ。今は各家庭の世だろうが、とは言っても本当に各家庭化すればこういう、柏村のような輩ばかりになってしまう矛盾。
人は、集団となると途端に上手く生きれなくなるバカな生き物だ。
多摩は、それからあまり喋らなかった。
平良が送ってきた場所は、本当にただの普通の居酒屋だった。
歩道、ガードレールに慧が一人手ぶらで座っていて、安心する…次にはモヤモヤした。おいこいつら正気かよと。
側に乗りつけようとすれば慧がすぐに気付き、ぴょんと立ち上がる。
…確かにね、うん、確かに前にね、互いに直接干渉すんのはやめようと心に誓ったと思うよ陰険クソ腹黒ド近眼サイコくん。だけどさぁ…。
複雑な気持ちで手を挙げ合図すれば、慧が車を眺め疑問顔。珍しく多摩が助手席にいるからだろう。
慧を確認した多摩は、当たり前のように車から降りた。
「あれー?タマさん?」
「どうも、加賀谷くん」
多摩がこちらを見てくるので、新は慧を指さし親指で“そいつは後部座席”とジェスチャーした。
慧がしゃがんで運転席を覗き込んできたので、少し窓を開け「帰るぞ酔っ払い」と声を掛ける。
「えー」と言う慧に、多摩は淡とした口調で「何階ですか?」と尋ねる。
「4です〜」
それだけ聞いてビルに向かう多摩に「多摩、」と声を掛ける。
「はい?」
「また迎えにくっから。たまには飲んで」
「…え…」
多摩は眉を寄せた。珍しい。
あぁ、滅茶苦茶嫌なんだろうなとつい「ふっ、」と笑ってしまった。
「ついでに情報を程よく交換しとけ。
こいつこの通り、荷物すらねぇし後ろに転がしとくから。なーに、すぐ戻るよ。それまであのクソ野郎を逃がすな」
「はい……」
「今日はご苦労様でした。悪いな、こんな役任して」
「あ、いえそれはいいですよ。ただまぁ……わかりました」
意図を汲むのも上手い奴。
頭を下げビルに向かう多摩を見送りつつ「はーい、お前ちょっと後ろに乗りなさい」と慧に言い付ける。
慧は素直に後ろに乗り、「セイさんから」と、マトリ手帳を渡してきたが…。
「…はっ!?あいつバカ?本物なんだけど…」
「えー?」
「…お前らどんだけ飲んだんだ?おい」
「俺は3と2くらいです〜」
「何をだよっ。
いやまぁお前はいいがあいつ大丈夫かよこれぇ…ぜってぇ間違えただろ、終わったら捨ててやろうかな、ムカつくしナメ腐ってやがるし」
「ははは〜」
「……お前暫くマジ禁酒な?んなもん預かってくんなよ、ってか怖くねぇかこんなん持ってさぁ!」
「えー?本当に本物なんですかー?」
「そーだよ!
ほらこの顕彰見ろ!マジな金ピカだろ?」
「教えていいんですか?一般人の俺にー」
「普通持たせないからな。アレが悪い」
あははー!と笑い飛ばす慧に「…もういい寝てろ」と低めに言った。
「何もないですよー。怒ってます?」
「あぁ、心底」
「だって病んでたんだもんあの人」
「余計ダメだっつ、このバカ!」
「もう!」と寝転んだ慧に全く、と思いつつ「ほれ、」と、コンソールボックスから酔い止めを出してやった。
「飲ませてー」と調子に乗るのでダメだこいつと、ついでに飲みかけのコーヒーに蓋をし軽く投げて渡す。
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