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師匠、毎回すみません 既読
どうしたの?
ロールキャベツを作ろうと思って調べたのですが、中身がハンバーグと違っていて、疑問なのでメールしました 既読
買い物に行こうとした矢先。どうしようかと少し悩んだ末、坂下妻に聞いてみることにした。
叶実からすぐに“もし良ければ今からスーパーに行く予定だったから、一緒に行こうか?”と返信が来る。
奇遇だ…。
いいんですか 既読
とてもありがたいです 既読
下で待ち合わせしようか
すぐ行くの?10分くらいでいいかな?
大丈夫です。ありがとうございます 既読
まさしく今行こうとしていたので、最後にレシピと食材を確認する。
今日はよそ行きの服…と、自分でも自覚がある、とても嬉しい気持ちなのだ。
その感情の名前を知らないけれど、とにかく楽しみでソワソワする…何を着て行こうかな、と考えるくらいには。
気に入った服、とかは特になかったけれど、なんとなくコレ!と決め、エコバッグを持って家を出た。
一階で合流した叶実が「こんにちは透花ちゃん」と挨拶してくれた。清楚な感じの動きやすそうなワンピース。
「こんにちは師匠さん。いきなりすみません、ありがとうございます!」
「いえいえ、丁度ウチも買い物に行こうと…透花ちゃん、もしかして今日何かある?」
「えっ!あ、はい!」
「やっぱり〜」とニコニコし「なになに、何があるの?」と聞かれるのすら嬉しくて「…プラネタリウムに行くんです!」と答えた。
「あら!いいじゃんいいじゃん!なるほど、それでウキウキしてるんだね」
「ウキウキ…あ、なるほど」
「全身から滲み出てるから〜」
「へへ、はい、楽しみだったので」
「なんだか私までほんわかしちゃった、幸せお裾分けありがと。
プラネタリウムか〜、私は高校以来かなー。旦那じゃないけど初デートが地元の博物館のプラネタリウムだった〜。あれ凄いよね、あの大きい機会。
あ、今日ちょっと寒い?…最近季節がわからない…」
「そうですね…」
ちょっとごめんね、と言いながら鞄から上着を出そうとする叶実にふと手を差し出すと「ありがとう〜!」とエコバッグを預けてくれた。
「いや〜自然にスっと…優しい、英国紳士様って感じ…モテるでしょ透花ちゃん」
「モテる…?」
「あ、なんというか恋愛的に?好かれるみたいな意味!」
「………そうなんですね?良かった嫌われ」
「うん絶対そう!顔良いし?優しいし?ウチの夕希も千聖もたまに聞いてくるの、最近。トーカは来る?て!
だ、旦那がね、ははっ、まだ早ぇ!ませんな!て千聖に言うの〜〜!」
「ませる…」
「あ、これは説明が難しい!千聖女の子だから旦那まだちょっと千聖の色恋に覚悟が出来てないみたいで…!男親って大変だよねっ!」
…幸せそうだなぁ、お裾分け返しされてる…。
話は流れがちだけど、叶実が喋ってくれるおかげでなんだか楽しい。きっと坂下もそうなんだろう。
「あれ?てゆうことは、今日は外食じゃないの?」
「いえ、仕込むみたいだったんでお家で食べる気でいましたけど…外食かぁ…」
「意外とすぐ出来ちゃうんだけどね、スープみたいなものだから」
「あ、スープなのか…煮物かなー?と思ってました…」
「一品料理には間違いないかも。そっか、透花ちゃんの国では家庭料理なのかもね?」
「…どうなんでしょう…?」
坂下や安慈は多分、あまり自分のことを話していないのだろうと思う。
「ま、私流というか日本的かもしれないやつでもいい?」
「全然良いですよー。僕は初めて見たので…」
「透花ちゃんそっか、前言ってたか、ほとんど日本だったね」
「はい。他国はむしろ、あまり知らないかも…」
「そっかそっか。
あ、正直ツナギが何故ハンバーグと違うのかはわからない!でも食べるとわかるかも、ハンバーグではないのよねぇ、あの食感。
あとなんとなくだけど、牛乳入れちゃうとギュってなりにくいのかも。ほら、ハンバーグの時にさ、空気抜きに手でパンパンするじゃない?」
「あ、なるほどです…。ハンバーグよりギュッとしているってことですか?」
「そーそー!」
あれからよく、叶実にはこうして料理を教えて貰うようになった。たこ焼きのレシピをメモっていたのがきっかけだ。
安慈も「叶実さん、料理上手いんだわ」と言っていた。坂下の昼食は大体が叶実の手作り弁当らしい。残業でカンヅメの際、坂下が料理を取りに行き安慈も恩恵を受けたとも言っていた。
安慈が独り身だったこともあり、たまに夕飯もご馳走になっていたとかなんとか。
趣味は料理!と叶実が言ったことで、先生が「何か趣味でも」と提案してくれた意味を考えてみたのだ。
前の家でも料理はやっていたが“生きるため”という感覚でしかなかったかもしれない。
しかし、そう…おじいちゃんが美味しそうに食べてくれたりするのは嬉しかったし、嫌いでないのは事実だともう少し…“趣味!”という考え方でやってみようと試みたら、見事にハマった。
生活と趣味の一体型…これはとても楽しいと、視野が拓けたような気がしている今日この頃。
スーパーに着き「ウチは今日は普通にうどんー。冷やしにしよー」とカートを取る叶実を見て“ウキウキ”…そうか、確かに僕、こんな感じかも…と意味を実感する。
「うわっ、国産やけに高くない!?」と驚いたり、「キャベツはねー、最初の葉は取って食べてねー」と教えてくれたり。
「うーん、手抜きうどん…もういっちょ何か欲しいなぁ…何入れたらいいと思う?エビフライ…うーんなんか違うんだよなぁ、ピンと来ない…」
「…僕、春菊天好きですけど…今の時期ないんですよね…葉っぱ…あ、小松菜が148円です!
…でもやっぱり違」
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