無色透明色彩


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 叶実から軽くポイントを教わりながら家に帰り、レシピを眺めさて、と、キャベツを剥いて洗う。

 玉ねぎ…目が痛い…手を洗って目を冷やす…。染みるなぁ…なかなか慣れない…。
 パラッと入れてしんなりするまで…少し芯が残っている方がなんとなく好きかも。

 フライパンの火を止め、鍋の火を入れる。

 あ、食品ロスとかそういえば言ってた…キャベツ、4枚しか使わないのか…あとでせん切りして何かに使おう。近々…何にしようかなぁ。

 芯は斜めに切り込みを入れ…湯がく…ヒラヒラしてクラゲみたいだなぁ……。
 さっと出して熱を取る…うちに、玉ねぎの粗熱は取れたかな…まぁ、練るし大丈夫かな、ある程度は。

 合い挽き、卵とパン粉…あ、食パンしかない…。スリスリして入れよう。1枚は多いな…半分食べよう…オーブンレンジ…いや、グリルで見張ろう。

 ふと一息吐き思う。アンジさんは多分こんな時にタバコを吸うんだろうな、と。

 …天気が良い。今日の夜はきっと、ライトアップが綺麗に見えるだろう。
 たまに安慈に「ほら、」とベランダに呼ばれ、一緒に見ることがある。

「あれ、税金だから消灯早いんだけどさ、たまに見ると、悪くないかなって思うんだよね」

 そう彼は言っていた。
 パンが程よくパサパサになった。グリルから取り出し…大根おろしでスリスリする。

「消灯しても月と一緒に見れるとなんとなーく、たまーに撮っちゃうんだよね」

 スマホの画像を見せてくれたことがある。
 花火と撮れているやつもあった。それだけで綺麗で…「団地に行く前の家なんだけどさ。この時凄く沈んでたんだよね、俺」と言っていた。
 
 タネを手に取り置く、うーんちょっと多いのかも、これは巻ける気がしない…減らして形を整えて置く…丁度良いかもグッ…あ、多分まだ切込みが足りない…種を戻してキャベツの芯に切込みをもう少し……なんというかリストカット並みになってしまった…。

 気を取り直しグッ、くるっと巻いてゆく。丁度良い。

 今日はなんとなく、上手くいっている、とても良い気分だ。鍋にロールキャベツを置いて中火で少し、弱火にしてじっくり……。

 待ち合わせで掛けておいたアラームが鳴りハッとした。

 あと少しなんだけどっ!わ、手が油っぽくてスヌーズ出来ない!
 何度か手を洗っているうちに電話が掛かって来てしまった。大変だ、と咄嗟に出る…わあ、脂が………。

『あ、もしも』
「はいっ!すみません!」
『いや既読付かなかったから家に向かおうか迷って、つい…』
「あ、すみません…料理に夢中になってて…」
『あ、なるほど。ごめん、邪魔しちゃったかな?』
「いえ、アラーム掛けてたんですが…出来ました!」
『お、そうなのね。どうする?』
「すぐ向かえますがえっとメールは…」

 あー、白い跡が付くし滑る…と思っていれば『いや、丁度終わったばかり』と安慈が言った。

『早く終わったには終わったけど、こっちも少し押したから…』
「そうだったんですね…あ、ホントだ。
 でも時間は早いですし…あと一瞬で終わりそうで、」

 30分押しそうだというメールと、終わったメールをしてくれていたのか…。

『ははっ、俺も帰宅準備してからだから、ベストタイミングかも』
「……ホントだ、不思議…」
『だな。
 じゃあまぁえっと……16時45分のに入れそうだけど、どう?』
「わかりました!」
『元気そうでよかった。じゃあこのまま45分押しスケジュールで待ってる』
「わかりました」
『余裕あるしゆっくりな。じゃ』

 電話を切り、ふぅ、と一呼吸する。
 こうするといいと、前に安慈から教わり、実行することにしている。

 さて、蓋をして5分。それだけやれば大丈夫だ。
 楽しみだ…と鍋に蓋をしまた朝の“ウキウキ”を思い出す。しかも初ロールキャベツ。楽しみが増えた。どんな反応をしてくれるかな…。

 あ、脂。
 手を洗ってスマホ(新しい)を除菌シートで拭いているうちに5分立った…油汚れに〜は、手の脂を取るのが大変らしい…。

 火を消しガス栓まで閉め、さて出ようとバッグにケータイと…。

 …たまたまよそ行き用にふと買ってくれたのは良いけど、財布とスマホと薬ポーチ以外、入れるものがなくて寂しいけど…。
 ちゃらん、と月のキーホルダーが鳴る。

「あ、」

 と、食器を買いに行った際、バッグ屋に入って行き「これどうかな?」なんて聞いてくるので「デザインもシックでオシャレでいいですね」だの「サイズ感もゴテゴテしてなくて使いやすいんじゃないでしょうか?」と答えていたらいつの間にか「はい、これ」と渡されたのだ。

「エコバッグ以外も持とうな?病院にも行くんだし」

 ついでにパスケースも付けてくれた。

「いやいやいや一万なんてそんな、」
「…むしろ申し訳ないから後でこう…騙し討ちじゃなく普通に買いに行こうって言おうかと思ってたんだけど…」
「えっ」
「多分相場より安いと思う…透花、やっぱりセール品好きだよね…自然と見てるから…」

 調べてみたら確かに、ちゃんとした?よそ行きの?革っぽいバッグは高いと知った…世の中、万単位が普通らしい…。

 騙し討ちらしいが気に入った物にさりげなく誘導されたし、経緯もなんだかかっこ良くて、使うのも嬉しいのだ。

 いままでポンと…お金持ちさんがくれるものは自分の趣味ではなかった。事実押し入れの下の段に眠りいつの間にか無くなっていたし。
 一度、「なんで身に付けてくれないんだ?」と相手を不機嫌にさせてしまってからは、売られないように寝床の側に置くようにした。お相手さんと切れたら下の段、とローテーションして…。

 だから、新鮮だった。
 絶対に無くならないよう、月のキーホルダーも閉めグッと持ち、待ち合わせ場所に向かう。

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